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阪大 基礎工学研究科 物質創成専攻 化学II 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は化学2項目、量子力学1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 有機化学:硫黄・窒素を含む化合物の反応と機構

有機化学:硫黄・窒素を含む化合物の反応と機構の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 有機合成:Dynemicin A の合成中間体 10 への経路

有機合成:Dynemicin A の合成中間体 10 への経路の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 無機・錯体化学:チタン・ルテニウム・マンガン錯体

無機・錯体化学:チタン・ルテニウム・マンガン錯体の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 物理化学:水素・酸素電池と水の電気分解

設問(a-1) 標準起電力と標準反応 Gibbs エネルギー

Gibbs エネルギーは、定温・定圧で、系がする最大の非膨張仕事(電気的な仕事)を与える量である。1 mol の電子が運ぶ電気量は Faraday 定数 FF で、電位差 EE を通る電気量 qq の仕事は qEqE なので、反応1 mol あたり nn mol の電子が移る電池では、系が外にする仕事は nFEnFE になる。系の Gibbs エネルギーはこの分だけ減るから、ΔrG=−nFE\Delta_\mathrm r G=-nFE である。標準状態(活量1)では E=E∘E=E^\circ、ΔrG=ΔrG∘\Delta_\mathrm r G=\Delta_\mathrm r G^\circ とすればよい。

nn は、反応式をどう書くかで決まる。式(3)は 2 H22\,\mathrm{H_2} と 4 e−4\,\mathrm{e^-} に対応するから n=4n=4 で、起電力 1.23 V1.23\ \mathrm V は変わらない。水1 mol あたりの反応 H2+12O2→H2O\mathrm{H_2}+\tfrac12\mathrm{O_2}\to\mathrm{H_2O} なら n=2n=2 で、ΔrG∘=−237.4 kJ mol−1\Delta_\mathrm r G^\circ=-237.4\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} となる。熱力学表の液体の水の標準生成 Gibbs エネルギー(約 −237 kJ mol−1-237\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}、文献値)に近く、1.23 V1.23\ \mathrm V という値が妥当であることを確かめられる。ΔrG∘<0\Delta_\mathrm r G^\circ<0 で E∘>0E^\circ>0 なので、この反応は標準状態で自発的に進み、電池として電力を取り出せる。

符号と係数で誤りやすいのは3点である。(1) 式(3)に n=2n=2 を使い、−237 kJ mol−1-237\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} とする(式(3)の係数は2倍なので、反応1 mol あたりでは半分の値になる)。(2) E∘=EA∘−EB∘=−1.23 VE^\circ=E^\circ_\mathrm A-E^\circ_\mathrm B=-1.23\ \mathrm V と、カソードとアノードを入れ替える(このとき ΔrG∘\Delta_\mathrm r G^\circ の符号が逆になり、電池が自発的に動かない結果になる)。(3) 単位を J\mathrm{J} のまま kJ\mathrm{kJ} と書く。4.748×105 J mol−1=474.8 kJ mol−14.748\times10^{5}\ \mathrm{J\,mol^{-1}}=474.8\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} で、有効数字3桁では −475 kJ mol−1-475\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} である。

設問(a-2) 活量が0.300、0.800のときの理論起電力

Nernst の式の根拠は、ΔrG=ΔrG∘+RTln⁡Q\Delta_\mathrm r G=\Delta_\mathrm r G^\circ+RT\ln Q にある。これは、各成分の化学ポテンシャルが μi=μi∘+RTln⁡ai\mu_i=\mu_i^\circ+RT\ln a_i と書けることから、反応の ∑νiμi\sum\nu_i\mu_i を作って得られる。QQ は反応式の係数を累乗の指数に取るので、式(3)の 2 H22\,\mathrm{H_2} は a(H2)2a(\mathrm{H_2})^2 になる。問題文は a(H2O)=1.00a(\mathrm{H_2O})=1.00、a(H+)=1.00a(\mathrm{H^+})=1.00 としているので、この2つは QQ に影響しない。電池の反応物(H2\mathrm{H_2}、O2\mathrm{O_2})の活量が1より小さいと、反応は標準状態より進む力が弱くなり、EE は E∘E^\circ より小さくなる。得られた 1.213 V<1.23 V1.213\ \mathrm V<1.23\ \mathrm V は、この向きの変化と一致する。

