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京大 経営管理教育部(専門職学位課程) 数学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野は確率・統計1問です。解説はすべて公開し、途中式と最終答は解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 確率・統計と最適化:ポアソン過程,最小二乗法,ラグランジュ乗数法

方針

設問1は4つの小問が独立ではなく,1) の級数展開を 2) の平均の計算に,2) の確率関数を 3) の初生起時間に,3) までの設定を 4) の数値計算に,という順に使う構成になっている。したがって 1) で ∑μk/k!=eμ\sum\mu^{k}/k!=e^{\mu} を確立し,2) では「x/x!=1/(x−1)!x/x!=1/(x-1)! と約分して添字をずらす」という一手で片づける。この一手が書けるかどうかがポアソン分布の計算問題全体の分かれ目である。

1) をどこまで書くか

「マクローリン級数展開を用いて示せ」なので,f(k)(0)=1f^{(k)}(0)=1 を確認して係数を決める部分は必須である。厳密には,形式的に級数を書くだけでは「その級数が eμe^{\mu} に等しい」ことは言えないので,剰余項が 00 に収束することまで触れておきたい。時間がなければ「∣μ∣n/n!→0|\mu|^{n}/n!\to0 より剰余項は 00 に収束する」の一文でもよい。

3) の空欄の埋め方

空欄①を「一回も生起しない」と書くと逆になる。T≤tT\le t は「tt までに起きてしまった」ことなので,起きた回数は1回以上である。この誤りを避けるには,②で P(X=0)=e−λtP(X=0)=e^{-\lambda t} を求めた後に FT(t)=1−e−λtF_T(t)=1-e^{-\lambda t} と余事象で結ぶ流れを先に思い描くとよい。得られた FTF_T を微分すると密度 fT(t)=λe−λtf_T(t)=\lambda e^{-\lambda t} となり,TT が母数 λ\lambda の指数分布に従うこと,その平均が 1/λ1/\lambda であることが分かる。ポアソン過程の生起回数がポアソン分布,生起間隔が指数分布という対応は,待ち行列や信頼性の議論の出発点になる。

4) の失点しやすい点

最大の落とし穴は λ\lambda の単位である。「1日あたり12回」をそのまま使って λt=12×2=24\lambda t=12\times2=24 とすると誤りで,稼働時間が8時間と与えられているので λ=12/8=1.5\lambda=12/8=1.5 回/時間とする。もう一つは「5回以上」の扱いで,P(X≥5)=1−P(X≤4)P(X\ge5)=1-P(X\le4) と余事象をとる。P(X≤5)P(X\le5) を引くと x=5x=5 の項まで除いてしまう。

検算

与えられた2つの数値は (e1.5)2=4.482=20.07≒20.1=e3\bigl(e^{1.5}\bigr)^{2}=4.48^{2}=20.07\fallingdotseq20.1=e^{3} と整合しており,λt=3\lambda t=3 という読み取りが正しいことの裏づけになる。また平均が3回の分布で「5回以上」は平均よりやや右の裾なので,確率が 0.20.2 弱になるのは妥当である。仮に λt=1.5\lambda t=1.5(1時間分)と誤読すれば P(X≥5)P(X\ge5) は 0.020.02 程度まで下がり,λt=24\lambda t=24 と誤読すればほぼ 11 になるので,得られた 0.1850.185 という桁感からも読み取りの妥当性を確認できる。

設問2 2次曲線の最小二乗あてはめ

最小であることの確認

一階条件だけでは停留点しか言えないので,答案には二階の条件も一言添えたい。XX を第 ii 行が (xi2, xi, 1)(x_i^{2},\,x_i,\,1) である N×3N\times3 行列,y=(y1,…,yN)⊤\boldsymbol{y}=(y_1,\dots,y_N)^{\top},β=(a,b,c)⊤\boldsymbol{\beta}=(a,b,c)^{\top} とすると S=∥y−Xβ∥2S=\|\boldsymbol{y}-X\boldsymbol{\beta}\|^{2} であり,ヘッセ行列は ∇2S=2X⊤X \nabla^{2}S=2X^{\top}X で,任意の v\boldsymbol{v} に対し v⊤X⊤Xv=∥Xv∥2≥0\boldsymbol{v}^{\top}X^{\top}X\boldsymbol{v}=\|X\boldsymbol{v}\|^{2}\ge0 だから半正定値である。よって SS は凸関数で,停留点は大域的最小点である。正規方程式は X⊤Xβ=X⊤yX^{\top}X\boldsymbol{\beta}=X^{\top}\boldsymbol{y} と同じもので,上の行列が X⊤XX^{\top}X,右辺が X⊤yX^{\top}\boldsymbol{y} にあたる。

