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阪大 基礎工学研究科 物質創成専攻 化学II 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は化学2項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 錯体化学:Mo錯体の合成・ROMPとNi(II)アンミン錯体

錯体化学:Mo錯体の合成・ROMPとNi(II)アンミン錯体の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 有機合成:(±)-Norcaesalpinin MC の合成経路

有機合成:(±)-Norcaesalpinin MC の合成経路の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 有機化学:アズレンの合成と、ヨウ素・メチルリチウムとの反応

有機化学:アズレンの合成と、ヨウ素・メチルリチウムとの反応の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 物理化学:理想溶液・正則溶液の混合のGibbsエネルギーと相分離

設問(a-1) 理想溶液の混合のGibbsエネルギー変化

化学ポテンシャルは、μi=(∂G/∂ni)T,p,nj≠i\mu_i=(\partial G/\partial n_i)_{T,p,n_{j\neq i}}、すなわち成分 ii の偏モル Gibbs エネルギーである。GG は物質量について1次の同次関数(全物質量を λ\lambda 倍すると GG も λ\lambda 倍になる示量性)なので、Euler の定理により G=∑ini(∂G/∂ni)=∑iniμiG=\sum_i n_i(\partial G/\partial n_i)=\sum_i n_i\mu_i が成り立つ。問題文が「混合前の全 Gibbs エネルギーが n1μ1∗+n2μ2∗n_1\mu_1^*+n_2\mu_2^*」と指定するのは、純液体では μi∗\mu_i^* がモル Gibbs エネルギーだからである。混合後も同じ Euler の関係で n1μ1+n2μ2n_1\mu_1+n_2\mu_2 と書ける。

得られた式の性質を確かめる。モル分率は 0<xi<10<x_i<1 だから ln⁡xi<0\ln x_i<0 で、すべての組成で ΔGmix<0\Delta G_\mathrm{mix}<0(理想溶液はどんな比でも自発的に混ざる)。純液体の極限 x→0, 1x\to0,\ 1 では xln⁡x→0x\ln x\to0 で ΔGmix→0\Delta G_\mathrm{mix}\to0 になる。対称な形なので、x=1/2x=1/2 で最小になり、ΔGmix=−nRTln⁡2\Delta G_\mathrm{mix}=-nRT\ln2 である。仮定の数値例として n1=n2=1.00 moln_1=n_2=1.00\ \mathrm{mol}、T=298.15 KT=298.15\ \mathrm K とすると、ΔGmix=−2.00×8.314×298.15×ln⁡2=−3.44 kJ\Delta G_\mathrm{mix}=-2.00\times8.314\times298.15\times\ln2=-3.44\ \mathrm{kJ} になる。

式を立てるときに崩れやすいのは3つある。(1) モル分率を質量分率と取り違える(ln⁡\ln の中は物質量の比)。(2) nn をかけ忘れて、1 mol あたりの式 RT(xln⁡x+(1−x)ln⁡(1−x))RT(x\ln x+(1-x)\ln(1-x)) を答える。問題文は n1n_1 と n2n_2 を指定しているので、示量性の量を求める。(3) 純液体と溶液の差を書かずに、Gafter=n1μ1+n2μ2G_\mathrm{after}=n_1\mu_1+n_2\mu_2 だけで終える。μi∗\mu_i^* の項は引き算で消えるので、TT、pp に依存する μi∗(T,p)\mu_i^*(T,p) は答えに残らない。

設問(a-2) ΔSmix\Delta S_\mathrm{mix}、ΔUmix\Delta U_\mathrm{mix}、ΔHmix\Delta H_\mathrm{mix}

G=H−TSG=H-TS と dG=−S dT+V dp\mathrm dG=-S\,\mathrm dT+V\,\mathrm dp(組成一定)から、S=−(∂G/∂T)pS=-(\partial G/\partial T)_p が導ける。混合前の Gbefore=n1μ1∗+n2μ2∗G_\mathrm{before}=n_1\mu_1^*+n_2\mu_2^* には xix_i が現れないので、温度で微分した SbeforeS_\mathrm{before} は純液体のエントロピーの和であり、ΔSmix=Safter−Sbefore\Delta S_\mathrm{mix}=S_\mathrm{after}-S_\mathrm{before} には μi∗\mu_i^* の項が残らない。同様に、圧力で微分した VbeforeV_\mathrm{before} は純液体の体積の和で、μi∗\mu_i^* の項がやはり消える。

