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阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 電子光科学I 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(解説7項目)

解説7項目の分野は電磁気学・回路3項目、情報1項目、線形代数1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数:3次実対称行列の固有値・固有ベクトルと直交対角化

線形代数:3次実対称行列の固有値・固有ベクトルと直交対角化の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 複素解析:コーシーの積分定理によるガウス積分とフレネル積分

(1) 線分 OB 上の f(z)f(z)

複素数は絶対値 ρ\rho と偏角 θ\theta で z=ρeiθz=\rho e^{i\theta} と書け、オイラーの公式 eiθ=cos⁡θ+isin⁡θe^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta より、z2=ρ2e2iθz^2=\rho^2e^{2i\theta} である。偏角が 22 倍になるので、θ=π/4\theta=\pi/4 のとき z2z^2 の偏角は π/2\pi/2 となり、z2z^2 は正の純虚数 iρ2i\rho^2 になる。問題が「原点からの距離 tt」を指定していることが、zz を tt と偏角で表す合図である。

確かめは t=1t=1 で行う。z=1+i2z=\dfrac{1+i}{\sqrt2} で、z2=1+2i−12=iz^2=\dfrac{1+2i-1}{2}=i となる。また ∣e−it2∣=1|e^{-it^2}|=1 なので、OB 上で ff は減衰せず、絶対値が 11 のまま回転するだけである。実軸上では e−x2e^{-x^2} が急に小さくなるのと対照的で、この線分上の積分 ∫0∞e−it2dt\int_0^\infty e^{-it^2}dt は条件収束(振動しながら収束)になる。

誤りは、線分上の点を z=t(1+i)z=t(1+i) とおいて、tt を「距離」と見なすものである。∣z∣=2 t|z|=\sqrt2\,t なので距離は tt にならず、z2=2it2z^2=2it^2 から f=e−2it2f=e^{-2it^2} となる。t=1t=1 で正しい値は e−i=0.5403−0.8415ie^{-i}=0.5403-0.8415i、誤りは e−2i=−0.4161−0.9093ie^{-2i}=-0.4161-0.9093i で食い違う。

(2) ガウス積分 ∫0∞e−x2dx\displaystyle\int_0^\infty e^{-x^2}dx

e−x2e^{-x^2} の原始関数は初等関数で表せない。そのため、1次元の積分のまま計算せず、2乗して2重積分にしてから極座標に直す。使う定理は2つある。1つ目は、非負の関数の2重積分は累次積分でき、積分順序を入れ替えてよいこと(トネリの定理)で、e−(x2+y2)>0e^{-(x^2+y^2)}>0 なので条件を満たす。2つ目は極座標の面積要素 ρ dρ dφ\rho\,d\rho\,d\varphi で、これは (x,y)→(ρ,φ)(x,y)\to(\rho,\varphi) のヤコビ行列式が ρ\rho になることによる。x2+y2=ρ2x^2+y^2=\rho^2 の指数部が ρ\rho だけの関数になり、∫0∞e−ρ2ρ dρ\int_0^\infty e^{-\rho^2}\rho\,d\rho が ρ2=s\rho^2=s の置換で 12∫0∞e−sds=12\dfrac12\int_0^\infty e^{-s}ds=\dfrac12 と簡単に積分できる。この積分は(3)の左辺で使う。

確かめは大きさの評価で行う。被積分関数は 0≤x≤10\le x\le1 で e−x2≤1e^{-x^2}\le1、x≥1x\ge1 で e−x2≤e−xe^{-x^2}\le e^{-x} なので、I≤1+e−1=1.368I\le1+e^{-1}=1.368 である。π/2=0.8862\sqrt\pi/2=0.8862 はこの範囲にある。全直線では偶関数なので ∫−∞∞e−x2dx=π\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx=\sqrt\pi で、これは正規分布の規格化定数と同じものである。