解の一意性

X⊤XX^{\top}X が正則であるためには XX の列が一次独立であること,すなわち x1,…,xNx_1,\dots,x_N のうち相異なる値が3個以上あることが必要十分である。相異なる xx が2個以下なら,その点を通る2次曲線は無数にあり a,b,ca,b,c は定まらない。答案では「N≥3N\ge3 かつ xix_i に相異なる値が3個以上ある」と条件を書いておくと丁寧である。

答案の書き方

「定式化せよ」「求めよ」という指示なので,SS の式と3本の連立方程式を書けば要件を満たす。ただし「目的関数が最適化される条件から」とあるので,偏微分して 00 とおく過程は必ず書く。∂S/∂a\partial S/\partial a を計算する際に合成関数の微分で −xi2-x_i^{2} が出ることを明示すると,係数 ∑xi4\sum x_i^{4} の由来が採点者に伝わる。

この設問が試していること

残差を「yy 方向の差」ととる非対称性(曲線までの垂直距離ではない)と,パラメータ a,b,ca,b,c について線形であるために解が連立一次方程式に帰着するという構造の理解である。あてはめる曲線が2次でも,未知数の入り方が線形なので線形回帰の枠組みで扱えることが要点になる。

設問3 ラグランジュの未定乗数法による最小化・最大化

方針

どちらの小問も「制約付き最適化」に翻訳してからラグランジュ乗数法を機械的に適用する。1) は距離そのものではなく距離の2乗を目的関数にとるのが定石で,平方根の微分を避けられ,最小点は同じである。2) は対称性から第1象限の頂点だけを変数にとり,面積を 4xy4xy と書く。この「変数の置き方」が決まれば,あとは一階条件2本と制約1本の連立になる。

1) の別解と検算

垂線の足は,法線ベクトル n=(2,5,−3)\boldsymbol{n}=(2,5,-3) を用いて (x,y,z)=(1,−3,4)+t n(x,y,z)=(1,-3,4)+t\,\boldsymbol{n} とおき,平面の式に代入して tt を定めても求まる。実際 2(1+2t)+5(−3+5t)−3(4−3t)=132(1+2t)+5(-3+5t)-3(4-3t)=13 から −25+38t=13-25+38t=13,t=1t=1 となり (3,2,1)(3,2,1) を得る。一階条件から出た λ\lambda と tt の関係は λ=2t\lambda=2t である。検算としては,(i) 得られた点 (3,2,1)(3,2,1) が平面上にあること 2⋅3+5⋅2−3⋅1=132\cdot3+5\cdot2-3\cdot1=13,(ii) 差ベクトル (3,2,1)−(1,−3,4)=(2,5,−3)(3,2,1)-(1,-3,4)=(2,5,-3) が法線ベクトルに平行であること,(iii) 距離が点と平面の距離の公式 d=∣2⋅1+5⋅(−3)−3⋅4−13∣22+52+(−3)2=3838=38 d=\frac{|2\cdot1+5\cdot(-3)-3\cdot4-13|}{\sqrt{2^{2}+5^{2}+(-3)^{2}}} =\frac{38}{\sqrt{38}}=\sqrt{38} と一致すること,の3点をすべて確かめられる。

2) の別解

x=3cos⁡θx=3\cos\theta,y=2sin⁡θy=2\sin\theta(0<θ<π/20<\theta<\pi/2)と媒介変数表示すると A=4⋅3cos⁡θ⋅2sin⁡θ=12sin⁡2θA=4\cdot3\cos\theta\cdot2\sin\theta=12\sin2\theta となり,θ=π/4\theta=\pi/4 で最大値 1212 をとる。このとき x=3/2x=3/\sqrt2,y=2y=\sqrt2 で本解と一致する。一般に長半径 aa,短半径 bb の楕円に内接する長方形の最大面積は 2ab2ab であり,ここでは 2⋅3⋅2=122\cdot3\cdot2=12 となる。円(a=ba=b)のとき最大長方形が正方形になることの自然な拡張である。

