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阪大 基礎工学研究科 物質創成専攻 化学工学I 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は化学2項目、熱・統計力学1項目、量子力学1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 有機化学:アルケンへの付加、求核置換、合成経路、Robinson 環形成

有機化学:アルケンへの付加、求核置換、合成経路、Robinson 環形成の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 無機化学:八面体錯体の配位子場分裂、d電子配置、ルビーの光吸収

無機化学:八面体錯体の配位子場分裂、d電子配置、ルビーの光吸収の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 熱力学:2成分系の気液平衡と共沸混合物

設問(a) 可変度

相律の数え方は次の通りである。系の示強変数は、TT、pp と、各相の成分の組成(xAx_{\mathrm A} と yAy_{\mathrm A}。xB=1−xAx_{\mathrm B}=1-x_{\mathrm A}、yB=1−yAy_{\mathrm B}=1-y_{\mathrm A} は従属)の合計 2+P(C−1)=42+P(C-1)=4 個である。これに対して、成分ごとに「液相の化学ポテンシャル = 気相の化学ポテンシャル」の式(成分 A と B で2本、一般に C(P−1)C(P-1) 本)が成り立つので、独立な変数は 4−2=24-2=2 個になる。一般式で書けば [2+P(C−1)]−C(P−1)=C−P+2[2+P(C-1)]-C(P-1)=C-P+2 である。

2個の選び方は一通りではないが、選んだ2つで残りが決まる必要がある。TT と pp を決めれば、沸点図・気液平衡図の点が定まり、xAx_{\mathrm A} と yAy_{\mathrm A} が決まる(ただし、その TT と pp で2相が共存できる範囲に限る)。TT を固定して pp を変える(b)以降の議論は、残りの可変度1を pp に使うことに当たる。可変度を3や1と答える誤りは、2相共存で化学ポテンシャルの等式が2本あることを忘れるか、純物質の相律 F=1−2+2=1F=1-2+2=1 と混同した結果である。

設問(b) 式(3)の導出

使う関係と条件

出発点は、相平衡の条件「各成分の化学ポテンシャルが両相で等しい」である。式(1)の μA∗(T,pA∗)\mu_{\mathrm A}^*(T,p_{\mathrm A}^{*}) は、TT における純物質 A の気液平衡(圧力 pA∗p_{\mathrm A}^{*})での化学ポテンシャルを、基準として使う量である。pA∗p_{\mathrm A}^{*} は TT だけで決まるので、TT 一定の微分では定数として扱える。この点が、式(3)の導出で ln⁡pA∗\ln p_{\mathrm A}^{*} と μA∗(T,pA∗)\mu_{\mathrm A}^*(T,p_{\mathrm A}^{*}) が消える理由になる。

vA∗v_{\mathrm A}^{*} が現れるのは、液体の純物質の化学ポテンシャルが圧力とともに増える割合が、モル体積に等しいからである。これは純物質の dG=V dp−S dT\mathrm{d}G=V\,\mathrm{d}p-S\,\mathrm{d}T をモル量で書いた式から出る。偏微分で TT を固定するのは、左辺の量(xAx_{\mathrm A}、γA\gamma_{\mathrm A}、yAy_{\mathrm A})が TT 固定の気液平衡では pp だけの関数(可変度1)になるからである。

検算と誤り

理想気体では μgas\mu^{\mathrm{gas}} の圧力依存は RTln⁡pRT\ln p なので、∂/∂p\partial/\partial p が RT/pRT/p になる。もし vA∗v_{\mathrm A}^{*} を気体のモル体積 RT/pRT/p と取り違えると右辺は 00 になり、式(3)にならない。RTln⁡pRT\ln p の微分を RTRT と書く誤りや、μA∗(T,p;liq)\mu_{\mathrm A}^*(T,p;\mathrm{liq}) の偏微分を −s-s(エントロピー)とする誤り(TT での微分と混同)もある。

