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京大 経営管理教育部(専門職学位課程) 経営学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野は経営2問です。解説はすべて公開し、途中式と最終答は解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 経営組織・マーケティング:組織文化と顧客ロイヤルティ

方針

3つの小問はつながっている。1) で文化を「基本的仮定の3層」として定義し,2) でその2つの機能を挙げ,3) で「一方の機能が強まると他方が弱まる」という形で 1)・2) を再利用する,という順に書けば,最後の問いに新しい知識を要さない。逆に 1) を「価値観の共有」とだけ書いてしまうと,3) で使える道具が手元に残らない。冒頭で「以下ではシャインの整理に従う」と一言置くと,3問の一貫性が伝わる。

答案の分量と書く順序

論述3問で解答用紙2〜3ページが目安になる。1) は定義1段落,3層の箇条書き,活用の3点。2) は各機能を5〜6項目の箇条書きにし,最後に両者の関係を1段落。3) は「外部適応が強まる理由」「内部統合が弱まる3つの理由」「両者が同じ原因であること」の3段で書き,対策は最後に短く添える。3) は因果の向きを取り違えやすいので,結論を先に1文で示してから理由を並べるとよい。

失点しやすい点

組織文化を「社風」「雰囲気」と言い換えるだけでは定義にならない。観察できる人工物と,行動を規定する基本的仮定を区別することが核心である。2) では,外部適応を「顧客対応」,内部統合を「チームワーク」と要約する答案が多いが,問われているのは企業組織に対する働き,すなわち解釈枠組みの共有と協働条件の整備である。3) では対策を長く書いても加点されない。機構の説明が本体である。また,モラル・ハザードは「不正」の同義語ではなく,相手から行動が見えないことを利用した機会主義であるから,情報の非対称性に触れておく。

この設問が試していること

文化を良いものとして称揚するのではなく,統制の一様式として機能と逆機能の両面から扱えるかどうかである。3) はまさに,同一の文化が外部には効き内部には害をなすという両面性を説明させる問いになっている。

設問2 顧客ロイヤルティと顧客関係管理

方針

3問とも「定義 →\to メカニズム →\to 施策・含意」の型で書けるが,2) だけは対比の問いなので,共通点(どちらも顧客関係管理のデータを使う)を先に1文置き,そのうえで主導権の所在という一本の軸で分けると論点が立つ。3) は式を1本立てるのが最も速い。式がないと「維持率が上がるから価値が上がる」という同義反復になりやすい。

感度を数値で確かめる

CLV\mathrm{CLV} は r→1+dr\to 1+d で発散する形なので,維持率が高い領域ほど感度が大きい。実際 ∂∂rmr1+d−r=m(1+d)(1+d−r)2 \frac{\partial}{\partial r}\frac{mr}{1+d-r}=\frac{m(1+d)}{(1+d-r)^{2}} であり,m=10m=10,d=0.1d=0.1 なら r=0.7r=0.7 での感度は 10×1.1/0.42=68.810\times1.1/0.4^{2}=68.8,r=0.9r=0.9 では 10×1.1/0.22=27510\times1.1/0.2^{2}=275 と4倍になる。維持率のわずかな改善が利益を大きく動かす,という実務でよく引かれる主張は,この凸性から来ている。答案では数値例を1組添えるだけで説明が具体になる。

失点しやすい点

1) で「ロイヤルティ=リピート率」と定義してしまうと,見せかけのロイヤルティとの区別ができず,施策の議論が値引きに寄る。行動と態度の2側面を最初に分けておく。2) では,カスタマイゼーションを「オーダーメイド」,顧客エンパワーメントを「顧客の声を聞くこと」と言い換えるだけでは,関係がなぜ強くなるかの説明になっていない。学習する関係と心理的所有という機構まで書く。3) では顧客生涯価値を「これまでの累積購入額」と誤解する答案があるが,過去実績ではなく将来利益の現在価値であり,獲得費用を差し引く点も忘れやすい。

経営的な意味

3問は「満足 →\to ロイヤルティ →\to 収益」という一本の因果に対応しており,設問2の 3) はその収益側を定量化した部分にあたる。設問1と併せて読むと,第1問全体が「短期の数値では測りにくいものを,どう経営の仕組みに組み込むか」という主題でつながる。設問1の 3) が短期の成果指標に偏る危険を扱い,設問2の 3) が長期の顧客価値という指標を与える構図である。答案の末尾にこの視点を一文入れると,知識の羅列に見えなくなる。