失点しやすい点

2) で「面積 =xy=xy」と書いてしまう誤りが多い。頂点が第1象限の (x,y)(x,y) なら辺は 2x2x と 2y2y なので面積は 4xy4xy である。もっとも,最大化する x,yx,y の値自体は定数倍によって変わらないので,xyxy を最大化しても頂点の座標は正しく求まる。答えの「面積」を答える段階で 44 倍を忘れると失点する。また 1) で制約を 2x+5y−3z=132x+5y-3z=13 のまま L=f−λgL=f-\lambda g の gg に代入し忘れる,符号を L=f+λgL=f+\lambda g ととって λ\lambda の符号がずれる,といった事故もあるが,λ\lambda の符号は最終的な座標に影響しないので,一貫していれば問題ない。

この設問が試していること

ラグランジュ乗数法は「制約付きの最適化を,未定乗数を1つ増やす代わりに無制約の停留点問題に変える」手法である。1) は初等幾何(正射影)で解けるものを,2) は媒介変数表示で解けるものを,あえて乗数法で処理させることで,手法の適用手順そのものを確認している。したがって答案では,ラグランジュ関数を明示し,一階条件を書き,制約と連立して解く,という3段階を省略せずに示すことが求められている。

確率・統計と最適化:ポアソン過程,最小二乗法,ラグランジュ乗数法の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 線形代数と微分積分:逆行列,行列のべき乗,積分,微分方程式

方針

「正則であれば」という条件つきの出題なので,2つのうち少なくとも一方は正則でないことを疑ってかかる。3次なら行列式を直接計算するのが速く,4次なら余因子展開よりも [ B∣E ][\,B\mid E\,] の掃き出しのほうが確実である。掃き出しの途中で左半分に零行が現れれば正則でないと判定でき,最後まで進めば逆行列がそのまま得られるので,判定と計算を一度にすませられる。

整数のまま計算する工夫

BB の (1,1)(1,1) 成分 −4-4 をそのまま軸にすると分数が大量に出る。上の解答では,先に「第4行+2×+2\times第3行=(1,1,3,−1)=(1,1,3,-1)」という先頭が 11 の行を作ってから第1行に移した。同様に第2列でも「第2行++第3行=(0,1,−13,5)=(0,1,-13,5)」で軸を 11 にしている。第3列以降は軸を 11 にできないので,残った 2×22\times2 ブロックの逆行列を使って2行をまとめて処理した。det⁡B=1\det B=1 なので逆行列の成分がすべて整数になり,途中でも分数を出さずにすむ。

検算

BB−1=E4B B^{-1}=E_4 を全部確かめる必要はなく,1〜2成分だけ確認すれば十分である。第1行と第1列の内積は (−4)⋅62+(−7)⋅(−45)+(−1)⋅(−20)+2⋅(−43)=−248+315+20−86=1, (-4)\cdot62+(-7)\cdot(-45)+(-1)\cdot(-20)+2\cdot(-43)=-248+315+20-86=1, 第1行と第2列の内積は (−4)⋅65+(−7)⋅(−47)+(−1)⋅(−21)+2⋅(−45)=−260+329+21−90=0(-4)\cdot65+(-7)\cdot(-47)+(-1)\cdot(-21)+2\cdot(-45)=-260+329+21-90=0 で,どちらも単位行列の対応する成分に一致する。また,B−1B^{-1} の成分がすべて整数であることは det⁡B=±1\det B=\pm1 を意味し,実際に計算すると det⁡B=1\det B=1 である。

失点しやすい点

1) で det⁡A=0\det A=0 を見落として逆行列の公式に代入すると,途中で 00 除算になって行き詰まる。行列式が 00 のときは「正則でないので逆行列は存在しない」と結論として書くことが要求されている。設問文が「正則であればその逆行列を求めよ」なので,判定結果を明示しない答案は減点される。

設問2 重解をもつ2次行列のべき乗と和

2) の別解(冪零行列への分解)