別の確かめ方として、Gibbs--Helmholtz の式 ΔH=−T2 ∂(ΔG/T)/∂T\Delta H=-T^2\,\partial(\Delta G/T)/\partial T を使える。ΔGmix/T=R(n1ln⁡x1+n2ln⁡x2)\Delta G_\mathrm{mix}/T=R(n_1\ln x_1+n_2\ln x_2) は温度に依存しないので、ΔHmix=0\Delta H_\mathrm{mix}=0 となり、上の結果と一致する。

結果の意味は、理想溶液の混合が、純粋にエントロピーの増加(乱雑さ)だけで進むということである。分子間力の変化がなく、熱の出入りも体積変化もない。ΔGmix=−TΔSmix\Delta G_\mathrm{mix}=-T\Delta S_\mathrm{mix} が成り立つ。数値例として n1=n2=1.00 moln_1=n_2=1.00\ \mathrm{mol}、T=298.15 KT=298.15\ \mathrm K(仮定)では ΔSmix=2Rln⁡2=11.5 J K−1\Delta S_\mathrm{mix}=2R\ln2=11.5\ \mathrm{J\,K^{-1}}、−TΔSmix=−3.44 kJ-T\Delta S_\mathrm{mix}=-3.44\ \mathrm{kJ} で、(a-1)の ΔGmix\Delta G_\mathrm{mix} に一致する。

符号や有無の判断を誤る例は、(1) ΔHmix≠0\Delta H_\mathrm{mix}\ne0 として、混合で熱が出入りするように書く、(2) ΔSmix\Delta S_\mathrm{mix} の符号を負にする(ln⁡xi<0\ln x_i<0 に −R-R がかかって正になる)、(3) ΔUmix\Delta U_\mathrm{mix} に pΔVmixp\Delta V_\mathrm{mix} を足し忘れて ΔU=ΔH\Delta U=\Delta H とだけ書き、ΔVmix=0\Delta V_\mathrm{mix}=0 の根拠を示さない、である。ΔVmix=0\Delta V_\mathrm{mix}=0 は、ΔGmix\Delta G_\mathrm{mix} が圧力に依存しないことから導く。

設問(b-1) 正則溶液の混合のGibbsエネルギー変化

正則溶液は、エントロピーは理想溶液と同じ(A と B が乱雑に混ざる)で、エンタルピーだけに A--B の相互作用が入るモデルである。分子の大きさが近い2成分では、よい近似になる。β\beta は無次元で、RTβ xAxBRT\beta\,x_\mathrm{A}x_\mathrm{B} はモルあたりの混合エンタルピーの相互作用の項である。β>0\beta>0 は、A--B の引力が A--A と B--B の平均より弱い(混合が吸熱)、β<0\beta<0 は強い(発熱)、β=0\beta=0 は理想溶液を意味する。

式は、理想溶液の ΔGmixideal=nRT[xln⁡x+(1−x)ln⁡(1−x)]\Delta G^\mathrm{ideal}_\mathrm{mix}=nRT[x\ln x+(1-x)\ln(1-x)] に、β n RT x(1−x)\beta\,n\,RT\,x(1-x) を加えた形になっている。第1項は混合を促し(常に負)、β>0\beta>0 の第2項は混合を妨げる(正)。この2つが競い合うのが、次の設問の主題である。たとえば xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5、β=2.5\beta=2.5 では、角括弧の中が −0.693+2.5×0.25=−0.0681-0.693+2.5\times0.25=-0.0681 で、まだ負である。xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5 で ΔGmixr\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix} が正に転じるのは、β>4ln⁡2=2.77\beta>4\ln2=2.77 のときである。