別経路として電極ごとに計算したのは、検算のためである。反応(1)と(2)について半電池の Nernst の式を立てると、EAE_\mathrm A は 2e−2\mathrm{e^-}(n=2n=2)、EBE_\mathrm B は 4e−4\mathrm e^-(n=4n=4)で、nn が違う。足し合わせる前に、各電極の RT/(nF)RT/(nF) の nn を、その電極の反応式の電子数にする点が、見落としやすい。

誤った QQ から出る値は次の通りである。(1) QQ を逆にして(生成物の活量を分母にする)、E=1.2469 VE=1.2469\ \mathrm V(E∘E^\circ より大きくなり、向きが逆)。(2) a(H2)a(\mathrm{H_2}) を2乗せず、Q=1/(0.300×0.800)Q=1/(0.300\times0.800) として E=1.2208 VE=1.2208\ \mathrm V。(3) n=2n=2 を使い E=1.1962 VE=1.1962\ \mathrm V(電子数を式(3)に合わせていない)。いずれも小数第2位まで見ると、1.25 V1.25\ \mathrm V、1.22 V1.22\ \mathrm V、1.20 V1.20\ \mathrm V と、正解の 1.21 V1.21\ \mathrm V とずれる。

設問(a-3) 温度係数 α\alpha と標準反応エントロピー

Gibbs エネルギーの全微分 dG=−S dT+V dp\mathrm dG=-S\,\mathrm dT+V\,\mathrm dp(閉じた系、非膨張仕事なし)から、(∂G/∂T)p=−S(\partial G/\partial T)_p=-S が成り立つ。反応の前後で差をとれば、(∂ΔrG/∂T)p=−ΔrS(\partial\Delta_\mathrm r G/\partial T)_p=-\Delta_\mathrm r S である。標準状態でも同様で、標準状態の定義が温度に依存しない(圧力 1 bar、活量1)ので、ΔrS∘\Delta_\mathrm r S^\circ はこの微分に等しい。電池では ΔrG∘=−nFE∘\Delta_\mathrm r G^\circ=-nFE^\circ と電位で測れるので、温度を変えて起電力を測れば、熱量計を使わずに ΔrS∘\Delta_\mathrm r S^\circ が得られる。α>0\alpha>0 なら、反応でエントロピーが増え、α<0\alpha<0 なら減る。

単位の確認をしておく。α\alpha の単位は V K−1\mathrm{V\,K^{-1}} で、FF は C mol−1\mathrm{C\,mol^{-1}} だから、nFαnF\alpha は C V K−1 mol−1=J K−1 mol−1\mathrm{C\,V\,K^{-1}\,mol^{-1}}=\mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}} となり、エントロピーの単位に一致する。ここで nn は電池反応の式の書き方(係数の倍数)に従う数で、(a-1) と同じ n=4n=4 を使う。

導出の過程で外れやすいのは、(1) 符号を取り違えて ΔrS∘=−nFα\Delta_\mathrm r S^\circ=-nF\alpha とする、(2) ΔrG∘=−nFE∘\Delta_\mathrm r G^\circ=-nFE^\circ の E∘E^\circ が温度に依存することを使わず、ΔrG∘\Delta_\mathrm r G^\circ の温度微分を 00 とする、(3) 定圧の条件を書かない、である。圧力を一定にするので、偏微分の添え字 pp を示す。

設問(a-4) ΔrS∘\Delta_\mathrm r S^\circ と ΔrH∘\Delta_\mathrm r H^\circ の値

ΔrH∘\Delta_\mathrm r H^\circ は、起電力と温度係数から一度に表すこともできる。ΔrH∘=ΔrG∘+TΔrS∘=−nFE∘+TnFα=−nF(E∘−Tα)\Delta_\mathrm r H^\circ=\Delta_\mathrm r G^\circ+T\Delta_\mathrm r S^\circ=-nFE^\circ+TnF\alpha=-nF(E^\circ-T\alpha) で、−4×9.65×104×(1.23−298×(−8.46×10−4))=−572.09 kJ mol−1-4\times9.65\times10^4\times(1.23-298\times(-8.46\times10^{-4}))=-572.09\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} となり、上の値と一致する。結果の符号は物理的に自然である。式(3)は気体3 mol が液体の水2 mol になる反応なので、エントロピーは減り(ΔrS∘<0\Delta_\mathrm r S^\circ<0)、燃焼反応として発熱(ΔrH∘<0\Delta_\mathrm r H^\circ<0)である。

