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京大 経営管理教育部(専門職学位課程) 経営学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野は経営2問です。解説はすべて公開し、途中式と最終答は解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 経営学:競争戦略・オープン・イノベーション・サービス・ESG

答案の分量と型

行数の上限があるので,1語句あたり「定義1〜2行 →\rightarrow 構成要素の列挙 →\rightarrow 具体例1つ →\rightarrow 含意または限界1行」の4段に固定して書くとよい。5つの力とサービスの4特徴は要素の列挙だけで行数を使い切ってしまいがちなので,各要素は「名前+強度を決める要因」あるいは「名前+生じる問題」のように必ず1行で書き切る。定義と具体例を含めることが明示的に求められているので,どの語句でも具体例を1つは必ず入れる。

具体例の選び方

個別企業の細かな取り組みを不確かなまま書くより,業界の構造を1文で説明する例のほうが安全で説得力がある。5つの力なら「参入障壁が高い医薬品」「買い手が集中している自動車部品」のように,どの力が働いているかを名指しできる例を選ぶ。オープン・イノベーションでは,流入の例だけでなく流出(ライセンスアウトやスピンオフ)の例にも触れると,概念の半分しか理解していない答案と差がつく。

失点しやすい点

5つの力を名前の列挙で終える答案が最も多い。列挙は前提であって,各力の強度が何によって決まるかを書いて初めて分析枠組みとして使えることを示せる。オープン・イノベーションを「外部との連携一般」に広げると,アウトバウンドの視点とビジネスモデルの役割が抜け落ちる。サービスの4特徴では,特性の定義で止めず,特性 →\rightarrow 生じる問題 →\rightarrow 対応策の3点セットで書く。同時性と消滅性は混同されやすいが,前者は生産と消費のタイミングの問題,後者は在庫できないことによる需給調整の問題であり,対応策も接客設計と価格・要員管理というように異なる。

この設問が試していること

3つとも学部の教科書に載る標準的な概念であり,知識の有無ではなく,限られた行数のなかで定義・構成要素・具体例・限界を過不足なく配置できる編集力を見ている。枠組みを「覚えているか」ではなく「使えるか」を示すために,具体例をどの要素に対応させたかを明示するのが有効である。

設問2 ESG が重要になった理由と社会の持続可能性

答案の骨格

「なぜ重要か」「経営理論」「事例」「自身の意見」の4要素が要求されているので,冒頭に結論を1文で置き,理由を理論ごとに区切って3〜4本立て,事例を制度と投資家の動きでまとめ,最後に意見を独立の段落にする構成が読みやすい。理由と理論を別々に書くのではなく,「理由(現象)+それを説明する理論」を対にして並べると,理論を用いた説明という要求に自然に応えられる。

理論の選び方

ステークホルダー理論だけで押し切ると,「関係者に配慮すべきだ」という規範論に終わりやすい。外部性の内部化(経済学),正当性と同型化(制度理論),模倣困難な資源(資源ベース理論),共通価値の創造(CSV),受託者責任とエージェンシー問題(ガバナンス)のうち3つ程度を組み合わせると,なぜ「近年」重要になったのかという時間的な説明までできる。とくに制度理論は,ESG が広がった速さと,同時にグリーンウォッシングが生じる理由を同じ枠組みで説明できるので有効である。

事例の書き方

個別企業の取り組みは細部が不確かなまま書くと事実誤認の危険があるので,年次と主体が明確な制度・イニシアティブを軸に据えるほうが安全である。パリ協定と SDGs(2015年),TCFD 提言(2017年),ISSB の設置(2021年)と基準公表(2023年),日本の両コードと GPIF の PRI 署名(2015年)は,いずれも年次を添えて書ける。企業の例を出す場合は,「電力多消費型の素材産業では炭素価格が直接に費用構造を変える」のように,構造として述べれば十分である。

意見の書き方

「重要だと思う」で終わる意見は評価されない。ESG の限界を1つ挙げ,それをどう補うかまで書くと,理解の深さが伝わる。ここでは評価指標の食い違い(測定の問題),自主的取り組みの限界(制度の問題),短期主義との緊張(ガバナンスの問題)の3つを挙げ,それぞれに対応する処方を対にした。反対の立場,たとえば「ESG は受託者責任に反する」「株主価値の最大化に集中すべきだ」という主張に一度触れてから反論すると,論述としての厚みが出る。

この設問が試していること

時事的な言葉を知っているかではなく,社会的な現象を経営理論の言葉に翻訳し,その理論から予想される副作用まで含めて論じられるかを見ている。ESG を推奨する立場に立つとしても,グリーンウォッシングや指標の不備といった負の側面に触れないと,批判的な検討ができていないと判断されやすい。

経営学:競争戦略・オープン・イノベーション・サービス・ESGの途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 経営組織:事業部制組織と組織文化

答案の骨格

3つの小問を独立に書くのではなく,「1)で述べた自己完結性と利益責任というメリットが,2)の重複・部分最適・短期志向の原因そのものであり,3)はその原因に働きかける」という一本の因果でつなぐ。1)の最後に「これらの長所は同時に次の問題の原因になる」と一言置くだけで,3つの小問が一つの論述になる。分量は3つの小問をほぼ均等に配分し,2)と3)は対応関係が分かるように,同じ順序で項目を並べると読みやすい。