式の組み立てで起こる間違いは、(1) nn をかけ忘れる、(2) ΔG=ΔH+TΔS\Delta G=\Delta H+T\Delta S と符号を取り違えて、β\beta の項と対数の項が同符号になる式を書く、(3) ΔHmixideal\Delta H^\mathrm{ideal}_\mathrm{mix} を消さずに、前問の 00 を使わない、である。符号の確かめは、β=0\beta=0 で (a-1) の理想溶液の式に一致すること、xA→0, 1x_\mathrm{A}\to0,\ 1 で ΔG→0\Delta G\to0 になることを見る。

設問(b-2) β=2.5\beta=2.5 のとき二階微分の符号とグラフ

二階微分は、ΔG\Delta G の曲線の曲がり方(曲率)を表す。∂2ΔG/∂x2>0\partial^2\Delta G/\partial x^2>0 の組成は曲線が下に凸で、わずかな組成の揺らぎ(ある領域が x+δx+\delta、別の領域が x−δx-\delta へ分かれる)を与えると、混合物の Gibbs エネルギーが 12 ∂2ΔG/∂x2 δ2>0\tfrac12\,\partial^2\Delta G/\partial x^2\,\delta^2>0 だけ増えて元に戻る。負なら、揺らぎで Gibbs エネルギーが減るので、揺らぎは成長する。この安定性の条件が、二階微分の符号が問われる理由である。

式の導出は、対数の項の微分 d(xln⁡x)/dx=ln⁡x+1\mathrm d(x\ln x)/\mathrm dx=\ln x+1 から始める。xln⁡x+(1−x)ln⁡(1−x)x\ln x+(1-x)\ln(1-x) を微分すると ln⁡x1−x\ln\dfrac{x}{1-x}、さらに微分すると 1x+11−x=1x(1−x)\dfrac1x+\dfrac1{1-x}=\dfrac1{x(1-x)} になる。βx(1−x)\beta x(1-x) は1回の微分で β(1−2x)\beta(1-2x)、2回で −2β-2\beta になる。以上を足すと、上の式になる。

臨界値を確かめる。x=1/2x=1/2 で f′′=4−2βf''=4-2\beta なので、β<2\beta<2 では f′′(1/2)>0f''(1/2)>0 となり、曲線は全組成で下に凸(単一の極小)、β=2\beta=2 で曲率が 00 になり、β>2\beta>2 で x=1/2x=1/2 が極大になる(β=1\beta=1:+2+2、22:00、2.52.5:−1-1、33:−2-2)。β=2.5\beta=2.5 は、臨界値 22 を超えているので、二重井戸形になる。

グラフと微分の答案で外れる点は、(1) 曲線を xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5 で極小とする(理想溶液の形)、(2) 曲線を正の領域に描く(ΔGmixr\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix} は β<2.77\beta<2.77 では xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5 でも負)、(3) 二階微分を偏微分として nAn_\mathrm{A} で行い、xAx_\mathrm{A} で微分することを忘れる、(4) 二階微分の第2項を −β-\beta と書く(係数2の落とし)。1/(x(1−x))≥41/(x(1-x))\ge4 なので 4−2.5>04-2.5>0 となり、全組成で正になって、不安定な領域がないという誤った結論になる、である。

設問(b-3) β=2.5\beta=2.5 の溶液の安定な状態

Gibbs エネルギーが最小の状態が平衡である。均一な溶液の ΔG\Delta G は曲線上の1点で表され、2相に分かれた状態の ΔG\Delta G は、2つの相の組成を結ぶ直線(弦)上で、てこの規則で内分した点で表される。曲線が下に凸なら弦は曲線の上にあるので、混合のほうが安定で、均一になる。曲線に上に凸の区間があると、その外側の2点を結ぶ弦が曲線の下を通り、分離したほうが安定になる。2つの相が平衡に共存する組成は、共通接線の接点で、両相の化学ポテンシャルが等しい。

β\beta と温度の関係から、分離の温度依存性が読める。正則溶液の β=ω/(RT)\beta=\omega/(RT)(ω\omega は温度によらない定数と仮定)で、β=2\beta=2 に対応する温度 Tc=ω/(2R)T_\mathrm{c}=\omega/(2R) が臨界温度である。β=2.5\beta=2.5 は T=Tc×2/2.5=0.8 TcT=T_\mathrm{c}\times2/2.5=0.8\,T_\mathrm{c} に当たる。この温度より高温(β<2\beta<2)では、全組成で均一に混ざる。冷却すると、TcT_\mathrm{c} で xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5 から2相に分かれはじめ、温度が下がるほど2相の組成の差が広がる。

