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阪大 基礎工学研究科 物質創成専攻 化学工学II 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は制御工学1項目、熱・統計力学1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 分離:精留塔の階段作図、還流比、供給段と操作線

分離:精留塔の階段作図、還流比、供給段と操作線の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 反応工学:逐次反応の PFR と CSTR、中間体の最大濃度、選択率

反応工学:逐次反応の PFR と CSTR、中間体の最大濃度、選択率の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 伝熱:Nusselt 数、球殻の伝導と Nu=2、球形温度計の放射誤差

伝熱:Nusselt 数、球殻の伝導と Nu=2、球形温度計の放射誤差の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — プロセス制御:タンクの線形化、伝達関数、比例制御のオフセット

プロセス制御:タンクの線形化、伝達関数、比例制御のオフセットの途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 熱力学:メタン液化の圧縮仕事、液化率、プロセスの改良

設問(a) 圧縮過程の質量収支式とエネルギー収支式

問題の式では W˙\dot W を「系へ流入した仕事」と定義しているので、圧縮機で気体が受ける仕事は W˙>0\dot W>0 となる。流入する流れは m˙k>0\dot m_k>0、流出する流れは m˙k<0\dot m_k<0 と符号が付くので、出口の項は −m˙Hm,2-\dot m H_{\mathrm m,2} になる。この符号の取り方を決めないまま式を書き始めると、W˙\dot W の符号が答案ごとにずれる。

圧縮機は可逆断熱なので等エントロピー変化で、(b)では図2の等エントロピー線に沿って進める。内部冷却装置は仕事をせず熱だけを取り除くので、2段の仕事は H2−H1H_2-H_1 ではなく、各段の差の和になる。H2−H1H_2-H_1 には冷却による減少分が含まれる。実際、(b)の値で W˙+Q˙内部=650−290=360 kW\dot W+\dot Q_{\mathrm{内部}}=650-290=360\ \mathrm{kW} は H2−H1=360 kWH_2-H_1=360\ \mathrm{kW} と一致する。

設問(b) 圧縮に必要な仕事 W˙\dot W

図2では、縦軸が圧力 PP(対数目盛り)、横軸がエンタルピー HmH_{\mathrm m} で、ほぼ垂直に走る曲線が等温線、右上がりの破線が等エントロピー線である。可逆断熱の圧縮は SS が一定なので、点を等エントロピー線に沿って動かす。そのときの横軸方向の移動量 ΔH\Delta H が、単位質量あたりの仕事になる。冷却は圧力一定なので横線に沿って左へ動く。

2段圧縮冷凍プロセスの圧力・エンタルピー線図の略図(縦軸は対数目盛り)。1→aとc→2は等エントロピー圧縮、a→cと2→3は等圧冷却、3→4は絞り弁による等エンタルピー変化。4は0.1 MPaの気液二相で、5が飽和蒸気、6が飽和液。


*[3pt] プロセスの略図(Peng--Robinson 状態方程式の計算値から作図。縦軸は対数目盛り)。1→a と c→2 は等エントロピー圧縮、a→c と 2→3 は等圧冷却、3→4 は絞り弁(等エンタルピー)、4 は 0.1 MPa の気液二相で、5 と 6 が飽和蒸気と飽和液(自作図)

内部冷却を挟む理由は、圧縮機の出口温度を抑えて仕事を減らすことにある。同じ圧力比でも、低温の気体ほど比体積が小さく、∫v dP\int v\,\mathrm dP が小さい。中間冷却を省き、0.1 MPaから10 MPaまでを1段の等エントロピー圧縮で行うと、845 kJ kg−1845\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} が必要で、650より30\%多い。

実在気体の効果も見ておく。同じ比熱を使った理想気体として2段の仕事を計算すると 670 kJ kg−1670\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} で、図による650より約3\%大きい。差は第2段に集中する(理想気体 350350、実在気体 333 kJ kg−1333\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}})。10 MPa の高圧で圧縮係数が1より小さく、気体が理想気体より縮みやすいためである。