経営組織・マーケティング:組織文化と顧客ロイヤルティの途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 経営戦略:ペンローズの企業成長理論と資源ベース論

方針

「簡潔に定義し,具体例を挙げよ」という指示なので,各概念について定義2〜3文,具体例1〜2文で足りる。ただし定義の中に,生産的サービスなら「資源と用役の区別」と「未使用のサービス」,管理能力の制約なら「管理サービスは市場で買えない」と「制約は速度にかかる」という2点をそれぞれ入れないと,後の設問2・設問5で使えない。

失点しやすい点

生産的サービスを「経営資源」の言い換えとして書くと,設問2の「資源の再結合」が説明できなくなる。資源は入れ物,サービスはそこから引き出される働き,という区別を明示する。管理能力の制約についても,「経営者の数が足りない」と書くだけでは不十分で,足りないのは人数ではなく企業固有の知識をもつチームであり,だから外部調達では埋まらない,という点が要点である。

背景

ペンローズの理論(1959)は,企業の規模に最適水準があるという当時の議論に対して,成長の限界は規模ではなく速度にあると主張した点で画期的であった。資料3が「年間の上限」という形で与えられ,しかも2年目に上限が増えるという設定になっているのは,出題者がこの速度の制約を数量化して問おうとしているからである。設問3と設問5はこの読みの上に組み立てられている。

設問2 資源の再結合が成長機会を生む2つのプロセス

方針

「2つのプロセスを説明せよ」なので,2つを並列に並べるより,第1のプロセスの成果が第2のプロセスの入力になる連鎖として書くほうが,ペンローズの理論に沿い,設問5の論述にもそのまま使える。各プロセスは,(i) どの資源から未使用のサービスを取り出すか,(ii) どの資源と結合させるか,(iii) 何によって市場化されるか,の3段で書くと形が整う。

G2を挙げない理由

G2は外部の企業を買って足りない能力を補う施策であり,「資源の再結合」でも「未使用の生産的サービスの活用」でもない。設問が指定した観点に合わないので,2つのプロセスとしてはG1とG3を選ぶのが素直である。ただしG2の位置づけ(R4を活かす分析能力の不足を市場で埋める補完策)を一言添えると,設問3以降との接続がよくなる。

失点しやすい点

「R1とR4を組み合わせればG1が生まれる」と結論だけを書くと,資源とサービスの区別を使っていないことになる。R1から取り出されるのは組立の技能そのものではなく,異常の前兆を読む解釈能力である,という一段を必ず入れる。またR2を「顧客がいるから売れる」とだけ扱うのも弱い。R2はデータ提供の許諾と,高い支払意思の両方を支えている点まで書く。

設問3 管理リソース制約下での組合せの提案

方針

「計算で示し,制約を超えないことを示すこと」という指示があるので,まず数字,次に理由,最後に逸失の懸念,という順で書く。理由づけから書き始めると,肝心の不等式が最後に埋もれて減点される。3機会同時が 43>3843>38 で不可であることを示すのが,この設問の実質的な出発点である。

別解と比較

初年度にG1とG2(12+22=34≤3812+22=34\le38),2年目にG3を加える(8+12+9=29≤448+12+9=29\le44)という順序も制約を満たし,しかも3機会すべてを2年間で立ち上げられる。答案としてはこちらでもよい。ただし初年度の余力が 38−34=438-34=4 単位しか残らず,統合の負荷が見積りを超えやすい買収を,管理能力がまだ 3838 単位の年に置くことになる。管理サービスは市場で買えないというペンローズの前提を踏まえると,余力の大きい提案のほうが説明しやすい。答案では,どちらを選ぶにせよ「なぜその順序か」を管理能力の制約と結びつけて述べることが採点の対象になる。

検算

提案の2年間の総需要は 21+36=5721+36=57 単位,総供給は 38+44=8238+44=82 単位で,全体でも 2525 単位の余裕がある。一方,3機会を初年度から動かす案は総需要 43+26=6943+26=69 単位で総量では収まるが,初年度に偏るため実行できない。総量ではなく各年度で判定する必要がある,というのがこの設問の要点である。

失点しやすい点

2年目の需要にG1とG3の「2年目」の値を使わず,初年度の値をそのまま足す誤りがある。また,G2を2年目に始めるならG2は「初年度」の 2222 単位を要する点も間違えやすい。逸失の懸念については「利益を取り逃す」といった一般論ではなく,買収機会の時間依存性,分析能力の不足がG1・G3に及ぼす影響という,本事例に固有の短期的な事情を挙げる。