結論で外れるのは、(1) ΔGmixr<0\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}<0 だから、すべての組成で混ざって安定だと答える。ΔGmix<0\Delta G_\mathrm{mix}<0 は、純成分の状態より安定という意味にすぎず、2相に分かれた状態との比較が必要である。(2) f′(1/2)=0f'(1/2)=0 から、xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5 の均一な溶液が安定だと答える。xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5 は極大点で、最も不安定な点である。(3) 安定な状態を、2つの極小点の組成の純粋な成分(xA=0x_\mathrm{A}=0 と 11)に分かれるとする。極小は 0.1450.145 と 0.8550.855 で、各相は相手の成分を少し溶かし込んでいる。

解答

設問(a-1) 理想溶液の混合のGibbsエネルギー変化

混合前の全 Gibbs エネルギーは Gbefore=n1μ1∗+n2μ2∗G_\mathrm{before}=n_1\mu_1^*+n_2\mu_2^* である。混合後は、成分 ii の化学ポテンシャルが μi=μi∗+RTln⁡xi\mu_i=\mu_i^*+RT\ln x_i に変わり、全 Gibbs エネルギーは Gafter=n1μ1+n2μ2G_\mathrm{after}=n_1\mu_1+n_2\mu_2 となる(G=∑niμiG=\sum n_i\mu_i。理由は解説に述べる)。この差が混合の Gibbs エネルギー変化で ΔGmix=Gafter−Gbefore=n1(μ1−μ1∗)+n2(μ2−μ2∗)=RT (n1ln⁡x1+n2ln⁡x2). \Delta G_\mathrm{mix}=G_\mathrm{after}-G_\mathrm{before}=n_1(\mu_1-\mu_1^*)+n_2(\mu_2-\mu_2^*)=RT\,(n_1\ln x_1+n_2\ln x_2). xi=ni/nx_i=n_i/n(n=n1+n2n=n_1+n_2)、x=x1x=x_1 とおくと、x2=1−xx_2=1-x だから ΔGmix=nRT [xln⁡x+(1−x)ln⁡(1−x)]. \Delta G_\mathrm{mix}=nRT\,\bigl[x\ln x+(1-x)\ln(1-x)\bigr].

設問(a-2) ΔSmix\Delta S_\mathrm{mix}、ΔUmix\Delta U_\mathrm{mix}、ΔHmix\Delta H_\mathrm{mix}

dG=−S dT+V dp+∑iμi dni\mathrm dG=-S\,\mathrm dT+V\,\mathrm dp+\sum_i\mu_i\,\mathrm dn_i から、S=−(∂G/∂T)p,niS=-(\partial G/\partial T)_{p,n_i}、V=(∂G/∂p)T,niV=(\partial G/\partial p)_{T,n_i} である。混合前と混合後の両方にこの関係を使い、差をとると、ΔSmix=−(∂ΔGmix/∂T)p,ni\Delta S_\mathrm{mix}=-(\partial\Delta G_\mathrm{mix}/\partial T)_{p,n_i}、ΔVmix=(∂ΔGmix/∂p)T,ni\Delta V_\mathrm{mix}=(\partial\Delta G_\mathrm{mix}/\partial p)_{T,n_i} となる。(a-1)の ΔGmix=RT(n1ln⁡x1+n2ln⁡x2)\Delta G_\mathrm{mix}=RT(n_1\ln x_1+n_2\ln x_2) で、xix_i は TT にも pp にも依存しないので ΔSmix=−R (n1ln⁡x1+n2ln⁡x2)>0,ΔVmix=0,ΔHmix=ΔGmix+TΔSmix=0,ΔUmix=ΔHmix−p ΔVmix=0.\begin{align*} \Delta S_\mathrm{mix}&=-R\,(n_1\ln x_1+n_2\ln x_2)>0,\\ \Delta V_\mathrm{mix}&=0,\\ \Delta H_\mathrm{mix}&=\Delta G_\mathrm{mix}+T\Delta S_\mathrm{mix}=0,\\ \Delta U_\mathrm{mix}&=\Delta H_\mathrm{mix}-p\,\Delta V_\mathrm{mix}=0. \end{align*}

