情報系院試の参考書・問題集
情報系院試の参考書を、計算量・証明・関係・オートマトン・情報量で止まった箇所から選ぶ方法。CLRS、大槻のアルゴリズム本、離散数学、Sipser、Coverの版・巻・対応章と演習解答の範囲を確認し、筆記の練習へつなげます。
最終更新: 2026-10-24
大学別の解答・解説PDF
収録年度・解説の見本・価格を、各商品ページで確認できます。
情報系院試の参考書は、過去問で書けなかった説明から選びます。 計算量の数え方、関係の定義、オートマトンの状態、条件付き確率など、止まった箇所を一つに絞ると、戻る章が分かります。 手元の教科書で補えるなら、同じ範囲の本を買い足す必要はありません。
ここではアルゴリズムとデータ構造、離散数学・形式言語、情報理論の5冊を扱います。 計算機アーキテクチャ、回路、信号処理、プログラミング言語の個別仕様などは、志望先の範囲に合わせて別に確認してください。 紹介する書籍は各出版社の教材です。院試Hubの商品リンクでは、大学別の過去問解答PDFの収録範囲・見本・価格を確認できます。
実装できても、筆記で説明できない箇所を探す
東北大学の2026年3月実施・問題4「計算機ソフトウェア」は、 集合上の関係を題材にしています。小問ごとの要求を分けると、次の練習が必要だと分かります。
- 指定された性質を満たす関係の例を構成する。
- 判定アルゴリズムを書き、配列の参照回数を数えて、Θ記法で表す。
- 有限集合上の関係について、仮定から結論を証明する。
例えば、処理の手順は書けても参照回数が数えられないなら、計算量の章へ戻ります。 特定の入力で動くことは確かめられても一般の場合を説明できないなら、定義と証明を復習します。 この区別は上記の問題から分かるもので、すべての大学が同じ形式を採るという意味ではありません。
東北大の公式の試験科目一覧も、 ソフトウェアの範囲に離散数学、言語の概念、構文・意味、実行方式を挙げています。 掲載されている教科書は範囲を知るための例で、その内容がそのまま出題されるわけではないと説明されています。 研究科による選択問題数の違いは、東北大の試験形式で確認できます。
必要な章と、演習解答の有無を比べる
次の表は出版社の紹介・目次と、出版社が案内する補足資料で確認した内容です。 章番号は記載した版に対応します。演習に使う場合は、問題の有無だけでなく、自分で答案を照合できるかも確かめてください。
| 止まった箇所 | 書籍・対応する章 | 演習と解答 |
|---|---|---|
| 解析する操作や、設計法を選べない | CLRS 第4版 総合版:3〜4章の計算量・分割統治、14〜15章の動的計画法・貪欲法 | 各節末に問題。出版社ページでは解答の対象範囲を確認できない |
| 手順を追えない、状態や遷移を組めない | 大槻『問題解決力を鍛える!アルゴリズムとデータ構造』:2章の計算量、4〜5章の再帰・動的計画法 | 章末問題。著者がコードと章末問題の略解を公開 |
| 集合・関係・写像の定義が曖昧 | 石村『やさしく学べる離散数学』:1〜2章の集合・論理・関係・写像 | 例題と演習問題。出版社が詳細な演習問題解答の掲載を明記 |
| DFA・正規表現・文法の対応を説明できない | Sipser 原著第3版・第1巻:1章の正規言語、2章の文脈自由言語 | 演習・問題と、代表的な問題への解答。全問解答付きではない |
| 情報量、符号長、通信路容量を混同する | Cover/Thomas『情報理論―基礎と広がり』:2章の情報量、5章の符号、7章の通信路容量 | 章末演習あり。出版社ページでは解答の収録範囲を確認できない |
アルゴリズム:手順・計算量・正当性を分ける
CLRS『アルゴリズムイントロダクション 第4版 総合版』
近代科学社の第4版総合版は2024年刊です。 第3〜4章で実行時間と分割統治、第14〜15章で動的計画法と貪欲法を扱います。 Union-Findは第19章、最短路は第22〜23章、最大流は第24章、二部マッチングは第25章、文字列照合は第32章が対応します。
