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阪大 基礎工学研究科 物質創成専攻 化学I 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は化学3項目、熱・統計力学1項目、量子力学1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 無機化学:分子の構造と点群、八面体錯体の結晶場理論

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第2問 — 有機化学:ピリジンの求電子置換と求核置換、ピラジン環の構築

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第3問 — 有機化学:Claisen縮合、ジアゾ化合物による環拡大、ジアニオンのアルキル化

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第4問 — 熱力学:完全気体と van der Waals 気体の等温可逆膨張

設問(a-1) 気体Aの等温可逆膨張の仕事 ww

仕事を ∫p dV\int p\,dV とおけるのは、可逆(準静的)変化で、外圧が系の圧力と常に釣り合っているときだけである。急に外圧を下げる不可逆膨張では、外圧が系の圧力より小さく、系がする仕事はこの値より小さくなる。等温変化では、気体の圧力が p=RT/Vp=RT/V と体積につれて変わるので、p ΔVp\,\Delta V の掛け算でなく積分が必要になる。積分の結果は、pp--VV 図の双曲線の下の面積である。圧力で書けば、Boyle の法則 Vf/Vi=pi/pfV_f/V_i=p_i/p_f から w=RTln⁡(pi/pf)w=RT\ln(p_i/p_f) となる。仕事は経路に依存する量なので、可逆か不可逆か、等温か断熱かを決めてから積分する。

符号の約束に注意する。出題は「外界にする仕事」を ww とするので、膨張(Vf>ViV_f>V_i)で w>0w>0 になる。「系にされた仕事」を正とする IUPAC の流儀では、符号が逆の −RTln⁡(Vf/Vi)-RT\ln(V_f/V_i) になり、第一法則も ΔU=q+w\Delta U=q+w と書く。物理的な内容は同じで、第一法則の符号が ww の定義に合っているかを確かめる。

数値で確かめる。出題に値がないので、T=300 KT=300\ \mathrm{K}、Vf/Vi=2V_f/V_i=2 を仮定する(仮定の数値例)。w=8.314×300×ln⁡2=1729 Jw=8.314\times300\times\ln2=1729\ \mathrm{J} である。

誤りとして、圧力を初期値のまま一定とみなして w=pi(Vf−Vi)=RT(Vf/Vi−1)w=p_i(V_f-V_i)=RT(V_f/V_i-1) と書く答案がある。上の数値例では 2494 J2494\ \mathrm{J} で、正しい値の約1.44倍になる。実際は膨張とともに圧力が下がるので、仕事は小さい。対数を常用対数 log⁡10\log_{10} にしてしまう誤りもあり、その場合は 751 J751\ \mathrm{J} になる。

設問(a-2) 気体Aの ΔU\Delta U と ΔS\Delta S

式(2)は、熱力学の第一法則と第二法則から導かれる関係で、追加の仮定ではない。dU=T dS−p dVdU=T\,dS-p\,dV を、TT 一定で体積について偏微分すると (∂U∂V)T=T(∂S∂V)T−p\left(\dfrac{\partial U}{\partial V}\right)_T=T\left(\dfrac{\partial S}{\partial V}\right)_T-p となる。Helmholtz エネルギー A=U−TSA=U-TS の微分 dA=−S dT−p dVdA=-S\,dT-p\,dV で、∂2A/∂V∂T\partial^2A/\partial V\partial T の順序を入れ替えて得る Maxwell の関係 (∂S∂V)T=(∂p∂T)V\left(\dfrac{\partial S}{\partial V}\right)_T=\left(\dfrac{\partial p}{\partial T}\right)_V を代入すると、式(2)になる。状態方程式を式(2)へ代入すれば、実験で内部エネルギーの体積依存性が測れなくても、ΔU\Delta U が求まる。

(∂U/∂V)T(\partial U/\partial V)_T は内部圧とも呼ばれ、等温で体積を変えたときの内部エネルギーの変化率である。完全気体では 00 で、Joule の実験(真空への膨張で温度が変わらない)と一致する。

結果は、熱の収支で確かめられる。等温可逆膨張では ΔU=0\Delta U=0 なので、第一法則から q=wq=w となり、気体が吸った熱がそのまま仕事として外へ出る。エントロピーは ΔS=qrev/T=w/T=Rln⁡(Vf/Vi)\Delta S=q_{\mathrm{rev}}/T=w/T=R\ln(V_f/V_i) で、式(2)から出した値と一致する。(a-1)の仮定の数値例では、ΔS=8.314×ln⁡2=5.763 J K−1\Delta S=8.314\times\ln2=5.763\ \mathrm{J\,K^{-1}}、q=TΔS=1729 Jq=T\Delta S=1729\ \mathrm{J} である。