設問(b-1) 正則溶液の混合のGibbsエネルギー変化

正則溶液では、ΔHmixr=ΔHmixideal+RTβ n xA(1−xA)\Delta H^\mathrm{r}_\mathrm{mix}=\Delta H^\mathrm{ideal}_\mathrm{mix}+RT\beta\,n\,x_\mathrm{A}(1-x_\mathrm{A}) で、n=nA+nBn=n_\mathrm{A}+n_\mathrm{B}、(a-2)から ΔHmixideal=0\Delta H^\mathrm{ideal}_\mathrm{mix}=0、また ΔSmixr=ΔSmixideal=−R(nAln⁡xA+nBln⁡xB)\Delta S^\mathrm{r}_\mathrm{mix}=\Delta S^\mathrm{ideal}_\mathrm{mix}=-R(n_\mathrm{A}\ln x_\mathrm{A}+n_\mathrm{B}\ln x_\mathrm{B}) である。ΔG=ΔH−TΔS\Delta G=\Delta H-T\Delta S に代入して ΔGmixr=ΔHmixr−TΔSmixr=RTβ n xA(1−xA)+RT (nAln⁡xA+nBln⁡xB)=nRT[xAln⁡xA+(1−xA)ln⁡(1−xA)+β xA(1−xA)].\begin{align*} \Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}&=\Delta H^\mathrm{r}_\mathrm{mix}-T\Delta S^\mathrm{r}_\mathrm{mix}\\ &=RT\beta\,n\,x_\mathrm{A}(1-x_\mathrm{A})+RT\,(n_\mathrm{A}\ln x_\mathrm{A}+n_\mathrm{B}\ln x_\mathrm{B})\\ &=nRT\Bigl[x_\mathrm{A}\ln x_\mathrm{A}+(1-x_\mathrm{A})\ln(1-x_\mathrm{A})+\beta\,x_\mathrm{A}(1-x_\mathrm{A})\Bigr]. \end{align*}

設問(b-2) β=2.5\beta=2.5 のとき二階微分の符号とグラフ

n=nA+nBn=n_\mathrm{A}+n_\mathrm{B} が一定なので、x=xAx=x_\mathrm{A} だけの関数 f(x)=ΔGmixr/(nRT)f(x)=\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}/(nRT) で考える。 f′(x)=ln⁡x1−x+β(1−2x),∂2ΔGmixr∂xA2=nRT f′′(x)=nRT[1x(1−x)−2β]. f'(x)=\ln\frac{x}{1-x}+\beta(1-2x),\qquad \frac{\partial^2\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}}{\partial x_\mathrm{A}^2}=nRT\,f''(x)=nRT\Bigl[\frac1{x(1-x)}-2\beta\Bigr]. β=2.5\beta=2.5 では角括弧の中は 1x(1−x)−5\dfrac1{x(1-x)}-5 である。nn、RR、TT は正なので、符号は角括弧の中で決まる。1x(1−x)=5\dfrac1{x(1-x)}=5 すなわち x(1−x)=0.2x(1-x)=0.2 を解くと x=1±0.22=0.2764, 0.7236x=\dfrac{1\pm\sqrt{0.2}}2=0.2764,\ 0.7236 で、

  • 0<xA<0.27640<x_\mathrm{A}<0.2764 と 0.7236<xA<10.7236<x_\mathrm{A}<1 では ∂2ΔGmixr/∂xA2>0\partial^2\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}/\partial x_\mathrm{A}^2>0(下に凸)。

  • 0.2764<xA<0.72360.2764<x_\mathrm{A}<0.7236 では ∂2ΔGmixr/∂xA2<0\partial^2\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}/\partial x_\mathrm{A}^2<0(上に凸)。xA=0.2764, 0.7236x_\mathrm{A}=0.2764,\ 0.7236 では 00(変曲点)。

ff は x=1/2x=1/2 について対称で、f(0)=f(1)=0f(0)=f(1)=0、f′(1/2)=0f'(1/2)=0 である。f′=0f'=0 を解くと極小は x=0.1448x=0.1448 と 0.85520.8552(f=−0.1040f=-0.1040)にあり、x=1/2x=1/2 は極大(f=−0.0681f=-0.0681)になる。曲線はすべての組成で負である。