設問(c) 式(4)の導出

近似の意味と大きさ

式(3)を pA∗p_{\mathrm A}^{*} から pp まで厳密に積分すると、ln⁡(xAγA/yA)=ln⁡(p/pA∗)−1RT∫pA∗pvA∗ dp′\ln(x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}/y_{\mathrm A})=\ln(p/p_{\mathrm A}^{*})-\dfrac1{RT}\displaystyle\int_{p_{\mathrm A}^{*}}^{p}v_{\mathrm A}^{*}\,\mathrm{d}p' となり、右辺の第2項が省略した補正(Poynting 補正)である。vA∗v_{\mathrm A}^{*} が圧力によらない(非圧縮性)とすると、この項は −vA∗(p−pA∗)/RT-v_{\mathrm A}^{*}(p-p_{\mathrm A}^{*})/RT に等しい。圧力が 1 bar 程度で液体のモル体積が 1.0×10−4 m3 mol−11.0\times10^{-4}\ \mathrm{m^3\,mol^{-1}}(仮定。有機液体ほどの大きさ)、T=300T=300 K とすると、補正は vA∗(p−pA∗)/RT=4.0×10−3v_{\mathrm A}^{*}(p-p_{\mathrm A}^{*})/RT=4.0\times10^{-3} で、式(4)の誤差は約 0.4\% にとどまる。同じ仮定で気相の理想気体の体積は RT/p=2.5×10−2 m3 mol−1RT/p=2.5\times10^{-2}\ \mathrm{m^3\,mol^{-1}} なので、vA∗/(RT/p)=4.0×10−3v_{\mathrm A}^{*}/(RT/p)=4.0\times10^{-3} で近似の条件が成り立っている。圧力が 100 bar のように高くなると、補正は約 0.40.4、つまり e−0.4≈0.67\mathrm{e}^{-0.4}\approx0.67 倍になり、無視できない。

積分定数の決め方

活量係数の定義式(2)から、xA=1x_{\mathrm A}=1(純成分)では γA=1\gamma_{\mathrm A}=1 になる。この規格化が積分定数を決める唯一の根拠である。積分路は、TT 一定のまま、純物質 A の端から目的の組成まで気液平衡の曲線に沿う。式(2)は純液体を基準にした定義なので、定数は −ln⁡pA∗-\ln p_{\mathrm A}^{*} になる。活量係数を xA→0x_{\mathrm A}\to0 で γA→1\gamma_{\mathrm A}\to1 とする基準(Henry 則基準)で定義し直すと、定数が pA∗p_{\mathrm A}^{*} から Henry 定数に変わり、式(4)の形ではなくなる。基準の取り違えが、この設問での誤りの主な原因である。

設問(d) 理想溶液は共沸混合物にならない

別の見方

式(4)と式(5)の比をとると、yA/xAyB/xB=pA∗pB∗\dfrac{y_{\mathrm A}/x_{\mathrm A}}{y_{\mathrm B}/x_{\mathrm B}}=\dfrac{p_{\mathrm A}^{*}}{p_{\mathrm B}^{*}} となる(理想溶液)。左辺は成分 A の B に対する比揮発度で、一定値 pA∗/pB∗p_{\mathrm A}^{*}/p_{\mathrm B}^{*} をとる。共沸では yA/xA=yB/xB=1y_{\mathrm A}/x_{\mathrm A}=y_{\mathrm B}/x_{\mathrm B}=1 なので比揮発度が 1 になるが、理想溶液では pA∗/pB∗≠1p_{\mathrm A}^{*}/p_{\mathrm B}^{*}\neq1 のままで、組成によらない。つまり気相はいつも揮発しやすい成分に富み、液相と等しい組成にならない。

全圧も確かめられる。p=xApA∗+xBpB∗=pB∗+(pA∗−pB∗)xAp=x_{\mathrm A} p_{\mathrm A}^{*}+x_{\mathrm B} p_{\mathrm B}^{*}=p_{\mathrm B}^{*}+(p_{\mathrm A}^{*}-p_{\mathrm B}^{*})x_{\mathrm A} は xAx_{\mathrm A} の1次式で、傾き pA∗−pB∗p_{\mathrm A}^{*}-p_{\mathrm B}^{*} は 0 でない。気液平衡の圧力に極値がないことが共沸のない理由である(共沸点は全圧が組成に対して極大か極小になる点で、Konovalov の法則と呼ばれる)。仮に pA∗=40p_{\mathrm A}^{*}=40 kPa、pB∗=60p_{\mathrm B}^{*}=60 kPa とすると、40<p<6040<p<60 kPa の範囲で yA/xA=pA∗/py_{\mathrm A}/x_{\mathrm A}=p_{\mathrm A}^{*}/p は 0.670.67 より大きく 11 より小さい(たとえば p=50p=50 kPa で 0.800.80)ので、1 にならない。