誤りとして、熱を吸収するのだから ΔU>0\Delta U>0 だと答える例がある。吸った熱はすべて仕事に使われ、気体の内部エネルギーは変わらない。断熱可逆膨張と混同して ΔS=0\Delta S=0 と答える例もある。断熱の場合は q=0q=0 で温度が下がるが、本問は等温なので熱を吸い、エントロピーは 5.763 J K−15.763\ \mathrm{J\,K^{-1}} 増える。

設問(b-1) 気体Bの等温可逆膨張の仕事 ww

van der Waals の式 (p+aV2)(V−b)=RT\left(p+\dfrac{a}{V^2}\right)(V-b)=RT は、完全気体の式 pV=RTpV=RT に2つの補正を加えたものである。bb は分子自身の大きさによる排除体積で、分子が動ける体積を VV から V−bV-b に減らす。同じ体積では圧力が上がる。a/V2a/V^2 は分子間の引力による補正で、壁にぶつかる分子が内側へ引かれて、圧力が下がる。引力に引かれる分子の数と、引く分子の数がそれぞれ密度に比例するので、補正は密度の2乗、すなわち 1/V21/V^2 に比例する。

積分で必要な条件は、V>bV>b だけである。V−bV-b は分子が動ける体積なので、正でなければならない。a→0a\to0 と b→0b\to0 の極限をとると、ww は RTln⁡(Vf/Vi)RT\ln(V_f/V_i) に戻り、(a-1)の結果と一致する。

数値で確かめる。(a-1)と同じ T=300 KT=300\ \mathrm{K}、Vi=1.00 LV_i=1.00\ \mathrm{L}、Vf=2.00 LV_f=2.00\ \mathrm{L} に、二酸化炭素に近い値 a=0.364 Pa m6 mol−2a=0.364\ \mathrm{Pa\,m^6\,mol^{-2}}、b=4.27×10−5 m3 mol−1b=4.27\times10^{-5}\ \mathrm{m^3\,mol^{-1}} を仮定する(仮定の数値例)。w=1601.9 Jw=1601.9\ \mathrm{J} で、Aの 1728.8 J1728.8\ \mathrm{J} より小さい。内訳は、aa だけを考えると 1546.8 J1546.8\ \mathrm{J}(Aより 182.0 J182.0\ \mathrm{J} 小)、bb だけを考えると 1783.9 J1783.9\ \mathrm{J}(Aより 55.0 J55.0\ \mathrm{J} 大)で、引力の効果が排除体積の効果を上回っている。出る仕事の大小は aa と bb の兼ね合いで決まり、条件が変われば逆転する。

誤りとして、引力の項の符号を逆にして −a(1/Vf−1/Vi)-a(1/V_f-1/V_i) とする答案がある。上の数値例では 1965.9 J1965.9\ \mathrm{J} になり、正しい値より 364.0 J364.0\ \mathrm{J} 大きい。V−bV-b を VV のままにして bb を落とすと、bb の効果の 55.0 J55.0\ \mathrm{J} が抜けて 1546.8 J1546.8\ \mathrm{J} になる。

設問(b-2) 気体Bの ΔU\Delta U と ΔS\Delta S

式(2)は、状態方程式から内部エネルギーの体積依存性を引き出す道具で、気体Bでは内部圧が a/V2a/V^2 になる。pp の RT/(V−b)RT/(V-b) の部分は、式(2)の T(∂p/∂T)VT(\partial p/\partial T)_V と完全に打ち消し合い、引力の項 −a/V2-a/V^2 だけが符号を変えて残る。このため、ΔU\Delta U に bb は現れない。ΔS\Delta S では逆に、a/V2a/V^2 の項が打ち消し合って、bb だけが残る。

もう1つの見方で、U=U0(T)−a/VU=U_0(T)-a/V(1 mol、U0U_0 は温度だけの関数)と書ける。TT 一定で ViV_i から VfV_f へ変えると ΔU=−a/Vf+a/Vi\Delta U=-a/V_f+a/V_i となり、上の結果と同じになる。この式で、体積が無限大のとき U=U0(T)U=U_0(T) となるので、−a/V-a/V は、分子間の引力による相互作用エネルギー(負)の大きさを表す。