β=2.5のときの混合のGibbsエネルギーΔG^r_mix/(nRT)とAのモル分率xAの関係(値はすべて負)。xA=0.145と0.855で極小、xA=0.5で極大−0.068をとり、0.276と0.724の白丸が変曲点。2つの極小に引いた共通接線を破線で示し、下段に2階微分の符号(>0、<0、>0)を示す。

自作図:β=2.5\beta=2.5 のときの ΔGmixr/(nRT)\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}/(nRT) と xAx_\mathrm{A} の関係(縦軸は 00 が上、すべて負)。下段の >0>0、<0<0 は ∂2ΔGmixr/∂xA2\partial^2\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}/\partial x_\mathrm{A}^2 の符号。白丸が変曲点(x=0.276, 0.724x=0.276,\ 0.724)、黒丸が極小(0.145, 0.8550.145,\ 0.855)と、極大(0.50.5)。

設問(b-3) β=2.5\beta=2.5 の溶液の安定な状態

0.276<xA<0.7240.276<x_\mathrm{A}<0.724 では ∂2ΔGmixr/∂xA2<0\partial^2\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}/\partial x_\mathrm{A}^2<0 なので、均一な溶液は不安定で、わずかな組成の揺らぎでも成長し、自発的に2つの液相に分かれる(スピノーダル分解)。0.145<xA<0.2760.145<x_\mathrm{A}<0.276 と 0.724<xA<0.8550.724<x_\mathrm{A}<0.855 は、二階微分が正なので、微小な揺らぎには安定(準安定)だが、2つの極小の組成の液相に分かれたほうが Gibbs エネルギーが低い。

系が取る平衡状態は、2つの極小点を結ぶ共通接線で決まる。ff が x=1/2x=1/2 について対称なので、共通接線は水平で、極小点の xα=0.1448x_\alpha=0.1448(B に富む相)と xβ=1−xα=0.8552x_\beta=1-x_\alpha=0.8552(A に富む相)の2相が共存する。この共存条件は、各成分の化学ポテンシャルが両相で等しいこと(μAα=μAβ\mu_\mathrm{A}^\alpha=\mu_\mathrm{A}^\beta、μBα=μBβ\mu_\mathrm{B}^\alpha=\mu_\mathrm{B}^\beta)と同じで、f′(xα)=0f'(x_\alpha)=0、すなわち ln⁡x1−x=β(2x−1)\ln\dfrac{x}{1-x}=\beta(2x-1) を満たす。全体の組成が 0.145<xA<0.8550.145<x_\mathrm{A}<0.855 にある溶液は、この2相に分かれ、各相の割合はてこの規則で決まる。たとえば xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5 の溶液は、2相が等量になり、1 mol あたりの Gibbs エネルギーは f=−0.1040 nRTf=-0.1040\,nRT と、均一な状態の −0.0681 nRT-0.0681\,nRT より 0.0359 nRT0.0359\,nRT 低い。全体の組成が xA<0.145x_\mathrm{A}<0.145 か xA>0.855x_\mathrm{A}>0.855 なら、均一な1相の溶液が安定である。

最終答

設問(a-1) 理想溶液の混合のGibbsエネルギー変化

ΔGmix=RT (n1ln⁡x1+n2ln⁡x2)=nRT[x1ln⁡x1+x2ln⁡x2]\displaystyle\Delta G_\mathrm{mix}=RT\,(n_1\ln x_1+n_2\ln x_2)=nRT\bigl[x_1\ln x_1+x_2\ln x_2\bigr](n=n1+n2n=n_1+n_2)。0<xi<10<x_i<1 なので ΔGmix<0\Delta G_\mathrm{mix}<0。

設問(a-2) ΔSmix\Delta S_\mathrm{mix}、ΔUmix\Delta U_\mathrm{mix}、ΔHmix\Delta H_\mathrm{mix}