証明で外せない条件

xA≠0x_{\mathrm A}\neq0 と xB≠0x_{\mathrm B}\neq0 の確認が要る。xA=0x_{\mathrm A}=0 や xB=0x_{\mathrm B}=0 は純物質で、混合物ではないので、そこで 0=00=0 が成り立つことは共沸の定義に当たらない。割り算の前に xAx_{\mathrm A} と xBx_{\mathrm B} が 0 でないことを書かないと、証明に穴が残る。また、(c) の近似(vA∗≪RT/pv_{\mathrm A}^{*}\ll RT/p)のもとで成り立つ式(4)(5)を使う証明であることも、答案に書いておく。

設問(e) 共沸組成

モデルと使う条件

式(6)(7)は、過剰 Gibbs エネルギーを GE/RT=β xAxBG^{\mathrm E}/RT=\beta\,x_{\mathrm A} x_{\mathrm B}(1定数の Margules 式)とおいたときの活量係数で、β>0\beta>0 は同種分子どうしの引力が強く、混ぜると蒸気圧が上がる正のずれ、β<0\beta<0 は異種分子どうしの引力が強い負のずれを表す。共沸の条件は、液相と気相の組成が等しいことで、これを(c)で導いた式(4)(5)に入れると、γA\gamma_{\mathrm A} と γB\gamma_{\mathrm B} が pp と純物質の蒸気圧だけで決まる。共通の pp を消去する(比をとる)のが、組成だけの式を得る鍵である。

図と数値で確かめる

仮に pA∗=40p_{\mathrm A}^{*}=40 kPa、pB∗=60p_{\mathrm B}^{*}=60 kPa、β=1.2\beta=1.2 とすると、xA=0.5+ln⁡(40/60)/(2×1.2)=0.331x_{\mathrm A}=0.5+\ln(40/60)/(2\times1.2)=0.331 になる。このとき γA=e1.2×0.6692=1.71\gamma_{\mathrm A}=\mathrm{e}^{1.2\times0.669^2}=1.71、γB=e1.2×0.3312=1.14\gamma_{\mathrm B}=\mathrm{e}^{1.2\times0.331^2}=1.14 で、pA∗γA=pB∗γB=68.4p_{\mathrm A}^{*}\gamma_{\mathrm A}=p_{\mathrm B}^{*}\gamma_{\mathrm B}=68.4 kPa(共沸圧力)と一致する。全圧 p=xAγApA∗+xBγBpB∗p=x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A} p_{\mathrm A}^{*}+x_{\mathrm B}\gamma_{\mathrm B} p_{\mathrm B}^{*} を xAx_{\mathrm A} の関数として数値的に微分すると、xA=0.331x_{\mathrm A}=0.331 で dp/dxA=0\mathrm{d}p/\mathrm{d}x_{\mathrm A}=0(極大)になり、そこで yA=xAy_{\mathrm A}=x_{\mathrm A} である。

温度一定の圧力・組成図。pA*=40 kPa、pB*=60 kPa、β=1.2と仮定し、横軸はAのモル分率。液相線(実線)と気相線(破線)が圧力の極大となる共沸点で接し、上側が液相、下側が気相。


*[3pt] 自作図:pA∗=40p_{\mathrm A}^{*}=40 kPa、pB∗=60p_{\mathrm B}^{*}=60 kPa、β=1.2\beta=1.2 の場合の TT 一定の圧力・組成図(これらの数値は説明用の仮定)。液相線と気相線が極大の共沸点で接する

符号と対称性の確認

pA∗=pB∗p_{\mathrm A}^{*}=p_{\mathrm B}^{*} なら対数が 0 で、β\beta によらず xA=1/2x_{\mathrm A}=1/2 になる(A と B を入れ替えても同じ式なので当然である)。β→±∞\beta\to\pm\infty でも xA→1/2x_{\mathrm A}\to1/2 である。一方、ln⁡\ln の中を pB∗/pA∗p_{\mathrm B}^{*}/p_{\mathrm A}^{*} と取り違えて符号を逆にすると、上の例で xA=0.669x_{\mathrm A}=0.669 になり、A と B を取り違えた位置に共沸点が出る。xA+xB=1x_{\mathrm A}+x_{\mathrm B}=1 を使わずに xB2−xA2x_{\mathrm B}^2-x_{\mathrm A}^2 を残すのも、解けなくなる原因である。