熱力学表の値で確かめる。液体の水の標準生成エンタルピー −285.83 kJ mol−1-285.83\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} から ΔrH∘=2×(−285.83)=−571.66 kJ mol−1\Delta_\mathrm r H^\circ=2\times(-285.83)=-571.66\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}、標準モルエントロピー H2\mathrm{H_2} 130.68130.68、O2\mathrm{O_2} 205.14205.14、H2O(l)\mathrm{H_2O(l)} 69.91 J K−1 mol−169.91\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}} から ΔrS∘=2(69.91)−2(130.68)−205.14=−326.68 J K−1 mol−1\Delta_\mathrm r S^\circ=2(69.91)-2(130.68)-205.14=-326.68\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}} となり、温度係数から求めた値と、0.5 の範囲で一致する(文献値)。

電池として使う意味も読み取れる。反応が可逆に進むとき、系が吸収する熱は TΔrS∘=−97.3 kJ mol−1T\Delta_\mathrm r S^\circ=-97.3\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} で、負なので 97.3 kJ97.3\ \mathrm{kJ} の熱が外へ出る。取り出せる電気的な仕事は −ΔrG∘=474.8 kJ mol−1-\Delta_\mathrm r G^\circ=474.8\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} である。電気に変えられる割合の上限は ΔrG∘/ΔrH∘=0.830\Delta_\mathrm r G^\circ/\Delta_\mathrm r H^\circ=0.830 で、約 83 %83\,\% となる。燃焼熱を全部は電気にできず、残りは熱として出る。

桁と符号の誤りは、(1) α\alpha の単位換算を忘れて −0.846-0.846 をそのまま使い、ΔrS∘=−3.27×105 J K−1 mol−1\Delta_\mathrm r S^\circ=-3.27\times10^{5}\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}} と桁がずれる、(2) n=2n=2 を使って −163 J K−1 mol−1-163\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}}(水1 mol あたりの値で、式(3)の値の半分)、(3) 符号を逆にして ΔrS∘=+327 J K−1 mol−1\Delta_\mathrm r S^\circ=+327\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}}、(4) ΔrH∘=ΔrG∘−TΔrS∘\Delta_\mathrm r H^\circ=\Delta_\mathrm r G^\circ-T\Delta_\mathrm r S^\circ と符号を取り違えて −377.5 kJ mol−1-377.5\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}(熱力学表の値 −571.7 kJ mol−1-571.7\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} から大きく外れる)である。

設問(b-1) 1.00 時間の電気分解に伴う Gibbs エネルギー変化

Faraday の法則は、通電した電気量と、電極反応で変化する物質量を結ぶ。1 mol の電子の電気量が FF だから、ne−=It/Fn_{\mathrm e^-}=It/F である。反応の進行度 ξ\xi は、反応式の係数を単位にした反応の量で、式の書き方(4電子で 2 H2O2\,\mathrm{H_2O} が分解)に従い、ξ=ne−/4\xi=n_{\mathrm e^-}/4 とする。同じ数値を水の物質量 2ξ=0.0224 mol2\xi=0.0224\ \mathrm{mol} から作る場合は、反応 H2O→H2+12O2\mathrm{H_2O}\to\mathrm{H_2}+\tfrac12\mathrm{O_2} の ΔG=+237.4 kJ mol−1\Delta G=+237.4\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} を使うと、同じ 5.31 kJ5.31\ \mathrm{kJ} になる。どちらの数え方でも、反応式の書き方に合わせて物質量の基準をそろえる。

ΔG\Delta G は状態量なので、始状態と終状態(水と、生成した水素・酸素)だけで決まり、印加した電圧 1.70 V1.70\ \mathrm V には依存しない。問題文に電気分解中の気体の活量が与えられていないため、a(H2)=a(O2)=1a(\mathrm{H_2})=a(\mathrm{O_2})=1(標準状態)と仮定した。もし生成した気体の活量が1でないなら、(a-2) の Nernst の式で ΔG\Delta G を補正する。