設問4 持続的な競争優位の源泉となる資源

方針

「特に重要と考える資源(またはその束)を特定し」と括弧書きがある以上,束として答えることが期待されている。単独資源を選ぶと,模倣困難性の議論が「特許があるから」か「データが多いから」で終わってしまう。束を選び,補完性そのものを模倣困難性の理由の1つに数えるのが,この設問の勘所である。

失点しやすい点

模倣困難性の理由を「他社にはない独自技術だから」と書くのは同義反復である。なぜ入手できないのかを,時間,情報,関係,補完性という異なる種類の障壁に分けて述べる。また,資源ベース論の4要件のうち組織の要件だけが満たされていないという事例の設定を見落とすと,設問3・設問5との接続を失う。R3を主役に据えてしまうのも,残存7年という設定を活かせない点で惜しい答案になる。

背景

時間圧縮の不経済,資産の相互補完,因果的曖昧性は,資源が市場で取引されない場合に優位がどう保たれるかを論じた蓄積型の資源論から来ている。ペンローズが「資源とサービスの区別」で説明した企業の個性は,この枠組みでは「模倣できない資産のストック」として再定式化されている。設問1・2と設問4が同じ資源を別の角度から見ている点に気づくと,答案全体が一貫する。

設問5 投下資本利益率と持続的成長への貢献

方針

計算を先に済ませ,そのうえで論述に入る。論述は「内部から成長を生み出すプロセス」と「経営上の限界」の2つを両方から論じよという指示なので,段落を明示的に分ける。前者では投下資本の小ささと拡張の連鎖,後者では管理リソースの余力の意味を,いずれも数字(32億円,19.4\%,17単位,55\%)に結びつけて書くと説得力が出る。

投下資本利益率の読み方

3つの機会の利益率は18.5\%から20.8\%の範囲に収まり,差は大きくない。したがって「利益率が最も高いG3だけを選ぶ」という結論にはならず,選択の決め手は管理リソースの制約と資源の補完性になる。この点を明示すると,計算を出しただけの答案と差がつく。なお,資料4は2年後の増分予測なので,ここで求めた利益率は単年度の水準であり,将来の継続性は保証されない。G3の20\%上乗せが条件付きであることと併せて,数値の性格を一言添えるとよい。

答案の分量と書く順序

この設問だけで解答用紙1ページ強を使う。計算3行,提案パターンの合算1行,内部成長の論述で1段落,経営上の限界で1段落,ネットワーク効果の留意点で1段落,という配分が目安になる。留意点は「1つ挙げよ」なので,複数並べず1つに絞って理由まで書く。

失点しやすい点

投下資本利益率を売上高利益率や自己資本利益率と取り違える誤りがある。分母は投下資本である。ネットワーク効果の上乗せを投下資本にも掛けてしまう誤りも多いが,上乗せされるのは税引後営業利益だけなので,分母は12億円のままである。また,論述で「持続的成長に貢献する」と結論だけを書き,ペンローズの理論に触れないと,設問の指示を満たさない。内部からの成長と管理能力の限界という2つの語を,実際の数字に結びつけて使うことが求められている。

経営戦略:ペンローズの企業成長理論と資源ベース論の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(このページ・全2問)

    経営組織・マーケティング:組織文化と顧客ロイヤルティ / 経営戦略:ペンローズの企業成長理論と資源ベース論

  • 2025年度(全2問)

    経営戦略:競争戦略の財務的特徴と経営資源・多角化 / 組織論:組織学習・アンラーニングとダイバーシティ

  • 2024年度(全2問)

    経営学:競争戦略・オープン・イノベーション・サービス・ESG / 経営組織:事業部制組織と組織文化

  • 2023年度(全2問)

    経営組織論:ネットワーク・センスメイキング・経路依存性・組織の両利き / リーダーシップ論:定義と資質論・行動論,分散型リーダーシップ,LMX

2026年度の出題内容

全2問

この2問の分野は経営2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問経営組織文化と顧客ロイヤルティ答案の分量と書く順序 / この設問が試していること—
第2問経営ペンローズの企業成長理論と資源ベース論G2を挙げない理由 / 別解と比較あり

2026年度の解説には失点しやすい点2件・検算1件が付いています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 2問 → 2026年度 2問
2025年度の解答例

京都大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(直近4年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
一般選抜は英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-26
京都大学の公式過去問PDF