設問(f) 共沸が起こる β\beta の範囲

不等式の読み方

β>0\beta>0 なら、0<xA<10<x_{\mathrm A}<1 から −β<L<β-\beta<L<\beta が出る。β<0\beta<0 では、2β2\beta で割ると不等号が反転するが、結果は −∣β∣<L<∣β∣-|\beta|<L<|\beta| と同じ形になる。共沸の有無は、β\beta の大きさ(相互作用の強さ)と、純物質の蒸気圧の比の対数(揮発性の差)の比べ合いで決まる。2成分の揮発性が近い(LL が小さい)ほど、小さな ∣β∣|\beta| でも共沸が起こる。∣β∣=∣L∣|\beta|=|L| の境界では、共沸組成が純物質の端(xA=0x_{\mathrm A}=0 か 11)に達し、∣β∣|\beta| が ∣L∣|L| を下回ると共沸点は消える。

符号と数値例

β>0\beta>0 では全圧が組成に対して極大(最大蒸気圧、最低沸点の共沸)、β<0\beta<0 では極小(最低蒸気圧、最高沸点の共沸)になる。(e) の数値例(pA∗=40p_{\mathrm A}^{*}=40 kPa、pB∗=60p_{\mathrm B}^{*}=60 kPa)では ∣L∣=ln⁡1.5=0.405|L|=\ln1.5=0.405 で、β=0.35\beta=0.35 や 0.400.40 では xA=−0.079x_{\mathrm A}=-0.079、−0.007-0.007 と範囲外になって共沸はなく、β=0.41\beta=0.41 で xA=0.0055x_{\mathrm A}=0.0055、β=0.50\beta=0.50 で xA=0.0945x_{\mathrm A}=0.0945 と範囲に入って共沸が現れる。β=−0.41\beta=-0.41 では xA=0.9945x_{\mathrm A}=0.9945 で、最低蒸気圧の共沸が純成分 A の側に現れる。いずれも、圧力の極値を数値的に探した結果と一致する。

対数の落とし穴と範囲の端

β>0\beta>0 の側だけを答えて、β<0\beta<0 の場合(最高沸点型の共沸)を落とす誤りが多い。また、β>pA∗/pB∗\beta>p_{\mathrm A}^{*}/p_{\mathrm B}^{*} のように対数をとらずに書く誤りは、(e) の式に ln⁡(pA∗/pB∗)\ln(p_{\mathrm A}^{*}/p_{\mathrm B}^{*}) が現れることを見落とした結果である。等号を含める(∣β∣≥∣L∣|\beta|\ge|L|)と、xA=0x_{\mathrm A}=0 や 11 の純物質が共沸組成になり、混合物の条件に反する。

解答

設問(a) 可変度

Gibbs の相律は、成分数 CC、相の数 PP のとき、可変度 FF が F=C−P+2 F=C-P+2 で与えられる。2成分(C=2C=2)の気液平衡は2相(P=2P=2)なので、F=2−2+2=2F=2-2+2=2 になる。独立に設定できる示強変数は2個で、たとえば TT と xAx_{\mathrm A}、あるいは TT と pp である。残りの変数(pp と yAy_{\mathrm A}、あるいは xAx_{\mathrm A} と yAy_{\mathrm A})は、気液平衡の条件から決まる。