設問(c) 原料1 kg から得られる液化メタンの質量

絞り弁を通る流れは、仕事を取り出す部分がなく、周囲との熱交換も無視できるので、定常流のエネルギー収支 H4=H3H_4=H_3 になる。この変化で圧力が下がると、実在気体では温度も下がる。10 MPa、200 K の流体を 0.1 MPa に絞ると、温度は飽和温度 111 K111\ \mathrm K まで下がり、一部が液になる。図2では、Hm=440H_{\mathrm m}=440 の位置から 0.1 MPa まで下ろした点が気液二相の領域に入り、乾き度 x=0.7x=0.7 の線の近くに来る。

状態3の読み取りには注意が要る。10 MPa は臨界圧 4.6 MPa を超え、200 K は臨界温度 191 K を超えるので、状態3は超臨界の密な流体で、等温線が左へ大きく曲がる領域にある。圧縮係数は1よりかなり小さく、状態方程式の計算で Z=0.36Z=0.36 である。この領域の等温線は傾きが急で、H3H_3 を ±10 kJ kg−1\pm10\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} ずらすと液化率は ±0.02\pm0.02 変わる。計算では液化率が 0.2800.280 で、読み取りの 0.280.28 と一致した。

てこの関係は、気液二相の混合物のエンタルピーが飽和蒸気と飽和液のエンタルピーの質量平均になることから出る。(Hg−H4)(H_{\mathrm g}-H_4) が液の割合に、(H4−Hf)(H_4-H_{\mathrm f}) が蒸気の割合に比例する。誤りとして、割合を逆にして (H4−Hf)/(Hg−Hf)=0.72(H_4-H_{\mathrm f})/(H_{\mathrm g}-H_{\mathrm f})=0.72 を液の質量にする例がある。0.72 は蒸気の割合で、液は 1−0.72=0.281-0.72=0.28 である。

設問(d) 液化メタン1 kg を得るために必要な圧縮仕事

液の生産量は m˙6=0.28 kg s−1\dot m_6=0.28\ \mathrm{kg\,s^{-1}}、圧縮動力は 650 kW650\ \mathrm{kW} なので、比は 650/0.28=2.3×103 kJ kg−1650/0.28=2.3\times10^{3}\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} で、単位を揃えた比になっている。誤りとして、仕事を原料 1 kg1\ \mathrm{kg} あたりの 650 kJ650\ \mathrm{kJ} のまま答えると、液 1 kg1\ \mathrm{kg} あたりの値の 0.280.28 倍になる。蒸気の割合 0.720.72 で割ると 9.0×102 kJ9.0\times10^2\ \mathrm{kJ} と半分以下になる。

仕事の大部分は熱として捨てられる。冷却装置が奪う熱は、内部冷却 795−1085=−290 kJ kg−1795-1085=-290\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} と、冷却装置 440−1130=−690 kJ kg−1440-1130=-690\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} の合計 980 kJ kg−1980\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} である。全体のエネルギー収支は W˙+Q˙=650−980=−330\dot W+\dot Q=650-980=-330 で、H3−H1=440−770=−330 kJ kg−1H_3-H_1=440-770=-330\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} と一致する。メタンの蒸発熱は 0.1 MPa0.1\ \mathrm{MPa} で約 510 kJ kg−1510\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} で、液 1 kg1\ \mathrm{kg} あたりの仕事 2.3×103 kJ2.3\times10^{3}\ \mathrm{kJ} はその約4.5倍にあたる。圧縮の仕事の大半が熱として捨てられ、原料の72\%が蒸気のまま出ていくためで、(e)の改良で下げる余地がある。