N=A−2E2=(1−11−1)N=A-2E_2=\begin{pmatrix}1&-1\\1&-1\end{pmatrix} とおくと N2=ON^{2}=O である。2E22E_2 と NN は可換だから二項定理が使え,N2N^{2} 以降が消えて An=(2E2+N)n=2nE2+n 2 n−1N=2 n−1(2E2+nN)=2 n−1(n+2−nn−n+2) A^{n}=(2E_2+N)^{n}=2^{n}E_2+n\,2^{\,n-1}N =2^{\,n-1}\bigl(2E_2+nN\bigr) =2^{\,n-1}\begin{pmatrix}n+2&-n\\ n&-n+2\end{pmatrix} と,帰納法を使わずに公式そのものを導ける。「示しなさい」という設問なので帰納法で十分だが,この分解を知っていると 4) の計算も楽になる。固有値が重解で対角化できない行列は,このように「スカラー行列+冪零行列」に分けるのが定石である。

4) の別解(直接和をとる)

Ak=2 k−1(2E2+kN)A^{k}=2^{\,k-1}(2E_2+kN) を k=1,…,nk=1,\dots,n で足すと S=2E2∑k=1n2 k−1+N∑k=1nk 2 k−1=(2 n+1−2)E2+{(n−1)2 n+1}N S=2E_2\sum_{k=1}^{n}2^{\,k-1}+N\sum_{k=1}^{n}k\,2^{\,k-1} =\bigl(2^{\,n+1}-2\bigr)E_2+\bigl\{(n-1)2^{\,n}+1\bigr\}N となる。ここで ∑k=1n2 k−1=2n−1\sum_{k=1}^{n}2^{\,k-1}=2^{n}-1,∑k=1nk 2 k−1=(n−1)2n+1\sum_{k=1}^{n}k\,2^{\,k-1}=(n-1)2^{n}+1 を用いた(後者は ∑kxk−1\sum kx^{k-1} を等比級数の微分から求めるか,T=∑k2k−1T=\sum k2^{k-1} と 2T2T の差をとって導く)。成分を書き下すと本解と一致する。

検算

n=1n=1 では S=AS=A でなければならない。公式に n=1n=1 を入れると (2⋅2−12⋅0−12⋅0+12⋅2−3)=(3−111)=A\begin{pmatrix}2\cdot2-1&2\cdot0-1\\ 2\cdot0+1&2\cdot2-3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}3&-1\\1&1\end{pmatrix}=A で一致する。 n=2n=2 では A2=2(4−220)=(8−440)A^{2}=2\begin{pmatrix}4&-2\\2&0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}8&-4\\4&0\end{pmatrix} だから S=A+A2=(11−551)S=A+A^{2}=\begin{pmatrix}11&-5\\5&1\end{pmatrix} で,公式の値 (4⋅3−14⋅(−1)−14⋅1+14⋅1−3)=(11−551)\begin{pmatrix}4\cdot3-1&4\cdot(-1)-1\\ 4\cdot1+1&4\cdot1-3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}11&-5\\5&1\end{pmatrix} とも一致する。対角和で確かめてもよく,tr⁡Ak=2 k−1{(k+2)+(−k+2)}=2 k+1\operatorname{tr}A^{k}=2^{\,k-1}\{(k+2)+(-k+2)\}=2^{\,k+1} より tr⁡S=∑k=1n2 k+1=2 n+2−4\operatorname{tr}S=\sum_{k=1}^{n}2^{\,k+1}=2^{\,n+2}-4 で,上の SS の対角和 {2 n(n+1)−1}+{2 n(3−n)−3}=2 n+2−4\{2^{\,n}(n+1)-1\}+\{2^{\,n}(3-n)-3\}=2^{\,n+2}-4 と一致する。

失点しやすい点

1) で「固有値が重解だから固有ベクトルも2本ある」と誤解しないこと。rank⁡(A−2E2)=1\operatorname{rank}(A-2E_2)=1 なので固有空間は1次元で,独立な固有ベクトルは1本しかとれない。4) では,スカラーの等比数列の和の公式 a(rn−1)r−1\frac{a(r^{n}-1)}{r-1} を行列にそのまま持ち込むと「行列で割る」ことになり不正確である。A−E2A-E_2 が正則であることを 3) で確かめたうえで,右から逆行列を掛ける,と書くのが正しい。3) がわざわざ独立の小問として置かれているのは,この一手を用意させるためである。