計算量で止まる場合は、入力の大きさと数える操作を決めてから、ループや再帰の回数を書き出します。 動的計画法では状態が何を表すか、遷移がどの選択を比較しているかを説明します。 貪欲法では、目の前の選択を繰り返しても最適解を失わない理由を、扱う問題の条件に沿って示せるか確かめます。計算量・設計法・データ構造の確認項目から、復習する論点を絞れます。
旧版とは章番号が異なるため、手元の本では章名で探してください。 出版社は各節末の問題を案内していますが、掲載解答の範囲までは商品ページで確認できません。 自習用の問題集として選ぶなら、必要な問題の解答をどこで確かめられるか、見本や実物でも確認します。
大槻兼資『問題解決力を鍛える!アルゴリズムとデータ構造』
秋葉拓哉監修、講談社の2020年刊です。出版社の目次では、計算量が第2章、再帰・分割統治が第4章、動的計画法が第5章、貪欲法が第7章。 第11章がUnion-Find、第13〜16章がグラフ探索・最短路・最小全域木・ネットワークフローです。 第7章の交換による議論や15.5節のKruskal法の正当性など、理由を説明する節もあります。
コードはC++で、出版社がリンクする著者の補足資料にはソースコードと各章の章末問題への略解があります。 略解は簡潔な記述とされているため、自分の説明で省いてよい部分を決める基準にはしません。 まず小さな入力で配列・変数・状態の変化を追い、その後、入力サイズを変えたときの操作回数を説明してください。
C++で手順を理解できても、試験がJavaの修飾子やメソッドの振る舞いを問う場合は、Javaの仕様を別に確認します。 言語が違っても共通するアルゴリズムの手順と、言語ごとに決まる動作を分けて復習してください。
離散数学:集合・関係・写像を整理する
石村園子『やさしく学べる離散数学』
共立出版の2007年刊です。出版社の目次では、第1章が集合と論理、第2章が関係と写像、 第3章が代数系、第4章が順序集合と束、第5章がグラフです。有限オートマトンも第5章にあります。 出版社は、例題・演習問題に加え、詳細な演習問題解答を掲載すると説明しています。
関係の性質で止まるなら、第2章の定義に戻り、どの要素について条件が必要かを書き出します。 練習では、性質を満たす例だけでなく、満たさない例と、破れている条件を一緒に示してください。 写像では定義域と終域を先に固定し、全射・単射などの条件を取り違えていないか確かめます。
有限オートマトンの節があることだけで、文脈自由文法やPDAまで準備できるとは判断しません。 問題が指定する数学的な対象に合わせて、次の形式言語の本と範囲を照合します。
形式言語:オートマトンと計算理論の巻を選ぶ
Sipser『計算理論の基礎[原著第3版]1.オートマトンと言語』
共立出版の2023年刊・第1巻は、第0章に数学的概念と証明、第1章に正規言語、 第2章に文脈自由言語を収めています。DFA・NFA・正規表現・非正規言語は第1章、文法・PDA・非文脈自由言語は第2章へ戻れます。 原著第3版では2.4節に決定性文脈自由言語が加わっています。
DFAの構成では、状態ごとに何を記憶しているかを言葉で説明し、遷移表と受理条件がその説明に合うか確かめます。 文法では、生成できる文字列の例を一つ挙げるだけで終えず、指定された言語との対応を調べます。 非正規性の証明では、使う定理の仮定と、誰がどの対象を選ぶかの順番を確認してください。九工大2026年度の既存解説では、状態の意味・最小性・非正規性の説明を読めます。
出版社公開のまえがきは、代表的な演習・問題への解答を載せると説明しています。 解答付きの問題にはA印があり、全問解答付きではありません。 また、日本語版の第2巻は計算可能性、第3巻は複雑さの理論です。第1巻だけでその全範囲も読めると思わず、受験範囲に必要な巻を選んでください。
情報理論:確率モデルから使う量を選ぶ