設問(e) エネルギー消費をさらに減らす改良

(i)の収支を示す。熱交換器の低温側(流路⑤、1−y′1-y' の流量)は飽和蒸気 HgH_{\mathrm g} から 200 K200\ \mathrm K の蒸気(H1H_1 と同じ状態)まで温まり、高温側(流路③、流量1)は H3H_3 から絞り弁の入口の状態まで冷える。絞り弁は等エンタルピーなので、絞り弁の入口のエンタルピーは y′Hf+(1−y′)Hgy'H_{\mathrm f}+(1-y')H_{\mathrm g} に等しい。熱交換器の全体の収支は H3+(1−y′)Hg=[y′Hf+(1−y′)Hg]+(1−y′)H1H_3+(1-y')H_{\mathrm g}=\left[y'H_{\mathrm f}+(1-y')H_{\mathrm g}\right]+(1-y')H_1 で、両辺の (1−y′)Hg(1-y')H_{\mathrm g} が消えて H3=y′Hf+(1−y′)H1H_3=y'H_{\mathrm f}+(1-y')H_1、すなわち y′=(H1−H3)/(H1−Hf)y'=(H_1-H_3)/(H_1-H_{\mathrm f}) となる。圧縮機の入口が 200 K200\ \mathrm K、0.1 MPa0.1\ \mathrm{MPa}(状態1)で変わらず、仕事は気体 1 kg1\ \mathrm{kg} あたり同じ 650 kJ650\ \mathrm{kJ} なので、液あたりの仕事は 650/y′650/y' になる。

この計算は理想的な熱交換器を前提にする。高圧側は 200→180 K200\to180\ \mathrm K、低圧側は 111→200 K111\to200\ \mathrm K に温度が変わり、計算した温度分布では高温端以外で温度差が0にならず(両流体の温度が交差せず)、成立する。高温端の温度差が 10 K10\ \mathrm K 残る実際の機器では、液化率は 0.460.46 で、理想の値 0.470.47 に近い。絞り弁に入る流体の温度が 180 K180\ \mathrm K まで下がっていることが、液化率が増える原因である。

(ii)の可逆断熱膨張は上限で、実際の膨張機の効率は100\%より低く、気液二相に入ると羽根が傷みやすいので、液の割合が高い領域では扱いにくい。それでも仕事を回収できるぶんだけ、絞り弁より損失が小さい。(iii)の可逆等温圧縮は、気体を圧縮しながら常に 200 K200\ \mathrm K に保つ極限で、段数を増やすほど等温圧縮に近づく。圧縮機の動力は 650→390 kJ kg−1650\to390\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} の幅で減らせる。

3つの改良は組み合わせられる。たとえば(i)と(iii)を併せ、流路⑤を熱交換器で使いながら圧縮を多段にすれば、液1 kg あたりの仕事は 541/0.47=1.15×103 kJ541/0.47=1.15\times10^{3}\ \mathrm{kJ} 程度まで下がる。ただし、各改良に設備費と装置の複雑さが加わるので、電力料金と設備費のつり合いで採用を決める。

解答

設問(a) 圧縮過程の質量収支式とエネルギー収支式

問題の式は、m˙k\dot m_k を系へ入る向きを正としたとき、 dmdt=∑km˙k,dEdt=∑km˙kHm,k+Q˙+W˙ \frac{\mathrm dm}{\mathrm dt}=\sum_k\dot m_k,\qquad \frac{\mathrm dE}{\mathrm dt}=\sum_k\dot m_kH_{\mathrm m,k}+\dot Q+\dot W である。圧縮機(内部冷却装置を含む2段)を系にとり、入口を流路①、出口を流路②とする。定常なので dm/dt=0\mathrm dm/\mathrm dt=0、dE/dt=0\mathrm dE/\mathrm dt=0 である。