ΔG\Delta G の誤りは、(1) 1.70 V1.70\ \mathrm V を使って q⋅1.70=7.34 kJq\cdot1.70=7.34\ \mathrm{kJ} とする(これは電源が供給した電気エネルギーで、ΔG\Delta G ではない)、(2) 水の物質量 0.0224 mol0.0224\ \mathrm{mol} に、式(3)の ΔrG∘\Delta_\mathrm r G^\circ(2 mol2\,\mathrm{mol} の水あたり)を掛けて 10.6 kJ10.6\ \mathrm{kJ} と2倍にする(物質量と反応の基準の取り違え)、(3) 符号を負にして −5.31 kJ-5.31\ \mathrm{kJ} とする、である。

設問(b-2) 電気エネルギーから化学エネルギーへの変換効率

電気エネルギー W=VItW=VIt は、電圧と電気量の積である。電圧 VV のうち、E∘=1.23 VE^\circ=1.23\ \mathrm V は反応そのものを進める分で、残りの V−E∘=0.47 VV-E^\circ=0.47\ \mathrm V は、電極での過電圧と溶液・膜の抵抗による電圧降下に使われ、熱になる。したがって、効率は電圧の比 E∘/VE^\circ/V に等しい。この仮定(流れた電流はすべて水分解に由来し、電圧と電流が一定)は、問題文に与えられている。

「化学エネルギー」を Gibbs エネルギー変化とした場合の効率が 72.4 %72.4\,\% である。別の数え方として、エンタルピー変化を基準にする方法がある。この場合は、熱中性電圧 −ΔrH∘/(nF)=572.09×103/(4×9.65×104)=1.482 V-\Delta_\mathrm r H^\circ/(nF)=572.09\times10^{3}/(4\times9.65\times10^{4})=1.482\ \mathrm V を使って 1.482/1.70=87.2 %1.482/1.70=87.2\,\% となる。この数え方では、発生した熱が反応に必要な熱の一部を補うと考える。問題文は (b-1) で Gibbs エネルギー変化を求めさせているので、答えは Gibbs エネルギーを基準にした 72.4 %72.4\,\% とする。

効率の誤答例は、(1) 分母と分子を逆にして 138 %138\,\% とする(効率が 100 %100\,\% を超えるのは不自然で、エネルギー保存の点で誤りと分かる)、(2) 分子に 7.34 kJ7.34\ \mathrm{kJ} を使い 100 %100\,\% とする、(3) 電圧を引いた 1.70−1.23=0.471.70-1.23=0.47 を効率とする、である。

解答

設問(a-1) 標準起電力と標準反応 Gibbs エネルギー

電極 A では水素が酸化され(アノード)、電極 B では酸素が還元される(カソード)。式(1)を逆向きにして2倍し、式(2)と足すと、4電子が消えて電池反応(3)になる。 2 H2→4 H++4 e−(式(1)の逆×2)O2+4 H++4 e−→2 H2O(式(2))2 H2+O2→2 H2O(式(3)),n=4\begin{align*} 2\,\mathrm{H_2}&\rightarrow4\,\mathrm{H^+}+4\,\mathrm{e^-}\quad(\text{式(1)の逆}\times2)\\ \mathrm{O_2}+4\,\mathrm{H^+}+4\,\mathrm{e^-}&\rightarrow2\,\mathrm{H_2O}\quad(\text{式(2)})\\ 2\,\mathrm{H_2}+\mathrm{O_2}&\rightarrow2\,\mathrm{H_2O}\quad(\text{式(3)}),\qquad n=4 \end{align*} 標準起電力は、カソードの標準電極電位からアノードの標準電極電位を引いたものである(電極電位は反応式の係数によらない強度変数)。 E∘=EB∘−EA∘=1.23 V−0 V=1.23 V. E^\circ=E^\circ_\mathrm B-E^\circ_\mathrm A=1.23\ \mathrm V-0\ \mathrm V=1.23\ \mathrm V. 電池が可逆に動くとき、取り出せる最大の電気的な仕事は、電気量 nFnF と起電力の積であり、これが定温・定圧での Gibbs エネルギー変化に等しい。標準状態では ΔrG∘=−nFE∘=−4×(9.65×104 C mol−1)×1.23 V=−4.748×105 J mol−1. \Delta_\mathrm r G^\circ=-nFE^\circ=-4\times(9.65\times10^{4}\ \mathrm{C\,mol^{-1}})\times1.23\ \mathrm V=-4.748\times10^{5}\ \mathrm{J\,mol^{-1}}.