Cover/Thomas『情報理論―基礎と広がり』は、原著 Elements of Information Theory 第2版の日本語訳で、共立出版から2012年に刊行されています。出版社の目次では、第2章がエントロピー・相対エントロピー・相互情報量、 第4章が確率過程のエントロピーレート、第5章がデータ圧縮、第7章が通信路容量です。
条件付きエントロピーや相互情報量で止まるなら、2.2〜2.5節へ戻ります。 演習では、何を確率変数とし、どの同時分布・条件付き分布を使っているかを書いてから計算します。 記憶のある情報源なら4.1〜4.2節でMarkov連鎖とエントロピーレートを確認し、各時点が独立だと勝手に置いていないか調べてください。
符号長やHuffman符号の問題なら、第5章のKraft不等式、符号語長の限界、Huffman符号と最適性が対応します。 通信路容量なら第7章へ進み、与えられた入力分布での相互情報量を求める問題なのか、入力分布を変えて最大値を求める問題なのかを区別します。 第15章のネットワーク情報理論を、TCP/IPやルーティングの教材と同じものとして選ばないでください。
各章末に演習問題があります。ただし、出版社の商品ページでは演習解答の収録範囲を確認できません。 自分で解いた結果を照合する目的なら、購入前に問題・解答の形式を確認します。 志望先でどの論点を使うかは、九大の情報理論・専門科目の出題例や、東大電子情報学の年度別テーマと照合できます。
演習の後、志望先の過去問へ戻る
読み直した章の別の演習で、以前書けなかった説明を自分で作ります。 アルゴリズムなら手順・操作回数・正当性、形式言語なら対象の定義と受理条件、情報理論なら確率モデルと求める量を確認します。 その後、元の過去問を解き直し、試験時間と必答・選択の指定に従って答案をまとめてください。
次の販売ページは、院試Hubが制作した大学別の解答・解説PDFです。上で紹介した市販書籍の販売ページではありません。 必要な年度・科目と紙面見本を確認してから選べます。
- 東大・電子情報学の解答PDF:2021〜2025年度。専攻ガイドにリンクされている2026年度の公式問題は、この販売範囲に含みません。
- 九大・情報理工学専攻の専門科目解答PDF:2022〜2026年度の情報系4分野。収録された4分野をすべて受験時に解くという意味ではなく、選択条件は志望年度の要項で確認します。
- 九工大・知能情報工学の解答PDF:2025・2026年度。大学の公式問題・解答例と、上で紹介した2026年度離散数学のWeb解説は無料で確認できます。
出版社情報の確認日:2026年10月24日。書籍の紹介は公開された目次・内容紹介・補足資料に基づきます。 旧版の章番号や、手元の刷に対する正誤情報も確認してください。
大学別の解答・解説PDF
収録年度・解説の見本・価格を、各商品ページで確認できます。
よくある質問
- 情報系の院試では、参考書を何冊そろえる必要がありますか。
- 冊数を決める前に、志望先の試験範囲と、自分が説明できなかった箇所を確認します。手元の本で必要な定義・例題・演習と解答を照合できるなら、買い足す必要はありません。この記事の5冊も、全部を買う前提ではありません。
- プログラミングの経験があれば、アルゴリズムの筆記対策は省けますか。
- コードを実行できることに加え、問題が指定する操作回数、計算量、正当性の説明を書けるか確かめます。例えば東北大の2026年3月の計算機ソフトウェアでは、関係の例、判定アルゴリズムと配列参照回数、証明が別々に問われています。これは一つの試験の例なので、志望先の公式問題で要求を確認してください。
- Sipserの『計算理論の基礎』はどの巻を選べばよいですか。
- 原著第3版の日本語版は、第1巻がオートマトンと言語、第2巻が計算可能性の理論、第3巻が複雑さの理論です。DFA・NFA・正規表現・文脈自由文法・PDAを復習するなら第1巻が対応します。試験範囲にTuring機械や計算複雑さがある場合は、必要な巻を別に確認します。