設問(b) 式(3)の導出

成分 A の化学ポテンシャルは、液相と気相で等しい。式(1)と式(2)を等しいとおくと μA∗(T,pA∗)+RTln⁡p yApA∗=μA∗(T,p;liq)+RTln⁡(xAγA). \mu_{\mathrm A}^*(T,p_{\mathrm A}^{*})+RT\ln\frac{p\,y_{\mathrm A}}{p_{\mathrm A}^{*}} =\mu_{\mathrm A}^*(T,p;\mathrm{liq})+RT\ln(x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}). ln⁡(xAγA)\ln(x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}) と ln⁡yA\ln y_{\mathrm A} を左右に集めて整理すると RTln⁡xAγAyA=RTln⁡p−RTln⁡pA∗+μA∗(T,pA∗)−μA∗(T,p;liq). RT\ln\frac{x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}}{y_{\mathrm A}} =RT\ln p-RT\ln p_{\mathrm A}^{*}+\mu_{\mathrm A}^*(T,p_{\mathrm A}^{*})-\mu_{\mathrm A}^*(T,p;\mathrm{liq}). TT 一定のまま pp で偏微分する。純物質 A の蒸気圧 pA∗p_{\mathrm A}^{*} と、そこでの化学ポテンシャル μA∗(T,pA∗)\mu_{\mathrm A}^*(T,p_{\mathrm A}^{*}) は TT だけの関数なので、pp で微分すると 00 になる。純物質のモル Gibbs エネルギーについて dμ∗=−s dT+v dp\mathrm{d}\mu^*=-s\,\mathrm{d}T+v\,\mathrm{d}p が成り立つので、(∂μA∗(T,p;liq)/∂p)T=vA∗(T,p;liq)(\partial\mu_{\mathrm A}^*(T,p;\mathrm{liq})/\partial p)_T=v_{\mathrm A}^{*}(T,p;\mathrm{liq}) である。したがって RT(∂∂pln⁡xAγAyA)T=RTp−vA∗(T,p;liq) RT\left(\frac{\partial}{\partial p}\ln\frac{x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}}{y_{\mathrm A}}\right)_T=\frac{RT}{p}-v_{\mathrm A}^{*}(T,p;\mathrm{liq}) となり、式(3)が得られる。

設問(c) 式(4)の導出

vA∗v_{\mathrm A}^{*} が RT/pRT/p に比べて無視できるとき、式(3)は (∂∂pln⁡xAγAyA)T=1p \left(\frac{\partial}{\partial p}\ln\frac{x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}}{y_{\mathrm A}}\right)_T=\frac1p となる。TT 一定で pp について積分すると ln⁡xAγAyA=ln⁡p+C(T) \ln\frac{x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}}{y_{\mathrm A}}=\ln p+C(T) である。積分定数 C(T)C(T) は、純物質 A の点(xA=yA=1x_{\mathrm A}=y_{\mathrm A}=1、p=pA∗p=p_{\mathrm A}^{*})で決める。式(2)から、xA=1x_{\mathrm A}=1 のとき μA=μA∗\mu_{\mathrm A}=\mu_{\mathrm A}^* で γA=1\gamma_{\mathrm A}=1 なので、左辺は ln⁡(1⋅1/1)=0\ln(1\cdot1/1)=0 になり、0=ln⁡pA∗+C0=\ln p_{\mathrm A}^{*}+C から C=−ln⁡pA∗C=-\ln p_{\mathrm A}^{*} である。したがって ln⁡xAγAyA=ln⁡ppA∗⟹xAγA=p yApA∗. \ln\frac{x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}}{y_{\mathrm A}}=\ln\frac{p}{p_{\mathrm A}^{*}} \quad\Longrightarrow\quad x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}=\frac{p\,y_{\mathrm A}}{p_{\mathrm A}^{*}}.

設問(d) 理想溶液は共沸混合物にならない

理想溶液では γA=γB=1\gamma_{\mathrm A}=\gamma_{\mathrm B}=1 である。式(4)と式(5)は xA=p yApA∗,xB=p yBpB∗ x_{\mathrm A}=\frac{p\,y_{\mathrm A}}{p_{\mathrm A}^{*}},\qquad x_{\mathrm B}=\frac{p\,y_{\mathrm B}}{p_{\mathrm B}^{*}} となる。共沸混合物とは、液相と気相の組成が等しい混合物(xA=yAx_{\mathrm A}=y_{\mathrm A}、xB=yBx_{\mathrm B}=y_{\mathrm B})で、混合物なので 0<xA<10<x_{\mathrm A}<1(xAx_{\mathrm A}、xBx_{\mathrm B} はともに 0 でない)とする。第1式に xA=yAx_{\mathrm A}=y_{\mathrm A} を入れ、xA≠0x_{\mathrm A}\neq0 で割ると p=pA∗p=p_{\mathrm A}^{*} になる。第2式に xB=yBx_{\mathrm B}=y_{\mathrm B} を入れ、xB≠0x_{\mathrm B}\neq0 で割ると p=pB∗p=p_{\mathrm B}^{*} になる。したがって pA∗=pB∗p_{\mathrm A}^{*}=p_{\mathrm B}^{*} が必要だが、これは仮定 pA∗≠pB∗p_{\mathrm A}^{*}\neq p_{\mathrm B}^{*} に反する。よって理想溶液は共沸混合物にならない。