設問(a-2) 活量が0.300、0.800のときの理論起電力

定温・定圧の反応 Gibbs エネルギーは、反応商 QQ を使って ΔrG=ΔrG∘+RTln⁡Q\Delta_\mathrm r G=\Delta_\mathrm r G^\circ+RT\ln Q と書ける。ΔrG=−nFE\Delta_\mathrm r G=-nFE、ΔrG∘=−nFE∘\Delta_\mathrm r G^\circ=-nFE^\circ を代入すると、Nernst の式が得られる。 E=E∘−RTnFln⁡Q. E=E^\circ-\frac{RT}{nF}\ln Q. 式(3)の反応商は、生成物の活量を分子、反応物の活量を分母にして、係数を指数にする。a(H2O)=1a(\mathrm{H_2O})=1、a(H+)=1.00a(\mathrm{H^+})=1.00 なので、 Q=a(H2O)2a(H2)2 a(O2)=1(0.300)2×0.800=10.0720=13.89. Q=\frac{a(\mathrm{H_2O})^2}{a(\mathrm{H_2})^2\,a(\mathrm{O_2})}=\frac{1}{(0.300)^2\times0.800}=\frac1{0.0720}=13.89. n=4n=4、T=298 KT=298\ \mathrm K、R=8.31 J K−1 mol−1R=8.31\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}} から RTnF=8.31×2984×9.65×104=6.416×10−3 V,ln⁡Q=2.631, \frac{RT}{nF}=\frac{8.31\times298}{4\times9.65\times10^{4}}=6.416\times10^{-3}\ \mathrm V,\qquad \ln Q=2.631, E=1.23 V−(6.416×10−3 V)(2.631)=1.23 V−0.0169 V=1.213 V. E=1.23\ \mathrm V-(6.416\times10^{-3}\ \mathrm V)(2.631)=1.23\ \mathrm V-0.0169\ \mathrm V=1.213\ \mathrm V. 電極ごとに計算しても同じになる。水素電極は EA=0−RT2Fln⁡a(H2)a(H+)2=+0.0154 VE_\mathrm A=0-\frac{RT}{2F}\ln\frac{a(\mathrm{H_2})}{a(\mathrm{H^+})^2}=+0.0154\ \mathrm V、酸素電極は EB=1.23−RT4Fln⁡1a(O2)a(H+)4=1.2286 VE_\mathrm B=1.23-\frac{RT}{4F}\ln\frac{1}{a(\mathrm{O_2})a(\mathrm{H^+})^4}=1.2286\ \mathrm V で、E=EB−EA=1.2131 VE=E_\mathrm B-E_\mathrm A=1.2131\ \mathrm V となる。

設問(a-3) 温度係数 α\alpha と標準反応エントロピー

定圧で ΔrG∘\Delta_\mathrm r G^\circ を温度で微分すると、dG=−S dT+V dp\mathrm dG=-S\,\mathrm dT+V\,\mathrm dp から (∂ΔrG∘∂T)p=−ΔrS∘. \Bigl(\frac{\partial\Delta_\mathrm r G^\circ}{\partial T}\Bigr)_p=-\Delta_\mathrm r S^\circ. 一方、ΔrG∘=−nFE∘\Delta_\mathrm r G^\circ=-nFE^\circ で、nn と FF は温度によらない定数だから、 (∂ΔrG∘∂T)p=−nF(dE∘dT)=−nFα. \Bigl(\frac{\partial\Delta_\mathrm r G^\circ}{\partial T}\Bigr)_p=-nF\Bigl(\frac{\mathrm dE^\circ}{\mathrm dT}\Bigr)=-nF\alpha. 2式を等しいとおく。 −ΔrS∘=−nFα⟹ΔrS∘=nFα. -\Delta_\mathrm r S^\circ=-nF\alpha\quad\Longrightarrow\quad\Delta_\mathrm r S^\circ=nF\alpha.

