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京大 経営管理教育部(専門職学位課程) 数学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野は確率・統計1問です。解説はすべて公開し、途中式と最終答は解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 微分積分・線形代数:基本計算7題

方針

既知の級数を代入する方法と,導関数を順に計算する方法の2通りがある。本問は2次までなので後者でも手間は同じだが,3次以上まで求める場合は前者が圧倒的に速い。(sin⁡x+1)2(\sin x+1)^2 を先に展開して sin⁡2x+2sin⁡x+1\sin^2x+2\sin x+1 にしておくと,sin⁡2x\sin^2 x の最低次が2次であることがすぐ見え,2次の項の係数が sin⁡2x\sin^2x から1,2sin⁡x2\sin x から0で合わせて1だと分かる。

検算

x=0.1x=0.1 とすると sin⁡0.1=0.0998334\sin 0.1=0.0998334 より f(0.1)=1.09983342=1.2096335f(0.1)=1.0998334^{2}=1.2096335 である。近似式の値は 1+0.2+0.01=1.211+0.2+0.01=1.21 で,差は −3.7×10−4-3.7\times10^{-4} である。3次の項は上の計算から −x3/3=−3.3×10−4-x^{3}/3=-3.3\times10^{-4} で,差の大きさと符号がよく一致している。展開の符号を取り違えていないことの確認になる。

失点しやすい点

第一に,マクローリン級数は x=0x=0 のまわりのテイラー展開なので,展開の中心を書き添えると誤解がない。第二に,(sin⁡x+1)2(\sin x+1)^{2} を sin⁡2x+1\sin^{2}x+1 としてしまう誤りが多い。交差項 2sin⁡x2\sin x が1次の係数2を生む主役である。第三に,「2次の項まで」と指定されているので,打ち切りの意味で O(x3)O(x^{3}) または「+⋯+\cdots」を付けておく。

設問2 曲面の接平面

方針

z=f(x,y)z=f(x,y) の形に書けている曲面なので,全微分 dz=fx dx+fy dydz=f_x\,dx+f_y\,dy を接点で評価する標準の公式をそのまま使う。陰関数 F(x,y,z)=xyz−1=0F(x,y,z)=xyz-1=0 とみて法線ベクトル ∇F=(yz, xz, xy)\nabla F=(yz,\,xz,\,xy) を求めてもよく,接点では ∇F=(1α,1β,αβ)\nabla F=\bigl(\tfrac1\alpha,\tfrac1\beta,\alpha\beta\bigr) となって,上の対称形がそのまま出てくる。答案では公式に代入する1行を必ず残す。

検算

接点 (x,y,z)=(α,β,1/(αβ))(x,y,z)=(\alpha,\beta,1/(\alpha\beta)) を代入すると 1+1+1=31+1+1=3 で成り立つ。また α=β=1\alpha=\beta=1 とすると接点は (1,1,1)(1,1,1),接平面は x+y+z=3x+y+z=3 となり,fx(1,1)=fy(1,1)=−1f_x(1,1)=f_y(1,1)=-1 という傾きと整合する。整理の途中で αβ\alpha\beta を掛け忘れると定数項が3にならないので,この代入は有効な確認になる。

幾何的な意味

α>0\alpha>0,β>0\beta>0 とすると,接平面が座標軸を切る点は (3α,0,0)(3\alpha,0,0),(0,3β,0)(0,3\beta,0),(0,0,3αβ)\bigl(0,0,\tfrac{3}{\alpha\beta}\bigr) である。これらと原点が作る四面体の体積は 16⋅3α⋅3β⋅3αβ=92 \frac{1}{6}\cdot 3\alpha\cdot 3\beta\cdot\frac{3}{\alpha\beta}=\frac{9}{2} で,接点の位置によらず一定である。xyz=1xyz=1 型の曲面がもつ古典的な性質で,答案に書く必要はないが,計算結果の妥当性を感じ取る目安になる。

失点しやすい点

「曲面上の点 (α,β)(\alpha,\beta)」は xyxy 平面上の位置を指しており,接点の zz 座標は自分で 1/(αβ)1/(\alpha\beta) と補う必要がある。定数項を 1αβ\dfrac{1}{\alpha\beta} のままにして 3αβ\dfrac{3}{\alpha\beta} にし損ねる誤りが最も多い。α≠0\alpha\neq0,β≠0\beta\neq0 という定義域の条件も一言添える。