設問3 無理関数の不定積分

置換の選び方

1−x2\sqrt{1-x^{2}} があるので x=sin⁡θx=\sin\theta が第一候補だが,本問はさらに (x+1)(x+1) という1次因子で割られている。この形は 1−x1+x\sqrt{\dfrac{1-x}{1+x}} を新変数にとると分母・分子がきれいに消える。より一般に 1(x−α)2次式\dfrac{1}{(x-\alpha)\sqrt{\text{2次式}}} の形は u=1x−αu=\dfrac{1}{x-\alpha} とおくと有理化される(オイラーの置換の一種)。実際 u=1x+1u=\dfrac{1}{x+1} とおくと 2u−1=1−x1+x2u-1=\dfrac{1-x}{1+x},被積分関数は −du2u−1-\dfrac{du}{\sqrt{2u-1}} に化け,同じ答え −2u−1+C-\sqrt{2u-1}+C を得る。

別解(三角置換)

x=sin⁡θx=\sin\theta(−π/2<θ<π/2-\pi/2<\theta<\pi/2)とすると dx=cos⁡θ dθdx=\cos\theta\,d\theta,1−x2=cos⁡θ>0\sqrt{1-x^{2}}=\cos\theta>0 なので ∫cos⁡θ dθ(1+sin⁡θ)cos⁡θ=∫dθ1+sin⁡θ. \int\frac{\cos\theta\,d\theta}{(1+\sin\theta)\cos\theta}=\int\frac{d\theta}{1+\sin\theta} . 分母を 1−sin⁡θ1-\sin\theta で有理化すると ∫1−sin⁡θcos⁡2θ dθ=∫(sec⁡2θ−sec⁡θtan⁡θ)dθ=tan⁡θ−sec⁡θ+C=sin⁡θ−1cos⁡θ+C=x−11−x2+C \int\frac{1-\sin\theta}{\cos^{2}\theta}\,d\theta =\int\bigl(\sec^{2}\theta-\sec\theta\tan\theta\bigr)d\theta=\tan\theta-\sec\theta+C =\frac{\sin\theta-1}{\cos\theta}+C=\frac{x-1}{\sqrt{1-x^{2}}}+C となり,本解と一致する。半角の置換 s=tan⁡(θ/2)s=\tan(\theta/2) を使うと ∫2 ds(1+s)2=−21+s+C\int\frac{2\,ds}{(1+s)^{2}}=-\frac{2}{1+s}+C となるが,これは上の答えと定数 11 だけ違う同じ原始関数である。

検算(微分して戻す)

F(x)=x−11−x2F(x)=\dfrac{x-1}{\sqrt{1-x^{2}}} を商の微分で確かめる。 F′(x)=1−x2−(x−1)⋅−x1−x21−x2=(1−x2)+x(x−1)(1−x2)3/2=1−x(1−x)3/2(1+x)3/2=1(x+1)1−x2\begin{align*} F'(x)=\frac{\sqrt{1-x^{2}}-(x-1)\cdot\dfrac{-x}{\sqrt{1-x^{2}}}}{1-x^{2}} &=\frac{(1-x^{2})+x(x-1)}{(1-x^{2})^{3/2}}\\[1mm] &=\frac{1-x}{(1-x)^{3/2}(1+x)^{3/2}} =\frac{1}{(x+1)\sqrt{1-x^{2}}} \end{align*} で被積分関数に戻る。ここで (1−x2)3/2=(1−x)3/2(1+x)3/2(1-x^{2})^{3/2}=(1-x)^{3/2}(1+x)^{3/2},(x+1)1−x2=(1+x)3/2(1−x)1/2(x+1)\sqrt{1-x^{2}}=(1+x)^{3/2}(1-x)^{1/2} を用いた。