設問(a-4) ΔrS∘\Delta_\mathrm r S^\circ と ΔrH∘\Delta_\mathrm r H^\circ の値

α=−0.846 mV K−1=−8.46×10−4 V K−1\alpha=-0.846\ \mathrm{mV\,K^{-1}}=-8.46\times10^{-4}\ \mathrm{V\,K^{-1}} と (a-3) の式から、n=4n=4 で ΔrS∘=nFα=4×(9.65×104)×(−8.46×10−4)=−326.6 J K−1 mol−1. \Delta_\mathrm r S^\circ=nF\alpha=4\times(9.65\times10^{4})\times(-8.46\times10^{-4})=-326.6\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}}. ΔrG∘=ΔrH∘−TΔrS∘\Delta_\mathrm r G^\circ=\Delta_\mathrm r H^\circ-T\Delta_\mathrm r S^\circ を ΔrH∘\Delta_\mathrm r H^\circ について解き、(a-1) の値を使う。 ΔrH∘=ΔrG∘+TΔrS∘=(−474.78)+(298)(−0.3266)=−474.78−97.31=−572.09 kJ mol−1. \Delta_\mathrm r H^\circ=\Delta_\mathrm r G^\circ+T\Delta_\mathrm r S^\circ=(-474.78)+(298)(-0.3266)=-474.78-97.31=-572.09\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}.

設問(b-1) 1.00 時間の電気分解に伴う Gibbs エネルギー変化

通電した電気量は q=It=1.20 A×3600 s=4320 C,ne−=qF=43209.65×104=4.477×10−2 mol. q=It=1.20\ \mathrm A\times3600\ \mathrm s=4320\ \mathrm C,\qquad n_{\mathrm e^-}=\frac qF=\frac{4320}{9.65\times10^{4}}=4.477\times10^{-2}\ \mathrm{mol}. 水の電気分解は式(3)の逆反応 2 H2O→2 H2+O22\,\mathrm{H_2O}\to2\,\mathrm{H_2}+\mathrm{O_2}(n=4n=4)で、反応の進行度は ξ=ne−4=1.119×10−2 mol \xi=\frac{n_{\mathrm e^-}}{4}=1.119\times10^{-2}\ \mathrm{mol} (水 2ξ=2.24×10−2 mol2\xi=2.24\times10^{-2}\ \mathrm{mol}、約 0.403 g0.403\ \mathrm g が分解する)。標準状態(活量1、298 K298\ \mathrm K)での逆反応の Gibbs エネルギー変化は −ΔrG∘=+474.78 kJ mol−1-\Delta_\mathrm r G^\circ=+474.78\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} だから、 ΔG=ξ (−ΔrG∘)=(1.119×10−2 mol)(4.7478×105 J mol−1)=5.31×103 J. \Delta G=\xi\,(-\Delta_\mathrm r G^\circ)=(1.119\times10^{-2}\ \mathrm{mol})(4.7478\times10^{5}\ \mathrm{J\,mol^{-1}})=5.31\times10^{3}\ \mathrm J. これは ΔG=q E∘=4320 C×1.23 V=5314 J\Delta G=q\,E^\circ=4320\ \mathrm C\times1.23\ \mathrm V=5314\ \mathrm J とも一致する。

設問(b-2) 電気エネルギーから化学エネルギーへの変換効率

供給した電気エネルギーは W=VIt=1.70 V×1.20 A×3600 s=7.344×103 J. W=VIt=1.70\ \mathrm V\times1.20\ \mathrm A\times3600\ \mathrm s=7.344\times10^{3}\ \mathrm J. 化学エネルギーとして蓄えられた量は、(b-1) の ΔG=5.314 kJ\Delta G=5.314\ \mathrm{kJ} である。変換効率は η=ΔGW=5.3147.344=0.7235 (=E∘V=1.231.70). \eta=\frac{\Delta G}{W}=\frac{5.314}{7.344}=0.7235\ \Bigl(=\frac{E^\circ}{V}=\frac{1.23}{1.70}\Bigr).