設問3 1階線形微分方程式

方針

x y′+yx\,y'+y を見た瞬間に (xy)′(xy)' と気付けるかどうかで所要時間が変わる。気付かなくても標準形に直して積分因子を作れば必ず解けるので,答案では積分因子 μ=x\mu=x を明示してから進めるのが安全である。∫xlog⁡x dx\int x\log x\,dx は部分積分で,log⁡x\log x を微分する側,xx を積分する側に取る。

検算

得られた yy を微分すると y′=12log⁡x+12−14−Cx2=12log⁡x+14−Cx2 y'=\frac{1}{2}\log x+\frac{1}{2}-\frac{1}{4}-\frac{C}{x^{2}} =\frac{1}{2}\log x+\frac{1}{4}-\frac{C}{x^{2}} であるから xy′+y=(x2log⁡x+x4−Cx)+(x2log⁡x−x4+Cx)=xlog⁡x x y'+y=\Bigl(\frac{x}{2}\log x+\frac{x}{4}-\frac{C}{x}\Bigr) +\Bigl(\frac{x}{2}\log x-\frac{x}{4}+\frac{C}{x}\Bigr)=x\log x となり,もとの方程式を満たす。CC を含む項が打ち消し合うことまで確かめると,同次解 C/xC/x の形も正しいと確認できる。

解の構造

一般解は同次方程式 xy′+y=0xy'+y=0 の解 C/xC/x と,特殊解 x2log⁡x−x4\dfrac{x}{2}\log x-\dfrac{x}{4} の和になっている。1階線形方程式の一般解が「同次解+特殊解」であるという構造を答案で一言示すと,任意定数が1つだけであることの説明にもなる。

失点しやすい点

積分定数を付ける位置を誤り,xy=⋯xy=\cdots の段階で CC を落として最後に付けると CC が C/xC/x にならない。また −x24-\dfrac{x^{2}}{4} の項は部分積分の第2項から出るもので,ここを落とすと検算が合わない。x>0x>0 という条件は log⁡x\log x の定義域と,xx で割る操作の正当化の両方に効いているので明記する。

設問4 半円板上の二重積分

直交座標による別解

xx を固定すると yy は 00 から 1−x2\sqrt{1-x^{2}} まで動くので ∬Dy dx dy=∫−11 ⁣ ⁣∫01−x2y dy dx=∫−111−x22 dx=12(2−23)=23 \iint_{D}y\,dx\,dy=\int_{-1}^{1}\!\!\int_{0}^{\sqrt{1-x^{2}}}y\,dy\,dx =\int_{-1}^{1}\frac{1-x^{2}}{2}\,dx =\frac{1}{2}\Bigl(2-\frac{2}{3}\Bigr)=\frac{2}{3} となり同じ値を得る。被積分関数が yy の1次式だけなので,実は直交座標のほうが手数が少ない。答案ではどちらか一方を丁寧に書けばよい。

検算と意味

DD の面積は π2\dfrac{\pi}{2} であるから,この積分は半円板の重心の yy 座標を与え, yˉ=2/3π/2=43π≈0.4244 \bar y=\frac{2/3}{\pi/2}=\frac{4}{3\pi}\approx0.4244 となる。半径1の半円板の重心が中心から 4/(3π)4/(3\pi) の高さにあるという既知の結果と一致する。値が 0<yˉ<10<\bar y<1 の範囲に入っていること,また上半分に限ったので正の値になることの2点で,符号と大きさの妥当性を確かめられる。

失点しやすい点

極座標に直すときヤコビアン rr を落とすと ∫01r dr=1/2\int_0^1 r\,dr=1/2 となって答えが 11 になってしまう。また y≥0y\ge0 の条件を落として θ\theta を 00 から 2π2\pi まで動かすと,対称性から積分値が 00 になる。領域を図示して積分範囲を確定してから計算に入ると,この2つの誤りは避けられる。

設問5 3本のベクトルの1次独立性

答案の書き方

「その理由もあわせて具体的に述べよ」とあるので,行列式が 00 であるという判定だけでは答え切っていない。00 でない係数の組を1つ提示して等式を書くところまでが求められている。逆に,係数の組さえ示せば行列式の計算を省いても論理は閉じるが,判定の根拠として行列式も添えるほうが読み手に親切である。

別の示し方

掃き出し法で階数を求めてもよい。3本を列に並べた行列を簡約すると階数は2になり,33 本のベクトルが張る空間が2次元であること,つまり1本が他の2本の1次結合で書けることが分かる。階数2という値は,v1\mathbf{v}_1 と v2\mathbf{v}_2 が平行でない(比が一定でない)ことから確認できる。