誤りは、角度の範囲を 0≤φ≤2π0\le\varphi\le2\pi にすることである。第1象限だけの積分に全周を使うと I2=2π⋅12=πI^2=2\pi\cdot\dfrac12=\pi から I=π=1.7725I=\sqrt\pi=1.7725 となり、上の評価 1.3681.368 を超えるので誤りと分かる。∫0∞e−ρ2ρ dρ=12\int_0^\infty e^{-\rho^2}\rho\,d\rho=\dfrac12 の 12\dfrac12 を落とすと、I2=π2I^2=\dfrac\pi2 から I=1.2533I=1.2533 となり、これも正しい値 0.88620.8862 から離れる。

(3) フレネル積分 ∫0∞cos⁡(x2) dx\displaystyle\int_0^\infty\cos(x^2)\,dx

コーシーの積分定理は、単連結な領域 DD で ff が正則(複素微分可能)で、CC が DD 内の区分的に滑らかな閉曲線なら ∮Cf dz=0\oint_Cf\,dz=0 となる、という定理である。理由は、f=u+ivf=u+iv、dz=dx+i dydz=dx+i\,dy として ∮Cf dz=∮C(u dx−v dy)+i∮C(v dx+u dy)\oint_Cf\,dz=\oint_C(u\,dx-v\,dy)+i\oint_C(v\,dx+u\,dy) とし、グリーンの定理で2重積分に直すと、被積分関数が −(vx+uy)-(v_x+u_y) と ux−vyu_x-v_y になり、コーシー・リーマンの関係式 ux=vyu_x=v_y、uy=−vxu_y=-v_x でどちらも 00 になるためである。e−z2e^{-z^2} は全平面で正則なので、どんな閉曲線にも使える。曲線に沿う積分は、媒介変数表示 z=z(t)z=z(t) で ∫f(z(t)) z′(t) dt\int f(z(t))\,z'(t)\,dt と書く。向きが逆の経路では積分の符号が反転する。

問題文が「円弧 AB の積分が 00 に収束する」ことを認め、偏角 π/4\pi/4 の線分と e−z2e^{-z^2} を指定していることが、この積分路を使う合図である。θ=π/4\theta=\pi/4 で z2z^2 が純虚数になり、e−z2e^{-z^2} が三角関数に化けるので、実軸上のガウス積分の値から cos⁡(x2)\cos(x^2) と sin⁡(x2)\sin(x^2) の積分が一度に出る。円弧の評価は証明なしで使ってよいが、∣f∣=e−r2cos⁡2θ|f|=e^{-r^2\cos2\theta} と cos⁡2θ≥1−4θπ\cos2\theta\ge1-\dfrac{4\theta}\pi(0≤θ≤π40\le\theta\le\dfrac\pi4)から ∣∫ABf dz∣≤r∫0π/4e−r2(1−4θ/π)dθ=π4r(1−e−r2)→0 \left|\int_{\mathrm{AB}}f\,dz\right|\le r\int_0^{\pi/4}e^{-r^2(1-4\theta/\pi)}d\theta=\frac{\pi}{4r}\bigl(1-e^{-r^2}\bigr)\to0 と示せる。cos⁡2θ\cos2\theta は区間で上に凸で、両端 (0,1)(0,1)、(π/4,0)(\pi/4,0) を結ぶ弦より上にあることを使った。

確かめでは3つの数値を使う。r=3r=3 で円弧の積分の大きさは 0.16550.1655(上の評価は 0.26180.2618)、r=5r=5 で 0.09990.0999(評価は 0.15710.1571)となり、rr とともに小さくなる。ただし減衰は 1/r1/r のオーダーと遅いことが分かる。次に、閉曲線の3つの積分の和は r=2,3,5r=2,3,5 でいずれも絶対値が 10−3010^{-30} 以下になる。最後に、打ち切り積分 ∫0Rcos⁡(x2)dx\int_0^R\cos(x^2)dx は、R=10,20,40R=10,20,40 で 0.6011, 0.6054, 0.61660.6011,\ 0.6054,\ 0.6166 と 0.62670.6267 に近づき、誤差は 12R\dfrac1{2R} 以下である。