第一法則で確かめる。(b-1)の仮定の数値例で、q=TΔS=300×5.946=1783.9 Jq=T\Delta S=300\times5.946=1783.9\ \mathrm{J}、w=1601.9 Jw=1601.9\ \mathrm{J} なので、q−w=182.0 Jq-w=182.0\ \mathrm{J} になる。これは a(1/Vi−1/Vf)=0.364×(1000−500)=182.0 Ja(1/V_i-1/V_f)=0.364\times(1000-500)=182.0\ \mathrm{J} に一致する。エントロピーは 5.946 J K−15.946\ \mathrm{J\,K^{-1}} で、Aの 5.763 J K−15.763\ \mathrm{J\,K^{-1}} より大きい。b>0b>0 のとき (Vf−b)Vi−(Vi−b)Vf=b(Vf−Vi)>0(V_f-b)V_i-(V_i-b)V_f=b(V_f-V_i)>0 なので、Vf−bVi−b>VfVi\dfrac{V_f-b}{V_i-b}>\dfrac{V_f}{V_i} となり、常にAより大きいことがわかる。

誤りとして、気体Bでも ΔU=0\Delta U=0 と答える例がある。この答案は、等温ならば内部エネルギーが変わらないと考える完全気体の癖をそのまま使っている。数値例では 182.0 J182.0\ \mathrm{J} のずれになる。a/V2a/V^2 の符号を取り違えて ΔU=−182.0 J\Delta U=-182.0\ \mathrm{J} とする答案もあり、膨張で ΔU\Delta U が負になる結論は、(c)の説明と食い違う。圧縮(Vi=2.00 L→Vf=1.00 LV_i=2.00\ \mathrm{L}\to V_f=1.00\ \mathrm{L})では、符号が逆の ΔU=−182.0 J\Delta U=-182.0\ \mathrm{J} になる。

設問(c) ΔU\Delta U の大小関係と分子間相互作用

(b-2)の式が、この説明を数値で与える。ΔUB\Delta U_{\mathrm B} は aa に比例し、aa は分子間の引力の強さを表す。aa が大きい気体ほど、膨張による内部エネルギーの増加が大きい。体積が ViV_i から VfV_f へ増すほど、1/Vi−1/Vf1/V_i-1/V_f も大きくなる。Vf→∞V_f\to\infty では ΔU→a/Vi\Delta U\to a/V_i に近づく。

排除体積の補正 bb は、この差にまったく関わらない。van der Waals 気体の分子は、互いに近づけない硬い球とみなされ、硬い球の反発は、接触したときだけ無限大になり、それ以外では 00 である。この反発は、エネルギーを蓄えないので、内部エネルギーには寄与しない。反発は ΔS\Delta S と ww に現れる。(b-1)の数値例では、ΔU\Delta U の差が 182.0 J182.0\ \mathrm{J}、すなわち aa だけで決まっている。

実際の分子間ポテンシャルは、遠方で引力、近距離で強い反発をもつ。図は Lennard-Jones 型 u=4ε[(σ/r)12−(σ/r)6]u=4\varepsilon[(\sigma/r)^{12}-(\sigma/r)^6] の例で、r=1.4σr=1.4\sigma の u=−0.461εu=-0.461\varepsilon が r=2.0σr=2.0\sigma では −0.062ε-0.062\varepsilon に上がる。具体的な数値は模式図のための例で、分子の種類を指定していない。

誤りとして、引力があるから気体Bの方が内部エネルギーが小さいと答える例がある。引力のために内部エネルギーの絶対値は負側にずれているが、問われているのは膨張に伴う変化量で、距離が増えると引力のエネルギーが上がる。また、bb が ΔU\Delta U の差に効くとする答案もある。上の導出で、ΔU\Delta U は bb を含まない。

解答

設問(a-1) 気体Aの等温可逆膨張の仕事 ww

可逆膨張では外圧が系の圧力 pp にいつも等しいので、微小な体積変化 dVdV に対する仕事は dw=p dVdw=p\,dV である。完全気体 A(1 mol)では pV=RTpV=RT から p=RT/Vp=RT/V となる。TT は一定なので積分の外に出せて、 w=∫ViVfp dV=∫ViVfRTV dV=RTln⁡VfVi w=\int_{V_i}^{V_f}p\,dV=\int_{V_i}^{V_f}\frac{RT}{V}\,dV=RT\ln\frac{V_f}{V_i} となる。

設問(a-2) 気体Aの ΔU\Delta U と ΔS\Delta S

気体Aでは p=RT/Vp=RT/V なので、(∂p/∂T)V=R/V(\partial p/\partial T)_V=R/V である。式(2)に代入すると、 (∂U∂V)T=T⋅RV−RTV=0 \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T=T\cdot\frac{R}{V}-\frac{RT}{V}=0 となる。内部エネルギーは VV によらず、TT だけの関数である。TT が一定なので ΔU=∫ViVf(∂U∂V)TdV=0\Delta U=\int_{V_i}^{V_f}\left(\dfrac{\partial U}{\partial V}\right)_T dV=0。