質量収支は 0=m˙1+m˙20=\dot m_1+\dot m_2 で、出口の m˙2\dot m_2 は負の値となり、m˙2=−m˙1\dot m_2=-\dot m_1、すなわち流量は入口も出口も m˙=1 kg s−1\dot m=1\ \mathrm{kg\,s^{-1}} である。エネルギー収支は、運動エネルギーと位置エネルギーを無視して 0=m˙1Hm,1+m˙2Hm,2+Q˙+W˙⟹W˙=m˙ (Hm,2−Hm,1)−Q˙ 0=\dot m_1H_{\mathrm m,1}+\dot m_2H_{\mathrm m,2}+\dot Q+\dot W \quad\Longrightarrow\quad \dot W=\dot m\,(H_{\mathrm m,2}-H_{\mathrm m,1})-\dot Q となる。Q˙\dot Q は内部冷却装置が奪う熱で負である。各段は断熱(Q˙=0\dot Q=0)なので、第1段は W˙1=m˙ (Ha−H1)\dot W_1=\dot m\,(H_{\mathrm a}-H_1)、中間冷却装置は仕事なしで Q˙=m˙ (Hc−Ha)\dot Q=\dot m\,(H_{\mathrm c}-H_{\mathrm a})、第2段は W˙2=m˙ (H2−Hc)\dot W_2=\dot m\,(H_2-H_{\mathrm c}) である。

設問(b) 圧縮に必要な仕事 W˙\dot W

図2の読み取りは次の順に行う。圧力の目盛りは対数で、右端に 0.1、0.2、…、10、20 MPa の値が振ってある。

  1. 0.1 MPa の最下段の線と T=200 KT=200\ \mathrm K の等温線の交点が状態1で、H1≃770 kJ kg−1H_1\simeq770\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}(エントロピー S≃6.5 kJ kg−1K−1S\simeq6.5\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}K^{-1}})である。

  2. 状態1から破線の等エントロピー線(S≃6.5S\simeq6.5)に沿って 1 MPa まで上がる。交点が状態 a で、Ha≃1085 kJ kg−1H_{\mathrm a}\simeq1085\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}(等温線から T≃350 KT\simeq350\ \mathrm K)である。

  3. 1 MPa の横線に沿って T=220 KT=220\ \mathrm K の等温線まで戻る。これが状態 c で、Hc≃795 kJ kg−1H_{\mathrm c}\simeq795\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}(S≃5.5S\simeq5.5)である。

  4. 状態 c から S≃5.5S\simeq5.5 の等エントロピー線に沿って 10 MPa まで上がる。交点が状態2で、H2≃1130 kJ kg−1H_2\simeq1130\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}(T≃390 KT\simeq390\ \mathrm K)である。

  5. 10 MPa の横線に沿って T=200 KT=200\ \mathrm K の等温線まで戻る。これが状態3で、H3≃440 kJ kg−1H_3\simeq440\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}である((c)で使う)。

各段の仕事は Ha−H1=1085−770=315 kJ kg−1H_{\mathrm a}-H_1=1085-770=315\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}、H2−Hc=1130−795=335 kJ kg−1H_2-H_{\mathrm c}=1130-795=335\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} で、m˙=1 kg s−1\dot m=1\ \mathrm{kg\,s^{-1}} より W˙=1 kg s−1×(315+335) kJ kg−1=650 kW. \dot W=1\ \mathrm{kg\,s^{-1}}\times(315+335)\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}=650\ \mathrm{kW}.

設問(c) 原料1 kg から得られる液化メタンの質量

絞り弁は断熱で、仕事をせず、運動エネルギーの変化も小さいので、流れ系のエネルギー収支より入口と出口のエンタルピーが等しい(等エンタルピー変化)。 H4=H3≃440 kJ kg−1. H_4=H_3\simeq440\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}. 流路④は 0.1 MPa の気液二相で、フラッシュ缶(断熱、0.1 MPa)から飽和蒸気(流路⑤)と飽和液(流路⑥)が出る。図2で 0.1 MPa の飽和蒸気線と飽和液線を読むと、Hg≃585 kJ kg−1H_{\mathrm g}\simeq585\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}、Hf≃70 kJ kg−1H_{\mathrm f}\simeq70\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} である。流量 m˙4=1 kg s−1\dot m_4=1\ \mathrm{kg\,s^{-1}} として、質量収支とエネルギー収支は m˙4=m˙5+m˙6,m˙4H4=m˙5Hg+m˙6Hf. \dot m_4=\dot m_5+\dot m_6,\qquad \dot m_4H_4=\dot m_5H_{\mathrm g}+\dot m_6H_{\mathrm f}. 2式から m˙5\dot m_5 を消すと、液の割合は m˙6m˙4=Hg−H4Hg−Hf=585−440585−70=0.28. \frac{\dot m_6}{\dot m_4}=\frac{H_{\mathrm g}-H_4}{H_{\mathrm g}-H_{\mathrm f}}=\frac{585-440}{585-70}=0.28 .