誤りは3つある。1つ目は、dz=eiπ/4dtdz=e^{i\pi/4}dt の因子を落とすことで、このとき ∫0∞e−it2dt=π2\int_0^\infty e^{-it^2}dt=\dfrac{\sqrt\pi}2 となり、実部は 0.88620.8862 で正しい値 0.62670.6267 の 2\sqrt2 倍になる。2つ目は、B から O へ進む向きを無視して符号を ++ にすることで、π2+eiπ/4∫0∞e−it2dt=0\dfrac{\sqrt\pi}2+e^{i\pi/4}\displaystyle\int_0^\infty e^{-it^2}dt=0 から実部が −0.6267-0.6267 になる。実際には、最初の山 0≤x≤π/20\le x\le\sqrt{\pi/2} だけで ∫cos⁡(x2) dx=0.9775\int\cos(x^2)\,dx=0.9775 あり、以降の振動の寄与の合計は −0.3508-0.3508 と、全体が負になるほど大きくない。3つ目は実部と虚部の取り違えで、e−it2=cos⁡(t2)−isin⁡(t2)e^{-it^2}=\cos(t^2)-i\sin(t^2) の虚部は −sin⁡(t2)-\sin(t^2) なので、sin⁡(x2)\sin(x^2) の積分は虚部の符号を反転した +2π4+\dfrac{\sqrt{2\pi}}4 である。

解答

(1) 線分 OB 上の f(z)f(z)

図より、線分 OB は原点から偏角 π/4\pi/4 の方向に伸びる。原点からの距離を tt(0≤t≤r0\le t\le r)とすると、線分上の点は z=teiπ/4z=te^{i\pi/4} と書ける。このとき z2=t2eiπ/2=it2 z^2=t^2e^{i\pi/2}=it^2 なので f(z)=e−z2=e−it2. f(z)=e^{-z^2}=e^{-it^2}.

(2) ガウス積分 ∫0∞e−x2dx\displaystyle\int_0^\infty e^{-x^2}dx

I=∫0∞e−x2dxI=\displaystyle\int_0^\infty e^{-x^2}dx とおく。x≥1x\ge1 で e−x2≤e−xe^{-x^2}\le e^{-x} なので II は収束し、I>0I>0 である。I2I^2 を2つの積分の積として書き、被積分関数が非負であることから積分の順序を入れ替えて第1象限 x,y≥0x,y\ge0 の2重積分にする。 I2=∫0∞e−x2dx∫0∞e−y2dy=∬x,y≥0e−(x2+y2) dx dy. I^2=\int_0^\infty e^{-x^2}dx\int_0^\infty e^{-y^2}dy=\iint_{x,y\ge0}e^{-(x^2+y^2)}\,dx\,dy. 極座標 x=ρcos⁡φx=\rho\cos\varphi、y=ρsin⁡φy=\rho\sin\varphi(0≤ρ<∞0\le\rho<\infty、0≤φ≤π/20\le\varphi\le\pi/2)に変換する。面積要素は dx dy=ρ dρ dφdx\,dy=\rho\,d\rho\,d\varphi である。 I2=∫0π/2dφ∫0∞e−ρ2ρ dρ=π2[−12e−ρ2]0∞=π2⋅12=π4. I^2=\int_0^{\pi/2}d\varphi\int_0^\infty e^{-\rho^2}\rho\,d\rho=\frac\pi2\left[-\frac12e^{-\rho^2}\right]_0^\infty=\frac\pi2\cdot\frac12=\frac\pi4. I>0I>0 より I=π2I=\dfrac{\sqrt\pi}2 である。

(3) フレネル積分 ∫0∞cos⁡(x2) dx\displaystyle\int_0^\infty\cos(x^2)\,dx

f(z)=e−z2f(z)=e^{-z^2} は全平面で正則なので、コーシーの積分定理より、閉曲線 O→A→B→O\mathrm{O}\to\mathrm{A}\to\mathrm{B}\to\mathrm{O} について ∫OAf dz+∫ABf dz+∫BOf dz=0. \int_{\mathrm{OA}}f\,dz+\int_{\mathrm{AB}}f\,dz+\int_{\mathrm{BO}}f\,dz=0. 各部分を計算する。

