阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 電子光科学I 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(解説6項目)
解説6項目の分野は電磁気学・回路2項目、情報1項目、複素解析1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。
最終更新:
第1問 — 解析:逆双曲線関数と逆三角関数の対数表示とマクローリン展開
解析:逆双曲線関数と逆三角関数の対数表示とマクローリン展開の途中式・最終答をPDFで見る第2問 — 複素解析:三角関数の周期積分と留数定理
複素解析:三角関数の周期積分と留数定理の途中式・最終答をPDFで見る第3問 — 情報理論:2元対称通信路と拡大ハミング符号の復号
(1) 個の誤りが生じる確率と誤り個数の平均
各ビットの誤りが独立で、確率が同じ である通信路を、無記憶な2元対称通信路という。誤り個数 は、 回の独立な試行で「反転」が起きる回数なので、二項分布に従う。ここでは、通信路が無記憶で、各ビットに同じ が独立に作用すると仮定している。問題が「長さ の符号語」と「誤りの確率 」だけを与えていることが、二項分布を使う合図である。
平均は、 番目のビットの誤りを指示変数 (期待値 )とし、 の期待値を足して とする方法でも求まる。
確かめでは、 を使う。、 なら 、、 で、平均は 個である。誤りは、 を落として だけを答えるものである。、 では の和が となり、確率の和が にならないので気づける。
(2) 補元 も符号語になることの証明
線形符号は、検査方程式 の解全体で、足し算について閉じている。補元をとる操作は に を足すことなので、 が符号語でありさえすれば、補元は必ず符号語になる。 が符号語であるための条件は、 のすべての行の重みが偶数であることで、これが示すべき核心である。問題が「ある が符号語なら も」と、すべての符号語について述べていることが、符号語 を個別に調べずに だけを調べる合図である。
この の8本の列は、 の形のベクトル8通りを1回ずつ取っている。つまり拡大ハミング符号 で、符号語は 個、最小距離は である。16個の符号語を全部書き出すと、重み が1個、重み が14個、重み が1個で、 は符号語の1つである。具体例では、(4)で出る符号語 の補元 に を掛けると、4行とも の個数が偶数で になる。
誤りは、いくつかの符号語で補元が符号語になることを確かめて、証明の代わりにするものである。全符号語についての主張なので、線形性と から示す必要がある。行の重みが1つでも奇数なら は符号語にならず、補元は符号語とは限らない。答案では、第4行の重み も含めた4行すべてが偶数であることを省かずに書く。
(3) 受信語 の復号
シンドローム復号は、 と から となり、 が送信符号語 によらず誤りパターン だけで決まることを使う。 から を推定して と戻す。通信路が なら、誤りが少ないパターンほど確からしい。問題が「推定できない場合は理由を述べよ」と書いていることが、誤り訂正の限界(最小距離 なら訂正は1個まで)に当たる場合を含む合図である。
4つの候補符号語は互いに距離がちょうど で、受信語から距離 の位置にある。最小距離 の符号では、1個の誤りは訂正でき、2個の誤りは検出できるが、受信語が2つの符号語の中間に来うるので訂正できない。数値では、(1,1,1,1,1,1,1,1) と は位置 で違い、距離は である。距離 の個数 は、16個の符号語を全部調べた結果である。
誤りは、第4行(全ビットの和)を飛ばして上3行だけでシンドロームを見るものである。 が になり、第1列の上3成分と一致するので「位置1の1個の誤り」と判定して を出力する。この語に を掛けると で符号語ではなく、誤りの個数の偶奇が見えていなかったことが分かる。4つの候補から1つを理由なく選ぶのも誤りである。
(4) 受信語 の復号
1個の誤りが位置 に生じたときのシンドロームは、 の第 列そのものである。この では8本の列がすべて異なるので、 から位置が一意に決まる。(3) と (4) の違いは第4成分で、 なら偶数個で1個訂正はできず、 なら奇数個で1個訂正に進める。
との距離は である。最小距離が なので、受信語から距離 以内にある符号語は高々1つで、推定は一意である。誤りが 個になる符号語もそれぞれ 個あるが、確率は 個の場合の 、、 倍で、 では無視できる。
誤りは、通常のハミング符号と同じようにシンドロームを2進数と読むものである。 は で、符号長 の範囲を超える。この の列は2進数の順に並んでいないので、 と一致する列を探して位置を決める。
(5) 復号後の誤り個数の平均
復号後の誤り個数は、誤りパターンの重み ごとに平均 と書ける。 は重み の1パターンあたりの復号後の誤り個数である。1個の誤りが訂正されるので で、 の1次の項が消える。残る最低次は、訂正されない2個の誤りによる である。問題が「 の次数が低い方から2項」と指定していることが、 と を数えれば足りるという合図である。
は、誤りが減るのでなく、増える場合である。例として誤りが位置 にあると で、位置 を反転するので復号結果の誤りは位置 の4個になる。この4点は重み4の符号語の台である。
全256通りの誤りパターンを数え上げた厳密な式は で、 の項は になる。2項近似は で (厳密値と一致)、 で (厳密値 )である。符号化しない場合の は と で、 では約 に減る。
