阪大 基礎工学研究科 物質創成専攻 化学I 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)
解説5項目の分野は化学2項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。
最終更新:
第1問 — 有機化学:モノグリセリドのけん化、臭素付加の立体化学、DCC・DMAPによるエステル化
有機化学:モノグリセリドのけん化、臭素付加の立体化学、DCC・DMAPによるエステル化の途中式・最終答をPDFで見る第2問 — 有機合成:カルボンからヘルミントスポラールへ
有機合成:カルボンからヘルミントスポラールへの途中式・最終答をPDFで見る第3問 — 無機化学:遷移金属錯体の構造と電子状態、酸性度の序列、I3- の構造
無機化学:遷移金属錯体の構造と電子状態、酸性度の序列、I3- の構造の途中式・最終答をPDFで見る第4問 — 反応速度論:自触媒反応 A → P の速度と時間変化
設問(a-1) 反応速度 の式と -- のグラフ
物質収支は、容器が閉じていて体積が一定で、A と P の量論比が のときに成り立つ。問題文の「一定温度に保たれた容器内」がこの前提を与える。和 が一定なので、時間の関数としての と は一方が決まれば他方が決まり、速度は 1変数の関数になる。
速度が極大をもつ理由は、自触媒反応の2つの効果の競合である。P が増えると触媒が増えて速くなるが、同時に A が減るので、ある点から減少に転じる。放物線 (、)は、2つの零点 と の中点 で最大になる。範囲は に限られ、 という条件が、頂点がこの範囲に入るための条件である。逆に なら、頂点は範囲の左外にあり、 は反応開始時に最大で、単調に減る。2階微分 が極大であることを示す。
初速度 は、 なら零である。生成物がまったくないと反応が始まらないのが、自触媒反応の特徴で、実際には微量の P(種)が要る。
数値で確かめる。、、(任意単位)では、初速度が 、極大は で であり、微分方程式を数値積分して得た速度の最大値も だった。
答案の誤りとして、 のまま、 を消さずに の関数として描く例がある。極大の位置を としてしまう例もあるが、 を落としている。上の数値例では、 の速度は で、極大値 より小さい。横軸の範囲を から始める誤りもある。
設問(a-2) を で表す式
この微分方程式は、ロジスティック方程式 である。変数分離形の積分は、部分分数分解が核になる。 は、右辺を通分すると となり、確かめられる。分解で現れる が、積分形の係数 になる。
結果を について解くと、 となる。 で に一致し、 で (すなわち )に近づく。初めはゆっくり、中ほどで急に、最後はまたゆっくり進む S 字曲線で、自触媒反応の特徴である。式の確かめとして、 では対数の中が になって となり、 で対数が発散して となる。反応が有限時間では完結しないことに対応する。次元は、 が濃度の逆数と時間の逆数の積、 が時間の逆数で、 は無次元になる。
数値で確かめる。、、 のとき、 で 、 となる。この値を積分形に入れると で、 に一致する。
誤りとして、一次反応の積分形 を流用する答案がある。この反応の速度は だけでなく にも比例するので、一次反応の式は使えない。係数 を落とす誤りもある。上の数値例では と、 大きな値になる。
設問(a-3) が極大となる時間
で、和 が一定のとき、積が最大になるのは2つが等しいときである(相加平均と相乗平均の関係)。これが「 で が最大」の別の見方で、(a-1)の放物線の頂点と同じ結論になる。極大の時刻は、この条件を(a-2)の積分形に代入して決まる。代入すると、対数の中が だけになる。
別の見方として、ロジスティック曲線の変曲点が の最大点にあたる。 とおくと、 で、 となり、同じ結果が得られる。
のとき、 で である。 が小さいほど、対数が大きくなって は遅れる。種が少ないと、反応が加速に入るまで時間がかかる。 なら、 は反応開始時が最大で、この式は適用できない。
数値で確かめる。、、 のとき、 である。微分方程式を数値積分し、速度が最大になる時刻を探すと で、そのときの は だった。
誤りには、積分形の係数を取り違える例がある。分母を とすると 、 とすると になり、正しい と合わない。 を使わずに、 などを代入する誤りもある。
設問(b) 速度の差 が最大となる