エントロピーは、dU=T dS−p dVdU=T\,dS-p\,dV を TT 一定で dVdV について割った (∂U∂V)T=T(∂S∂V)T−p\left(\dfrac{\partial U}{\partial V}\right)_T=T\left(\dfrac{\partial S}{\partial V}\right)_T-p から、 (∂S∂V)T=1T[(∂U∂V)T+p]=1T[0+RTV]=RV \left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_T=\frac1T\left[\left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T+p\right]=\frac1T\left[0+\frac{RT}{V}\right]=\frac{R}{V} となる。積分して、 ΔS=∫ViVfRV dV=Rln⁡VfVi. \Delta S=\int_{V_i}^{V_f}\frac{R}{V}\,dV=R\ln\frac{V_f}{V_i}.

設問(b-1) 気体Bの等温可逆膨張の仕事 ww

式(1)を pp について解くと、 p=RTV−b−aV2 p=\frac{RT}{V-b}-\frac{a}{V^2} である。w=∫p dVw=\int p\,dV に代入し、∫dVV−b=ln⁡(V−b)\int\dfrac{dV}{V-b}=\ln(V-b)、∫dVV2=−1V\int\dfrac{dV}{V^2}=-\dfrac1V を使う。 w=∫ViVf(RTV−b−aV2)dV=RTln⁡Vf−bVi−b+a(1Vf−1Vi) w=\int_{V_i}^{V_f}\left(\frac{RT}{V-b}-\frac{a}{V^2}\right)dV=RT\ln\frac{V_f-b}{V_i-b}+a\left(\frac1{V_f}-\frac1{V_i}\right)

p–V図の等温線。実線は理想気体A(p=RT/V)、破線はvan der Waals気体B。仕事wはViからVfまでの曲線の下の面積で表される。

自作図:pp--VV 図の等温線(実線がA、破線がB)。ww は ViV_i から VfV_f の曲線の下の面積である。仮定の数値(T=300 KT=300\ \mathrm{K}、a=0.364 Pa m6 mol−2a=0.364\ \mathrm{Pa\,m^6\,mol^{-2}}、b=4.27×10−5 m3 mol−1b=4.27\times10^{-5}\ \mathrm{m^3\,mol^{-1}}、Vi=1.00 LV_i=1.00\ \mathrm{L}、Vf=2.00 LV_f=2.00\ \mathrm{L})で描いた。縦軸、横軸とも原点は 0 でない

設問(b-2) 気体Bの ΔU\Delta U と ΔS\Delta S

式(1)から p=RTV−b−aV2p=\dfrac{RT}{V-b}-\dfrac{a}{V^2} で、aa の項は TT によらないので、 (∂p∂T)V=RV−b \left(\frac{\partial p}{\partial T}\right)_V=\frac{R}{V-b} である。これを式(2)に入れると、 (∂U∂V)T=RTV−b−[RTV−b−aV2]=aV2 \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T=\frac{RT}{V-b}-\left[\frac{RT}{V-b}-\frac{a}{V^2}\right]=\frac{a}{V^2} となる。積分すると、 ΔU=∫ViVfaV2 dV=a(1Vi−1Vf). \Delta U=\int_{V_i}^{V_f}\frac{a}{V^2}\,dV=a\left(\frac1{V_i}-\frac1{V_f}\right). エントロピーは、(a-2)と同じ関係 (∂S∂V)T=1T[(∂U∂V)T+p]\left(\dfrac{\partial S}{\partial V}\right)_T=\dfrac1T\left[\left(\dfrac{\partial U}{\partial V}\right)_T+p\right] から、 (∂S∂V)T=1T[aV2+RTV−b−aV2]=RV−b \left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_T=\frac1T\left[\frac{a}{V^2}+\frac{RT}{V-b}-\frac{a}{V^2}\right]=\frac{R}{V-b} で、ΔS=Rln⁡Vf−bVi−b\Delta S=R\ln\dfrac{V_f-b}{V_i-b} となる。

設問(c) ΔU\Delta U の大小関係と分子間相互作用

膨張(Vf>ViV_f>V_i)では、a>0a>0 より ΔUB=a(1/Vi−1/Vf)>0\Delta U_{\mathrm B}=a(1/V_i-1/V_f)>0 で、ΔUA=0\Delta U_{\mathrm A}=0 である。したがって ΔUB>ΔUA=0 \Delta U_{\mathrm B}>\Delta U_{\mathrm A}=0 である。理由は次のとおりである。