設問(e) 共沸組成

共沸では xA=yAx_{\mathrm A}=y_{\mathrm A}、xB=yBx_{\mathrm B}=y_{\mathrm B} である。式(4)と式(5)から γA=ppA∗,γB=ppB∗ \gamma_{\mathrm A}=\frac{p}{p_{\mathrm A}^{*}},\qquad\gamma_{\mathrm B}=\frac{p}{p_{\mathrm B}^{*}} となり、辺々の比をとると γAγB=pB∗pA∗⟹ln⁡γA−ln⁡γB=ln⁡pB∗pA∗. \frac{\gamma_{\mathrm A}}{\gamma_{\mathrm B}}=\frac{p_{\mathrm B}^{*}}{p_{\mathrm A}^{*}} \quad\Longrightarrow\quad \ln\gamma_{\mathrm A}-\ln\gamma_{\mathrm B}=\ln\frac{p_{\mathrm B}^{*}}{p_{\mathrm A}^{*}}. 式(6)(7)を代入し、xA+xB=1x_{\mathrm A}+x_{\mathrm B}=1 を使うと β(xB2−xA2)=β(xB−xA)(xB+xA)=β(1−2xA)=ln⁡pB∗pA∗ \beta(x_{\mathrm B}^2-x_{\mathrm A}^2)=\beta(x_{\mathrm B}-x_{\mathrm A})(x_{\mathrm B}+x_{\mathrm A})=\beta(1-2x_{\mathrm A})=\ln\frac{p_{\mathrm B}^{*}}{p_{\mathrm A}^{*}} である。これを xAx_{\mathrm A} について解くと xA=12−12βln⁡pB∗pA∗=12+12βln⁡pA∗pB∗(β≠0). x_{\mathrm A}=\frac12-\frac1{2\beta}\ln\frac{p_{\mathrm B}^{*}}{p_{\mathrm A}^{*}}=\frac12+\frac1{2\beta}\ln\frac{p_{\mathrm A}^{*}}{p_{\mathrm B}^{*}}\qquad(\beta\neq0).

設問(f) 共沸が起こる β\beta の範囲

共沸混合物が実際に存在するには、(e)で得た xAx_{\mathrm A} が 0<xA<10<x_{\mathrm A}<1 を満たす必要がある。L=ln⁡(pA∗/pB∗)L=\ln(p_{\mathrm A}^{*}/p_{\mathrm B}^{*}) とおくと、xA=12+L2βx_{\mathrm A}=\dfrac12+\dfrac{L}{2\beta} なので 0<12+L2β<1⟺−12<L2β<12⟺∣L∣∣β∣<1 0<\frac12+\frac{L}{2\beta}<1 \quad\Longleftrightarrow\quad -\frac12<\frac{L}{2\beta}<\frac12 \quad\Longleftrightarrow\quad \frac{|L|}{|\beta|}<1 である。したがって ∣β∣>∣L∣|\beta|>|L|、すなわち β>∣ln⁡pA∗pB∗∣またはβ<−∣ln⁡pA∗pB∗∣ \beta>\left|\ln\frac{p_{\mathrm A}^{*}}{p_{\mathrm B}^{*}}\right|\quad\text{または}\quad\beta<-\left|\ln\frac{p_{\mathrm A}^{*}}{p_{\mathrm B}^{*}}\right| のときに共沸が起こる。

最終答

設問(a) 可変度

可変度は 2。独立に設定できるのは、たとえば TT と pp(または TT と xAx_{\mathrm A})の2つ。

設問(b) 式(3)の導出

式(3)が成り立つ。左辺の xAx_{\mathrm A}、γA\gamma_{\mathrm A}、yAy_{\mathrm A} は、TT 一定の気液平衡で pp とともに変わる量である。