「同じ生成物濃度で比べる」ことの意味は、(b)の速度 も の関数として書き、(a)の と同じ横軸の上に並べることである。(b)の系でも、初濃度が同じで量論が なら、 は から と決まる。したがって、 は の1次関数で、グラフでは と を結ぶ直線になる。放物線 と直線 は、両端で交わる。
差 の意味を式で見ると、 である。触媒の濃度が初期値 から増えた分 が、反応を加速する量を表す。 の増加が大きいほど加速が大きいが、A が減るにつれて加速の効く相手が少なくなる。この積は、A がちょうど半分()に減ったときに最大になる。このとき となり、確かに等しい。
数値で確かめる。、、 では、最大位置が 、最大値が となり、 と一致する。格子点で差を計算して最大を探した値も と だった。
(a)の速度の最大位置 と、この問いの位置 は異なる。前者は そのものの最大、後者は と の差の最大で、 が とともに減るぶん、最大点が右へ だけずれる。数値例では と である。
誤りとして、(a)の頂点 をそのまま答える例がある。数値例でこの位置 の差は で、最大値 より小さい。また、 を とおく例は、初速度が等しいという条件 を使っていない。
解答
設問(a-1) 反応速度 の式と -- のグラフ
A P の化学量論は なので、A が濃度 だけ反応すると 、 となり、 が成り立つ。これで を消すと、速度は の関数として と表せる。 の2次関数で、上に凸の放物線である。 が取りうる範囲は、反応開始時の から、A が尽きる までである。極大点は で、 なので となり、極大は範囲の内側にある。極大値は である。端点の値は、 で 、 で である。
自作図: と の関係。反応は左端から右へ進む。放物線の形を見せるため、 は より十分小さくとった
設問(a-2) を で表す式
と(a-1)の結果から、 である。変数を分離して、 左辺は部分分数に分解できる。 これを 、 で積分する。 、 なので、
設問(a-3) が極大となる時間
が極大になる条件は、(a-1)より である。このとき、物質収支から となり、 である。(a-2)の式で を代入すると、
設問(b) 速度の差 が最大となる
(b)の反応は一次反応 である。初速度が(a)の反応と等しいので、 から となる。(b)でも A P は で、初濃度が(a)と同じだから、同じ生成物濃度 のとき も同じである。したがって、 これは の2次関数で、上に凸、零点は と である。最大は2つの零点の中点で、 である。そのときの差は である。
自作図:(a)の速度 (実線)と(b)の速度 (破線)。横軸は同じ で、両者の差が最大になる位置を矢印で示す
最終答
設問(a-1) 反応速度 の式と -- のグラフ
。グラフは、 で、点 から上り、 で極大値 をとり、点 へ下がる放物線の一部である。
設問(a-2) を で表す式
設問(a-3) が極大となる時間
設問(b) 速度の差 が最大となる
(そのときの差 の最大値は )。
第5問 — 電気化学:金属 X の電位--pH 図と標準生成 Gibbs エネルギー
電気化学:金属 X の電位--pH 図と標準生成 Gibbs エネルギーの途中式・最終答をPDFで見る年度別の解答例(4年度)
反応速度論:NOの気相酸化と定常状態近似 / 相平衡:化学ポテンシャルから導く沸点上昇 / 無機化学:O_2の分子軌道、窒素のLatimer図、イオン化エネルギー
2025年度(このページ・解説5項目)
有機化学:モノグリセリドのけん化、臭素付加の立体化学、DCC・DMAPによるエステル化 / 有機合成:カルボンからヘルミントスポラールへ / 無機化学:遷移金属錯体の構造と電子状態、酸性度の序列、I3- の構造
無機化学:分子の構造と点群、八面体錯体の結晶場理論 / 有機化学:ピリジンの求電子置換と求核置換、ピラジン環の構築 / 有機化学:Claisen縮合、ジアゾ化合物による環拡大、ジアニオンのアルキル化
有機合成:Claisen 転位を使った β-ionone の合成 / 糖質化学:D-ガラクトースから epi-inositol への合成 / 無機化学:アルカリ金属の結晶構造・酸化物・還元反応
2025年度の出題内容
解説5項目
前年度(2024年度)との違い
- 大問数
- 2024年度 5問 → 2025年度 5問
大阪大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
- 公式の解答例
- 解答例の掲載なし
- 英語の扱い
- 受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
- 院試hubの最終確認
- 2026-10-26