  1. 気体の内部エネルギーは、分子の運動エネルギーと、分子間相互作用のポテンシャルエネルギーの和である。等温では運動エネルギーはAでもBでも同じである。

  2. Aは分子間に力が働かないので、ポテンシャルエネルギーが体積によらず、ΔU=0\Delta U=0 になる。

  3. Bには引力(van der Waals の式の aa)が働く。引力が働く分子の組では、ポテンシャルエネルギーは負で、分子間の距離が長いほど 00 に近づく(高くなる)。膨張で分子間の平均距離が増すと、ポテンシャルエネルギーが上がり、ΔU>0\Delta U>0 になる。

Lennard-Jones型の分子間ポテンシャルu(r)の模式図。膨張して平均距離がr1(密)からr2(疎)に増えると、uは負の値から0に近づいて上がる。

自作図:分子間ポテンシャル(Lennard-Jones 型の模式図)。膨張して平均距離が r1r_1 から r2r_2 に増えると、uu は負の値から 00 に近づく

最終答

設問(a-1) 気体Aの等温可逆膨張の仕事 ww

w=RTln⁡VfViw=RT\ln\dfrac{V_f}{V_i}

設問(a-2) 気体Aの ΔU\Delta U と ΔS\Delta S

ΔU=0,ΔS=Rln⁡VfVi\Delta U=0,\quad \Delta S=R\ln\dfrac{V_f}{V_i}

設問(b-1) 気体Bの等温可逆膨張の仕事 ww

w=RTln⁡Vf−bVi−b+a(1Vf−1Vi)w=RT\ln\dfrac{V_f-b}{V_i-b}+a\left(\dfrac1{V_f}-\dfrac1{V_i}\right)

設問(b-2) 気体Bの ΔU\Delta U と ΔS\Delta S

ΔU=a(1Vi−1Vf),ΔS=Rln⁡Vf−bVi−b\Delta U=a\left(\dfrac1{V_i}-\dfrac1{V_f}\right),\quad \Delta S=R\ln\dfrac{V_f-b}{V_i-b}

設問(c) ΔU\Delta U の大小関係と分子間相互作用

ΔUB>ΔUA\Delta U_{\mathrm B}>\Delta U_{\mathrm A}(Aは 00、Bは a(1/Vi−1/Vf)>0a(1/V_i-1/V_f)>0)。Bには分子間の引力が働き、膨張で分子間の平均距離が増すと、引力によるポテンシャルエネルギー(負)が 00 に近づいて上がるため。Aは分子間力がないので ΔU=0\Delta U=0。

第5問 — 量子化学:水素原子のBohr模型、1s軌道の平均半径、2s軌道からの遷移

量子化学:水素原子のBohr模型、1s軌道の平均半径、2s軌道からの遷移の途中式・最終答をPDFで見る

化学Iの解答・解説PDF

2023〜2026年度(4年度) · ¥2,580

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年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(解説5項目)

    反応速度論:NOの気相酸化と定常状態近似 / 相平衡:化学ポテンシャルから導く沸点上昇 / 無機化学:O_2の分子軌道、窒素のLatimer図、イオン化エネルギー

  • 2025年度(解説5項目)

    有機化学:モノグリセリドのけん化、臭素付加の立体化学、DCC・DMAPによるエステル化 / 有機合成:カルボンからヘルミントスポラールへ / 無機化学:遷移金属錯体の構造と電子状態、酸性度の序列、I3- の構造

  • 2024年度(このページ・解説5項目)

    無機化学:分子の構造と点群、八面体錯体の結晶場理論 / 有機化学:ピリジンの求電子置換と求核置換、ピラジン環の構築 / 有機化学:Claisen縮合、ジアゾ化合物による環拡大、ジアニオンのアルキル化

  • 2023年度(解説5項目)

    有機合成:Claisen 転位を使った β-ionone の合成 / 糖質化学:D-ガラクトースから epi-inositol への合成 / 無機化学:アルカリ金属の結晶構造・酸化物・還元反応

2024年度の出題内容

解説5項目

この5問の分野は化学3問・熱・統計力学1問・量子力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学分子の構造と点群、八面体錯体の結晶場理論—あり
第2問化学ピリジンの求電子置換と求核置換、ピラジン環の構築—あり
第3問化学Claisen縮合、ジアゾ化合物による環拡大、ジアニオンのアルキル化—あり
第4問熱・統計力学完全気体と van der Waals 気体の等温可逆膨張—あり
第5問量子力学水素原子のBohr模型、1s軌道の平均半径、2s軌道からの遷移—あり

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 5問 → 2024年度 5問
2023年度の解答例

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
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