設問(c) 式(4)の導出

vA∗≪RT/pv_{\mathrm A}^{*}\ll RT/p のとき、式(4) xAγA=pyA/pA∗x_{\mathrm A}\gamma_{\mathrm A}=py_{\mathrm A}/p_{\mathrm A}^{*} が成り立つ。

設問(d) 理想溶液は共沸混合物にならない

理想溶液で共沸するには pA∗=pB∗p_{\mathrm A}^{*}=p_{\mathrm B}^{*} が必要で、pA∗≠pB∗p_{\mathrm A}^{*}\neq p_{\mathrm B}^{*} とは両立しない。よって共沸混合物にならない。

設問(e) 共沸組成

xA=12+12βln⁡pA∗pB∗\displaystyle x_{\mathrm A}=\frac12+\frac{1}{2\beta}\ln\frac{p_{\mathrm A}^{*}}{p_{\mathrm B}^{*}}(β≠0\beta\neq0)。共沸圧力は p=pA∗ eβ(1−xA)2p=p_{\mathrm A}^{*}\,\mathrm{e}^{\beta(1-x_{\mathrm A})^2}。

設問(f) 共沸が起こる β\beta の範囲

共沸しうる範囲は ∣β∣>∣ln⁡(pA∗/pB∗)∣|\beta|>\left|\ln(p_{\mathrm A}^{*}/p_{\mathrm B}^{*})\right|(β>∣ln⁡(pA∗/pB∗)∣\beta>|\ln(p_{\mathrm A}^{*}/p_{\mathrm B}^{*})| または β<−∣ln⁡(pA∗/pB∗)∣\beta<-|\ln(p_{\mathrm A}^{*}/p_{\mathrm B}^{*})|)。

第4問 — 量子化学:一次元の箱の中の電子と共役 π 電子系

量子化学:一次元の箱の中の電子と共役 π 電子系の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 電気化学:水素電極と銀・塩化銀電極からなる電池

電気化学:水素電極と銀・塩化銀電極からなる電池の途中式・最終答をPDFで見る

化学工学Iの解答・解説PDF

2023〜2026年度(4年度) · ¥2,580

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年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(解説5項目)

    有機化学:反応剤の選択と合成経路の設計 / 無機化学:分子構造・Lewis酸塩基・配位化合物 / 熱力学:van der Waals気体の内部エネルギー・エントロピー・断熱変化

  • 2025年度(このページ・解説5項目)

    有機化学:アルケンへの付加、求核置換、合成経路、Robinson 環形成 / 無機化学:八面体錯体の配位子場分裂、d電子配置、ルビーの光吸収 / 熱力学:2成分系の気液平衡と共沸混合物

  • 2024年度(解説5項目)

    有機化学:求核置換の立体化学、合成経路、ピリジン、分子内 Michael 反応とアルドール反応 / 無機化学:NO の分子軌道、金属カルボニル、錯イオンの形と色 / 熱力学:連鎖則と Maxwell の関係、水の熱膨張、断熱変化の圧力応答

  • 2023年度(解説6項目)

    化学工学:円管の Hagen--Poiseuille 流れと、管径の等しい配管網の流量配分 / 有機化学:(R)-2-オクタノールの SN2 反応、置換ベンゼンとシス-ジオールなどの合成経路、シクロヘキセンとベンゼンの反応性、Robinson 環形成 / 無機化学:分子の電子構造と点群、鉄(II)錯体のスピン状態と配位子場安定化エネルギー

2025年度の出題内容

解説5項目

この5問の分野は化学2問・熱・統計力学1問・量子力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学アルケンへの付加、求核置換、合成経路、Robinson 環形成—あり
第2問化学八面体錯体の配位子場分裂、d電子配置、ルビーの光吸収—あり
第3問熱・統計力学2成分系の気液平衡と共沸混合物使う関係と条件 / 検算と誤りあり
第4問量子力学一次元の箱の中の電子と共役 π 電子系—あり
第5問水素電極と銀・塩化銀電極からなる電池—あり

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 5問 → 2025年度 5問
2024年度の解答例

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
大阪大学の公式過去問PDF