OA:z=xz=x(0≤x≤r0\le x\le r)で ∫OAf dz=∫0re−x2dx\displaystyle\int_{\mathrm{OA}}f\,dz=\int_0^re^{-x^2}dx。

AB:問題の指示により lim⁡r→∞∫ABf dz=0\displaystyle\lim_{r\to\infty}\int_{\mathrm{AB}}f\,dz=0。

BO:z=teiπ/4z=te^{i\pi/4} で、B から O へ進むので tt は rr から 00 へ動く。dz=eiπ/4dtdz=e^{i\pi/4}dt と(1)の f=e−it2f=e^{-it^2} より ∫BOf dz=∫r0e−it2eiπ/4dt=−eiπ/4∫0re−it2dt. \int_{\mathrm{BO}}f\,dz=\int_r^0e^{-it^2}e^{i\pi/4}dt=-e^{i\pi/4}\int_0^re^{-it^2}dt.

r→∞r\to\infty とすると、(2)の結果より π2−eiπ/4∫0∞e−it2dt=0⟹∫0∞e−it2dt=e−iπ/4π2=π22(1−i). \frac{\sqrt\pi}2-e^{i\pi/4}\int_0^\infty e^{-it^2}dt=0 \quad\Longrightarrow\quad \int_0^\infty e^{-it^2}dt=e^{-i\pi/4}\frac{\sqrt\pi}2=\frac{\sqrt\pi}{2\sqrt2}(1-i). e−it2=cos⁡(t2)−isin⁡(t2)e^{-it^2}=\cos(t^2)-i\sin(t^2) なので、実部を比べて ∫0∞cos⁡(x2) dx=π22=2π4. \int_0^\infty\cos(x^2)\,dx=\frac{\sqrt\pi}{2\sqrt2}=\frac{\sqrt{2\pi}}4. 虚部からは ∫0∞sin⁡(x2) dx=2π4\displaystyle\int_0^\infty\sin(x^2)\,dx=\frac{\sqrt{2\pi}}4 も得られる。

最終答

(1) 線分 OB 上の f(z)f(z)

f(z)=e−it2f(z)=e^{-it^2} (z=teiπ/4z=te^{i\pi/4}、0≤t≤r0\le t\le r)

(2) ガウス積分 ∫0∞e−x2dx\displaystyle\int_0^\infty e^{-x^2}dx

∫0∞e−x2dx=π2\displaystyle\int_0^\infty e^{-x^2}dx=\frac{\sqrt\pi}{2}

(3) フレネル積分 ∫0∞cos⁡(x2) dx\displaystyle\int_0^\infty\cos(x^2)\,dx

∫0∞cos⁡(x2) dx=2π4=12π2≈0.6267\displaystyle\int_0^\infty\cos(x^2)\,dx=\frac{\sqrt{2\pi}}4=\frac12\sqrt{\frac\pi2}\approx0.6267

第3問 — 微分方程式:1階線形方程式とベルヌーイ型方程式

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第4問 — 情報理論:巡回シフト型9元通信路の容量とゼロ誤り通信

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第5問 — 電磁気学:接地導体球と点電荷の鏡像法

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第6問 — 電磁気学:通電円柱導体の磁場・ベクトルポテンシャル・ポインティングベクトル

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第7問 — 電磁気学:誘電体との境界の面電流が作る平面波

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電子光科学Iの解答・解説PDF

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2022年度の出題内容

解説7項目

この7問の分野は電磁気学・回路3問・情報1問・線形代数1問・微分方程式1問・複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数3次実対称行列の固有値・固有ベクトルと直交対角化—あり
第2問複素解析コーシーの積分定理によるガウス積分とフレネル積分—あり
第3問微分方程式1階線形方程式とベルヌーイ型方程式—あり
第4問情報巡回シフト型9元通信路の容量とゼロ誤り通信—あり
第5問電磁気学・回路接地導体球と点電荷の鏡像法—あり
第6問電磁気学・回路通電円柱導体の磁場・ベクトルポテンシャル・ポインティングベクトル—あり
第7問電磁気学・回路誘電体との境界の面電流が作る平面波—あり

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
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2026-10-26
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