失点しやすい点

定義域 −1<x<1-1<x<1 を書かずに 1−x2\sqrt{1-x^{2}} を ±\pm 両方に開いてしまうと符号を誤る。置換 t=(1−x)/(1+x)t=\sqrt{(1-x)/(1+x)} では t>0t>0 を明示しておくと 4t2=2t\sqrt{4t^{2}}=2t とできる。また,答えを −(1−x)/(1+x)-\sqrt{(1-x)/(1+x)} のままにするか x−11−x2\dfrac{x-1}{\sqrt{1-x^{2}}} に直すかは自由だが,どちらかに揃えて積分定数 CC を書き忘れないこと。

設問4 円板上の重積分

方針

被積分関数と領域のどちらも原点からの距離で書けるので極座標が最適である。ここで大事なのは,円の中心が原点ではなく (1,0)(1,0) にあるため,rr の上限が定数ではなく θ\theta の関数 2cos⁡θ2\cos\theta になることである。r2≤2rcos⁡θr^{2}\le2r\cos\theta の両辺を rr で割る操作は r>0r>0 でのみ許されるが,r=0r=0 は面積 00 の集合なので積分の値には影響しない。

θ\theta の範囲の決め方

r≤2cos⁡θr\le2\cos\theta が意味をもつのは右辺が非負のとき,つまり cos⁡θ≥0\cos\theta\ge0 のときである。原点は円周上の点なので,原点から見て領域は右半平面側にしか広がらず,θ\theta は −π/2-\pi/2 から π/2\pi/2 までとなる。ここを 00 から 2π2\pi としてしまうと cos⁡3θ\cos^{3}\theta の積分が 00 になり,答えが 00 という明らかな誤りに至る。

検算

面積 π\pi(半径1の円板)の上で x2+y2\sqrt{x^{2}+y^{2}} の値は 00 から 22 まで動き,中心 (1,0)(1,0) での値は 11 である。したがって積分値はおよそ「1×π≒3.141\times\pi\fallingdotseq3.14」の程度になるはずで,実際 32/9≒3.5632/9\fallingdotseq3.56 とほぼ整合する(原点から遠い側の面積が広いぶんだけ平均が 11 より大きくなり,32/(9π)≒1.1332/(9\pi)\fallingdotseq1.13 が平均値になる)。桁が大きく外れていればどこかで計算を誤っている。

別の解き方

cos⁡3θ\cos^{3}\theta の積分は,3倍角の公式 cos⁡3θ=3cos⁡θ+cos⁡3θ4\cos^{3}\theta=\dfrac{3\cos\theta+\cos3\theta}{4} を使って ∫−π/2π/2cos⁡3θ dθ=14[3sin⁡θ+13sin⁡3θ]−π/2π/2=14(6−23)=43\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos^{3}\theta\,d\theta=\dfrac14\bigl[3\sin\theta+\tfrac13\sin3\theta\bigr]_{-\pi/2}^{\pi/2}=\dfrac14\bigl(6-\tfrac23\bigr)=\dfrac43 としても同じ値になる。またウォリスの公式 ∫0π/2cos⁡3θ dθ=23⋅1=23\int_{0}^{\pi/2}\cos^{3}\theta\,d\theta=\dfrac{2}{3}\cdot1=\dfrac23 を使えば即座である。

設問5 微分方程式

2) の別解(u=y2u=y^{2} とおく)

xyy′=x2(y2)′xyy'=\dfrac{x}{2}\bigl(y^{2}\bigr)' に注意して u=y2u=y^{2} とおくと,方程式は x2u′=x2+u⟹u′−2xu=2x \frac{x}{2}u'=x^{2}+u \quad\Longrightarrow\quad u'-\frac{2}{x}u=2x という1階線形微分方程式になる。積分因子は exp⁡(−∫2xdx)=x−2\exp\bigl(-\int\frac{2}{x}dx\bigr)=x^{-2} で, (ux2)′=2x⟹ux2=2log⁡∣x∣+C⟹y2=x2(2log⁡∣x∣+C) \Bigl(\frac{u}{x^{2}}\Bigr)'=\frac{2}{x} \quad\Longrightarrow\quad \frac{u}{x^{2}}=2\log|x|+C \quad\Longrightarrow\quad y^{2}=x^{2}\bigl(2\log|x|+C\bigr) と同じ解を得る。「同次形とみる」「y2y^{2} を新変数にとって線形化する」のどちらでも解けるが,後者は積分因子の型どおりに進むので計算間違いが少ない。