設問(d) 液化メタン1 kg を得るために必要な圧縮仕事

(b)より原料 1 kg1\ \mathrm{kg} の圧縮に 650 kJ650\ \mathrm{kJ} が必要で、(c)より原料 1 kg1\ \mathrm{kg} から液が 0.28 kg0.28\ \mathrm{kg} 得られる。液 1 kg1\ \mathrm{kg} あたりの圧縮仕事は w=650 kJ0.28 kg=2.3×103 kJ kg−1 (=0.64 kWh kg−1). w=\frac{650\ \mathrm{kJ}}{0.28\ \mathrm{kg}}=2.3\times10^{3}\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}\ (=0.64\ \mathrm{kWh\,kg^{-1}}).

設問(e) エネルギー消費をさらに減らす改良

無駄になっている点は2つある。1つは、フラッシュ缶から出る飽和蒸気(流路⑤、原料の72\%、111 K)が冷熱をもつのに捨てられていること。もう1つは、絞り弁が高圧の流体の圧力エネルギーを回収せず、不可逆に温度を下げていることである。それぞれに対する改良を述べる。

  1. 低温の蒸気を再利用する。流路⑤を向流の熱交換器へ送って流路③(高圧、200 K)を予冷し、温まった蒸気は新しい原料と一緒に圧縮機の入口へ戻す。熱交換器の高温端の温度差が0のとき、熱交換器と絞り弁の収支から y′=(H1−H3)/(H1−Hf)=(770−440)/(770−70)=0.47y'=(H_1-H_3)/(H_1-H_{\mathrm f})=(770-440)/(770-70)=0.47 となり、圧縮機を通る気体 1 kg1\ \mathrm{kg} あたりの液が 0.28→0.47 kg0.28\to0.47\ \mathrm{kg} に増える。液 1 kg1\ \mathrm{kg} あたりの圧縮仕事は 650/0.47=1.4×103 kJ650/0.47=1.4\times10^{3}\ \mathrm{kJ} で、約 40%40\% 減る。

  2. 絞り弁を膨張機(タービン)に替える。高圧流体を仕事を取り出しながら膨張させると、エンタルピーが下がって温度がさらに下がり、液の割合が増える。可逆断熱(上限値)で 0.520.52、回収できる仕事は約 120 kJ kg−1120\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} で、液 1 kg1\ \mathrm{kg} あたりの正味の圧縮仕事は (650−120)/0.52=1.0×103 kJ(650-120)/0.52=1.0\times10^{3}\ \mathrm{kJ} になる。

  3. 圧縮の段数を増やし、中間冷却をより低温まで行う。2段の中間冷却を 220 K220\ \mathrm K から 200 K200\ \mathrm K にすると 650→615 kJ kg−1650\to615\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}}(−5%-5\%)、同じ圧力比の3段で 541541(−17%-17\%)、4段で 504504(−22%-22\%)となる。可逆等温圧縮が下限で、390 kJ kg−1390\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}} である。