ΔSmix=−R(n1ln⁡x1+n2ln⁡x2)\Delta S_\mathrm{mix}=-R(n_1\ln x_1+n_2\ln x_2)、ΔHmix=0\Delta H_\mathrm{mix}=0、ΔUmix=0\Delta U_\mathrm{mix}=0(体積変化も ΔVmix=0\Delta V_\mathrm{mix}=0)。

設問(b-1) 正則溶液の混合のGibbsエネルギー変化

ΔGmixr=nRT[xAln⁡xA+(1−xA)ln⁡(1−xA)+β xA(1−xA)]\displaystyle\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}=nRT\bigl[x_\mathrm{A}\ln x_\mathrm{A}+(1-x_\mathrm{A})\ln(1-x_\mathrm{A})+\beta\,x_\mathrm{A}(1-x_\mathrm{A})\bigr](n=nA+nBn=n_\mathrm{A}+n_\mathrm{B})。

設問(b-2) β=2.5\beta=2.5 のとき二階微分の符号とグラフ

∂2ΔGmixr/∂xA2=nRT[1/(xA(1−xA))−5]\partial^2\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix}/\partial x_\mathrm{A}^2=nRT\bigl[1/(x_\mathrm{A}(1-x_\mathrm{A}))-5\bigr]。0.276<xA<0.7240.276<x_\mathrm{A}<0.724 で負、それ以外で正。ΔGmixr\Delta G^\mathrm{r}_\mathrm{mix} は全組成で負で、xA=0.5x_\mathrm{A}=0.5 に極大、xA≈0.145, 0.855x_\mathrm{A}\approx0.145,\ 0.855 に2つの極小をもつ二重井戸形である。

設問(b-3) β=2.5\beta=2.5 の溶液の安定な状態

β=2.5\beta=2.5 では、0.145<xA<0.8550.145<x_\mathrm{A}<0.855 の組成の溶液は均一に混ざらず、xA≈0.145x_\mathrm{A}\approx0.145 の相と xA≈0.855x_\mathrm{A}\approx0.855 の相に分離する(部分混和)。0.276<xA<0.7240.276<x_\mathrm{A}<0.724 では均一な状態が不安定で、自発的に分離する。

第5問 — 原子分光:Li^2+のLyman系列とLi原子の微細構造

原子分光:Li^2+のLyman系列とLi原子の微細構造の途中式・最終答をPDFで見る

化学IIの解答・解説PDF

2023〜2026年度(4年度) · ¥2,580

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年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(解説5項目)

    電気化学と滴定:過マンガン酸カリウムによる COD 測定 / 分子軌道と分光:酸素分子のπ*電子配置と電子状態 / 錯体化学:イリジウム錯体の立体異性とメタロセンの電子構造

  • 2025年度(このページ・解説5項目)

    錯体化学:Mo錯体の合成・ROMPとNi(II)アンミン錯体 / 有機合成:(±)-Norcaesalpinin MC の合成経路 / 有機化学:アズレンの合成と、ヨウ素・メチルリチウムとの反応

  • 2024年度(解説5項目)

    高分子化学:合成高分子のIRスペクトルと、ポリ酢酸ビニルのNMR・立体規則性 / 有機化学:ジテルペン (+)-cassaine の合成経路における各段階の反応 / 無機化学:コバルト錯体の立体異性と、コバルトカルボニルクラスター

  • 2023年度(解説5項目)

    有機化学:硫黄・窒素を含む化合物の反応と機構 / 有機合成:Dynemicin A の合成中間体 10 への経路 / 無機・錯体化学:チタン・ルテニウム・マンガン錯体

2025年度の出題内容

解説5項目

この5問の分野は化学2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問Mo錯体の合成・ROMPとNi(II)アンミン錯体—あり
第2問(±)-Norcaesalpinin MC の合成経路—あり
第3問化学アズレンの合成と、ヨウ素・メチルリチウムとの反応—あり
第4問化学理想溶液・正則溶液の混合のGibbsエネルギーと相分離—あり
第5問Li^2+のLyman系列とLi原子の微細構造—あり

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 5問 → 2025年度 5問
2024年度の解答例

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
大阪大学の公式過去問PDF