検算

2) の解を微分して元の式に戻す。y2=x2(2log⁡∣x∣+C)y^{2}=x^{2}(2\log|x|+C) の両辺を xx で微分すると 2yy′=2x(2log⁡∣x∣+C)+x2⋅2x=2x(2log⁡∣x∣+C)+2x 2yy'=2x\bigl(2\log|x|+C\bigr)+x^{2}\cdot\frac{2}{x}=2x\bigl(2\log|x|+C\bigr)+2x なので,両辺に x2\dfrac{x}{2} を掛けて xyy′=x2(2log⁡∣x∣+C)+x2=y2+x2 xyy'=x^{2}\bigl(2\log|x|+C\bigr)+x^{2}=y^{2}+x^{2} となり,元の方程式に一致する。1) についても y=e−xcos⁡2xy=e^{-x}\cos2x を代入すれば y′=e−x(−cos⁡2x−2sin⁡2x)y'=e^{-x}(-\cos2x-2\sin2x),y′′=e−x(−3cos⁡2x+4sin⁡2x)y''=e^{-x}(-3\cos2x+4\sin2x) から y′′+2y′+5y=e−x{(−3−2+5)cos⁡2x+(4−4)sin⁡2x}=0y''+2y'+5y=e^{-x}\{(-3-2+5)\cos2x+(4-4)\sin2x\}=0 が確かめられる。

失点しやすい点

1) では,複素解 λ=−1±2i\lambda=-1\pm2i から y=C1e(−1+2i)x+C2e(−1−2i)xy=C_1e^{(-1+2i)x}+C_2e^{(-1-2i)x} と書いて止めるのは不十分で,オイラーの公式で実数形に直すところまで書きたい。実部が減衰項 e−xe^{-x},虚部が振動の角振動数 22 に対応することを一言添えると理解が伝わる。2) では,v dv=dx/xv\,dv=dx/x を積分する際に log⁡∣x∣\log|x| の絶対値を落とす,積分定数を v22=log⁡∣x∣+C\frac{v^{2}}{2}=\log|x|+C のまま 22 倍せずに y2=x2(log⁡∣x∣+C)y^{2}=x^{2}(\log|x|+C) としてしまう,といった誤りが起きやすい。CC は任意定数なので定数倍しても任意定数のままだが,log⁡\log の係数 22 は本質的なので必ず残す。また x>0x>0 に限れば絶対値は不要になるので,答案で範囲を断ってもよい。

この設問が試していること

微分方程式の分類ができるかどうかである。1) は「定数係数・線形・同次」なので特性方程式,2) は右辺が y/xy/x の関数なので「同次形(斉次形)」で v=y/xv=y/x の置換,という対応を即座に選べるかが問われている。分類さえ間違えなければ,あとは定型の手順で解ける。

線形代数と微分積分:逆行列,行列のべき乗,積分,微分方程式の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(全2問)

    確率統計・線形代数:二項分布のポアソン近似と定数係数線形微分方程式 / 数理計画・空間ベクトル:凸2次計画のKuhn--Tucker条件と平面への直交射影

  • 2025年度(このページ・全2問)

    確率・統計と最適化:ポアソン過程,最小二乗法,ラグランジュ乗数法 / 線形代数と微分積分:逆行列,行列のべき乗,積分,微分方程式

  • 2024年度(全2問)

    微分積分・線形代数・確率の基本6題 / 確率統計・積分・線形計画法の5題

  • 2023年度(全2問)

    微分積分・線形代数:基本計算7題 / 確率統計・数理計画:確率変数,線形計画の双対,凸計画

2025年度の出題内容

全2問

この2問の分野は確率・統計1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問確率・統計ポアソン過程,最小二乗法,ラグランジュ乗数法1) をどこまで書くか / 3) の空欄の埋め方あり
第2問—線形代数と微分積分:逆行列,行列のべき乗,積分,微分方程式整数のまま計算する工夫 / 2) の別解(冪零行列への分解)あり

2025年度の解説には検算2件・失点しやすい点2件・答案の書き方1件が付いています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 2問 → 2025年度 2問
2024年度の解答例

京都大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(直近4年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
一般選抜は英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-26
京都大学の公式過去問PDF