理論の使いどころ

チャンドラーの命題は1)の導入に,ウィリアムソンの M 形仮説は1)のメリットの根拠に,ローレンスとローシュの分化と統合は2)のセクショナリズムの説明と3)の統合メカニズムの導入に,ガルブレイスの情報処理モデルは3)の整理の軸に置くと,理論が装飾ではなく骨格として働く。マーチの深化と探索は,2)の新規事業の欠如と3)の両利きの組織を橋渡しする位置で使う。

失点しやすい点

2)を「縦割りになる」「重複が生じる」という現象の列挙で終える答案が多い。求められているのは理由まで含めた説明なので,なぜそうなるのかを「評価単位が事業部だから」「自己完結性を確保したから」という構造の言葉で書く。3)では,マトリックス組織を万能の答えとして挙げるのも危険である。マトリックスは二重指令による権限の衝突と意思決定の遅延という固有のコストを伴うので,導入の条件(事業間の相互依存が強く,複数の軸を同時に最適化する必要がある場合)を添える。また,評価・報酬の設計に触れずに組織図の変更だけを論じると,改革が定着しない理由を説明できない。

この設問が試していること

組織形態を「良い・悪い」で評価するのではなく,戦略と環境に対する適合の問題として扱えるか,そして長所と短所が同じ設計上の選択から生じるトレードオフであることを理解しているかを見ている。したがって答案では,事業部制を否定して別の形態を推奨するのではなく,事業部制を保ちつつ副作用を抑える設計を示すのが筋である。

設問2 強い組織文化の機能・類型・弊害

3つの小問のつなぎ方

1)で機能を挙げ,2)で環境との適合を論じ,3)で弊害と処方を書く,という順序はそのまま「強い文化は条件つきで有効である」という一つの主張になる。1)の末尾にコッターとヘスケットの但し書き(強さより適合と適応性)を置くと,2)の類型論と3)の弊害論の両方への入口になり,3つの小問が独立した知識の羅列ではなく一続きの議論になる。逆に,1)で強い文化を手放しで称賛してしまうと,3)で自分の主張を否定することになる。

類型論の選び方

2)は「組織環境との関係から見て」という条件が付いているので,単に文化の類型を列挙するだけでは条件に答えたことにならない。競合価値フレームワークの4類型なら,各類型がどんな環境に適合するかを1行ずつ添える。ディールとケネディの2軸は,軸そのものが事業環境の性質(リスクの大きさとフィードバックの速さ)なので,環境との関係を問う設問には特に噛み合う。時間があれば,適合(静的)と適応性(動的)の区別まで書くと,2)から3)への論理がつながる。

因果でつなぐ

弊害を「変化に抵抗する」「集団思考が起きる」と現象だけ挙げると,1)との関係が見えない。統制機能が強いからこそ異論が抑えられ,社会化による選別が働くからこそ同質化する,というように,機能と逆機能を同じメカニズムの表と裏として書く。克服策も,どの弊害に対応するのかを対にして示すと,処方が思いつきの列挙に見えない。

失点しやすい点

「強い文化を弱めればよい」と書いてしまう答案がある。文化を弱めれば統制と調整の機能も失われるので,これは処方になっていない。求められているのは,機能を保ったまま逆機能だけを抑える設計である。また,克服策をリーダーの心構えや意識改革に還元するのも弱い。採用・評価・報酬・会議の設計といった,観察できる制度に落とし込むと説得力が出る。文化変革を「時間がかかる」で片づけず,まず何を解凍の契機にするかを具体的に述べる。

この設問が試していること

強い文化と高業績の相関を素朴に受け取らず,どのような条件のもとで成り立ち,どこで反転するかを条件つきで論じられるかを見ている。設問1の事業部制と同じく,「長所と短所は同じ設計上の選択から生じる」という組織論の基本的な見方を,別の題材で再度確認させる構成になっている。

経営組織:事業部制組織と組織文化の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(全2問)

    経営組織・マーケティング:組織文化と顧客ロイヤルティ / 経営戦略:ペンローズの企業成長理論と資源ベース論

  • 2025年度(全2問)

    経営戦略:競争戦略の財務的特徴と経営資源・多角化 / 組織論:組織学習・アンラーニングとダイバーシティ

  • 2024年度(このページ・全2問)

    経営学:競争戦略・オープン・イノベーション・サービス・ESG / 経営組織:事業部制組織と組織文化

  • 2023年度(全2問)

    経営組織論:ネットワーク・センスメイキング・経路依存性・組織の両利き / リーダーシップ論:定義と資質論・行動論,分散型リーダーシップ,LMX

2024年度の出題内容

全2問

この2問の分野は経営2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問経営競争戦略・オープン・イノベーション・サービス・ESG答案の分量と型 / 具体例の選び方あり
第2問経営事業部制組織と組織文化答案の骨格 / 理論の使いどころあり

2024年度の解説には失点しやすい点2件が付いています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 2問 → 2024年度 2問
2023年度の解答例

京都大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(直近4年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
一般選抜は英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-26
京都大学の公式過去問PDF