誤りは数え方にある。 で厳密値 に対し、 の誤訂正を忘れて とすると 、 を誤り3個のままと数えて とすると 、 の展開を忘れて とすると になる。 に2個を掛けずに と書く誤りは、 と半分になる。
解答
(1) 個の誤りが生じる確率と誤り個数の平均
行列 の対角成分 が、ビットがそのまま伝わる確率である。各ビットは独立に確率 で反転する。誤りの位置を指定した 個の集合に対して、その位置だけが反転し、残る 個が反転しない確率は である。位置の選び方は 通りで、これらは互いに排反だから 平均は を使って
(2) 補元 も符号語になることの証明
が符号語であることは、 と同じである。全成分が のベクトルを とおくと、 なので である。
まず を求める。第 成分は の第 行にある の個数を で数えたものである。各行の の個数は、第1行 、第2行 、第3行 、第4行 で、いずれも偶数だから である。
したがって となり、 も符号語である。
(3) 受信語 の復号
シンドローム を求める。 よって で、誤りが含まれる。
なら なので、 は誤りの位置に対応する列 の和になる。 のどの列も第4成分は だから、 の第4成分は誤りの個数の偶奇である。 の第4成分は なので、誤りの個数は偶数である。1個の誤りなら が1本の列に等しく第4成分が になるので、誤りは1個ではない。
2個の誤りを調べる。列の上3成分は から の8通りを1回ずつ取るので、 となる位置の組は、上3成分の和が になる組である。 の4組がある。受信語との距離が の符号語は の4つで、どれも同じ確率 をもつ。最も確からしい候補が1つに決まらないので、送信符号語は推定できない。
可能性のある誤りの個数は偶数で、距離が の符号語がそれぞれ 個ある。 個の誤りは送信符号語が の場合だが、(2)の結果から で符号語でないので、起こりえない。
(4) 受信語 の復号
で、これは の第4列 に一致する。第4成分が なので誤りは奇数個で、 では最も確からしいのは1個である。1個なら誤りは第4ビットなので、第4ビットを反転して とする。確かめでは の4行が、、、、 で、すべて偶数となり である。
(5) 復号後の誤り個数の平均
復号規則は次のとおりである。 なら を出力する。 で第4成分が なら、 に等しい列 の位置 を反転する。 で第4成分が なら、 をそのまま出力する。線形性より、復号後の誤り個数は送信符号語によらないので、 として誤りパターン の重み で場合分けする。
:誤りなし。: で位置 を反転し、誤りは 個になる。
: は でなく(列が異なる)、第4成分は なので、 がそのまま出力される。誤りは2個。パターンは 通り。
: の第4成分は で、8本の列のうちの1つ に等しい。 なら残りの2列の和が になり、列が異なることに反するので、 は と異なる。位置 を反転するので誤りは 個になる。パターンは 通り。
の項は 以上である。平均は を入れると、 の係数は である。よって
最終答
(1) 個の誤りが生じる確率と誤り個数の平均
(二項分布)、誤り個数の平均は
(2) 補元 も符号語になることの証明
証明。各行の の個数が偶数なので 、線形性より 。
(3) 受信語 の復号
推定できない。理由: で第4成分が なので誤りは偶数個であり、2個の誤りの位置が の4通りで同じ確率になる。可能性のある誤りの個数は 個。
(4) 受信語 の復号
送信符号語は と推定できる(第4ビットの1個の誤り)。
(5) 復号後の誤り個数の平均
(符号化しない場合の平均 より、 で小さい)
第4問 — 量子力学:電子スピンの期待値・時間発展・固有値問題
量子力学:電子スピンの期待値・時間発展・固有値問題の途中式・最終答をPDFで見る第5問 — 電磁気学:同軸円筒導体の静電場・静磁場と進行波
電磁気学:同軸円筒導体の静電場・静磁場と進行波の途中式・最終答をPDFで見る第6問 — 電磁気学:磁場中で回転する導体円筒に生じる電場と電荷分布
電磁気学:磁場中で回転する導体円筒に生じる電場と電荷分布の途中式・最終答をPDFで見る年度別の解答例(5年度)
線形代数:対称行列の直交対角化と行列指数関数 / 複素関数論:留数定理による実軸上の広義積分 / 情報理論:エントロピー、最適な瞬時符号、弱大数の法則
微分積分:楕円体面上での xyz の極値(ラグランジュの未定乗数法) / 複素解析:極座標のコーシー・リーマンの方程式と対数関数の周回積分 / 情報理論:3値入力・4値出力の通信路の相互情報量と通信路容量
2024年度(このページ・解説6項目)
解析:逆双曲線関数と逆三角関数の対数表示とマクローリン展開 / 複素解析:三角関数の周期積分と留数定理 / 情報理論:2元対称通信路と拡大ハミング符号の復号
微積分:指数関数と三角関数の積の不定積分と広義積分 / 複素解析:有理関数のフーリエ型積分を留数定理で求める / 情報理論:パリティ検査行列で定まる(8,4)線形符号の符号化と復号
線形代数:3次実対称行列の固有値・固有ベクトルと直交対角化 / 複素解析:コーシーの積分定理によるガウス積分とフレネル積分 / 微分方程式:1階線形方程式とベルヌーイ型方程式
2024年度の出題内容
解説6項目
前年度(2023年度)との違い
- 大問数
- 2023年度 7問 → 2024年度 6問
大阪大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
- 公式の解答例
- 解答例の掲載なし
- 英語の扱い
- 受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
- 院試hubの最終確認
- 2026-10-26