最終答

設問(a) 圧縮過程の質量収支式とエネルギー収支式

質量収支 0=m˙1+m˙20=\dot m_1+\dot m_2(m˙2=−m˙1\dot m_2=-\dot m_1)。エネルギー収支 0=m˙1Hm,1+m˙2Hm,2+Q˙+W˙0=\dot m_1H_{\mathrm m,1}+\dot m_2H_{\mathrm m,2}+\dot Q+\dot W。2段圧縮の総仕事は W˙=W˙1+W˙2=m˙ [(Ha−H1)+(H2−Hc)]\dot W=\dot W_1+\dot W_2=\dot m\,[(H_{\mathrm a}-H_1)+(H_2-H_{\mathrm c})]。

設問(b) 圧縮に必要な仕事 W˙\dot W

W˙=W˙1+W˙2≃(315+335) kW=6.5×102 kW\dot W=\dot W_1+\dot W_2\simeq(315+335)\ \mathrm{kW}=6.5\times10^{2}\ \mathrm{kW}(原料 1 kg s−11\ \mathrm{kg\,s^{-1}} あたり 650 kJ kg−1650\ \mathrm{kJ\,kg^{-1}})。

設問(c) 原料1 kg から得られる液化メタンの質量

液化メタンは原料 1 kg1\ \mathrm{kg} あたり約 0.28 kg0.28\ \mathrm{kg}(飽和蒸気は約 0.72 kg0.72\ \mathrm{kg})。図の読み取りの幅を含めると 0.280.28〜0.30 kg0.30\ \mathrm{kg}。

設問(d) 液化メタン1 kg を得るために必要な圧縮仕事

w≃2.3×103 kJw\simeq2.3\times10^{3}\ \mathrm{kJ}(液化メタン 1 kg1\ \mathrm{kg} あたり、約 0.64 kWh0.64\ \mathrm{kWh})。図の読み取りの幅を含めると 2.22.2〜2.3×103 kJ2.3\times10^{3}\ \mathrm{kJ}。

設問(e) エネルギー消費をさらに減らす改良

(i) 流路⑤の冷たい蒸気で流路③を予冷して圧縮機へ戻す(液化率 0.28→0.470.28\to0.47、液1 kg の仕事 2.3→1.4×103 kJ2.3\to1.4\times10^3\ \mathrm{kJ})。(ii) 絞り弁を膨張機に替えて仕事を回収する。(iii) 圧縮を多段にして中間冷却の温度を下げる。

化学工学IIの解答・解説PDF

2023〜2026年度(4年度) · ¥2,580

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年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(解説5項目)

    物質移動:液境膜内の瞬間反応を伴うガス吸収 / 物質収支・熱収支:循環液を用いる発熱反応プロセス / 反応工学:気液反応の総括速度と触媒粒子の分散

  • 2025年度(解説5項目)

    反応工学・物質収支:アンモニア合成の固定層反応器 / プロセス制御:蒸気加熱槽の熱収支とむだ時間を含む制御系 / 反応工学:全圧追跡法による反応次数の決定

  • 2024年度(解説5項目)

    燃焼計算:硫黄の燃焼ガスと固体燃料の物質収支 / 流体力学:Bernoulliの式の導出、円管内層流、タンク流出 / 物質移動:棚段吸収塔の操作線と推進力、放散塔の抵抗支配と液ガス比

  • 2023年度(このページ・解説5項目)

    分離:精留塔の階段作図、還流比、供給段と操作線 / 反応工学:逐次反応の PFR と CSTR、中間体の最大濃度、選択率 / 伝熱:Nusselt 数、球殻の伝導と Nu=2、球形温度計の放射誤差

2023年度の出題内容

解説5項目

この5問の分野は制御工学1問・熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問精留塔の階段作図、還流比、供給段と操作線—あり
第2問逐次反応の PFR と CSTR、中間体の最大濃度、選択率—あり
第3問Nusselt 数、球殻の伝導と Nu=2、球形温度計の放射誤差—あり
第4問制御工学タンクの線形化、伝達関数、比例制御のオフセット—あり
第5問熱・統計力学メタン液化の圧縮仕事、液化率、プロセスの改良—あり

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
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院試hubの最終確認
2026-10-26
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