1.70 Vで通電したときの電気エネルギー7.34 kJの内訳。ΔG=5.31 kJ(72.4 %)が化学エネルギーとして蓄えられ、残りの27.6 %(0.47 Vに相当)が熱として失われる。

自作図:1.70 V1.70\ \mathrm V で通電したときの電気エネルギー 7.34 kJ7.34\ \mathrm{kJ} の内訳。左の白い部分が Gibbs エネルギー変化として蓄えられ、斜線の部分(0.47 V0.47\ \mathrm V に相当)が熱になる。

最終答

設問(a-1) 標準起電力と標準反応 Gibbs エネルギー

E∘=1.23 VE^\circ=1.23\ \mathrm V、ΔrG∘=−4.75×102 kJ mol−1\Delta_\mathrm r G^\circ=-4.75\times10^{2}\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}(式(3)を書いたとおり、2 mol2\,\mathrm{mol} の H2O\mathrm{H_2O} が生じる反応1 mol あたり)。

設問(a-2) 活量が0.300、0.800のときの理論起電力

E≈1.21 VE\approx1.21\ \mathrm V(標準値 1.23 V1.23\ \mathrm V より約 17 mV17\ \mathrm{mV} 低い)。

設問(a-3) 温度係数 α\alpha と標準反応エントロピー

ΔrS∘=nFα=nF(dE∘dT)\Delta_\mathrm r S^\circ=nF\alpha=nF\Bigl(\dfrac{\mathrm dE^\circ}{\mathrm dT}\Bigr)。

設問(a-4) ΔrS∘\Delta_\mathrm r S^\circ と ΔrH∘\Delta_\mathrm r H^\circ の値

ΔrS∘=−327 J K−1 mol−1\Delta_\mathrm r S^\circ=-327\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}}、ΔrH∘=−572 kJ mol−1\Delta_\mathrm r H^\circ=-572\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}(反応(3)1 mol あたり)。

設問(b-1) 1.00 時間の電気分解に伴う Gibbs エネルギー変化

ΔG=+5.31 kJ\Delta G=+5.31\ \mathrm{kJ}(正の値で、水の分解は自発的に進まず、外部から仕事を与えて進める)。

設問(b-2) 電気エネルギーから化学エネルギーへの変換効率

η=0.724\eta=0.724(約 72.4 %72.4\,\%)。残りの約 2.03 kJ2.03\ \mathrm{kJ}(27.6 %27.6\,\%)は熱になる。

第5問 — 量子化学:s-trans-1,3-ブタジエンのヒュッケル分子軌道と対称性

量子化学:s-trans-1,3-ブタジエンのヒュッケル分子軌道と対称性の途中式・最終答をPDFで見る

化学IIの解答・解説PDF

2023〜2026年度(4年度) · ¥2,580

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年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(解説5項目)

    電気化学と滴定:過マンガン酸カリウムによる COD 測定 / 分子軌道と分光:酸素分子のπ*電子配置と電子状態 / 錯体化学:イリジウム錯体の立体異性とメタロセンの電子構造

  • 2025年度(解説5項目)

    錯体化学:Mo錯体の合成・ROMPとNi(II)アンミン錯体 / 有機合成:(±)-Norcaesalpinin MC の合成経路 / 有機化学:アズレンの合成と、ヨウ素・メチルリチウムとの反応

  • 2024年度(解説5項目)

    高分子化学:合成高分子のIRスペクトルと、ポリ酢酸ビニルのNMR・立体規則性 / 有機化学:ジテルペン (+)-cassaine の合成経路における各段階の反応 / 無機化学:コバルト錯体の立体異性と、コバルトカルボニルクラスター

  • 2023年度(このページ・解説5項目)

    有機化学:硫黄・窒素を含む化合物の反応と機構 / 有機合成:Dynemicin A の合成中間体 10 への経路 / 無機・錯体化学:チタン・ルテニウム・マンガン錯体

2023年度の出題内容

解説5項目

この5問の分野は化学2問・量子力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学硫黄・窒素を含む化合物の反応と機構—あり
第2問Dynemicin A の合成中間体 10 への経路—あり
第3問チタン・ルテニウム・マンガン錯体—あり
第4問化学水素・酸素電池と水の電気分解—あり
第5問量子力学s-trans-1,3-ブタジエンのヒュッケル分子軌道と対称性—あり

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
大阪大学の公式過去問PDF