検算

2v1−v2=(4+1, −6−1, 2−2)⊤=(5,−7,0)⊤=v32\mathbf{v}_1-\mathbf{v}_2=(4+1,\,-6-1,\,2-2)^{\top}=(5,-7,0)^{\top}=\mathbf{v}_3 で,3成分すべてが一致する。連立方程式を2式だけで解いた場合,残りの1式で必ず確認する。ここで合わなければ,そもそも1次従属ではない(行列式が 00 でない)ことを意味する。

失点しやすい点

「行列式が 00 だから従属」で止める答案,符号を1か所間違えて v3=2v1+v2\mathbf{v}_3=2\mathbf{v}_1+\mathbf{v}_2 としてしまう答案が典型である。また「1次従属」と「どれか1本が 0\mathbf{0} である」ことを混同しないよう,定義(自明でない係数の組が存在する)に沿って書く。

設問6 正規直交基底の構成

方針

まず内積を計算して直交しているかを確かめるのが第一手である。直交していればグラム・シュミットの計算は不要になり,外積1回と正規化で終わる。もし直交していなければ,a2′=a2−a1⋅a2∥a1∥2a1\mathbf{a}_2'=\mathbf{a}_2-\dfrac{\mathbf{a}_1\cdot\mathbf{a}_2}{\|\mathbf{a}_1\|^{2}}\mathbf{a}_1 と直交化してから同じ手順に進む。本問は a1⋅a2=0\mathbf{a}_1\cdot\mathbf{a}_2=0 が仕込まれており,そこに気付けるかを試している。

外積以外の作り方

a3=(p,q,r)⊤\mathbf{a}_3=(p,q,r)^{\top} とおいて 2p−q+4r=02p-q+4r=0 と −3p−2q+r=0-3p-2q+r=0 を連立させても求まる。第1式から q=2p+4rq=2p+4r を第2式に代入すると −3p−2(2p+4r)+r=−7p−7r=0 -3p-2(2p+4r)+r=-7p-7r=0 より p=−rp=-r,このとき q=2rq=2r となるので,解は r(−1,2,1)⊤r(-1,2,1)^{\top} という1次元の自由度をもち,(1,−2,−1)⊤(1,-2,-1)^{\top} の定数倍と一致する。外積を使うほうが速いが,公式を忘れても連立方程式で必ず作れる。

検算

内積を確かめると a1⋅a3=2⋅1+(−1)⋅(−2)+4⋅(−1)=2+2−4=0\mathbf{a}_1\cdot\mathbf{a}_3=2\cdot1+(-1)\cdot(-2)+4\cdot(-1)=2+2-4=0,a2⋅a3=(−3)⋅1+(−2)⋅(−2)+1⋅(−1)=−3+4−1=0\mathbf{a}_2\cdot\mathbf{a}_3=(-3)\cdot1+(-2)\cdot(-2)+1\cdot(-1)=-3+4-1=0 で,どちらも直交している。さらに ∥ei∥=1\|\mathbf{e}_i\|=1 を確かめると,e1,e2,e3\mathbf{e}_1,\mathbf{e}_2,\mathbf{e}_3 を列にもつ行列は直交行列になる。外積の向きの規約から,この順で並べた行列の行列式は +1+1 である。

失点しやすい点

「正規直交基底」なので,直交させただけで正規化を忘れると減点される。外積の第2成分は a1zb1x−a1xb1za_{1z}b_{1x}-a_{1x}b_{1z} の形で符号が入れ替わるため,計算をそのまま公式に当てはめると −14-14 の符号を落としやすい。77 で割って簡単なベクトルにしてから正規化すると,根号の中身が 66 となり計算が軽くなる。

設問7 実対称行列の直交対角化

方針

実対称行列は必ず直交行列で対角化できる。手順は,固有多項式を因数分解する,各固有値の固有ベクトルを求める,正規化して列に並べる,の3段である。本問は固有値が相異なるので,固有ベクトルの直交性を自分で作る必要がなく,正規化だけで直交行列になる。固有値に重複がある場合は,重複固有値の固有空間の中でグラム・シュミットの直交化が必要になる。

検算

固有値の和は 2+1−1=22+1-1=2 で,tr A=1+1+0=2\mathrm{tr}\,A=1+1+0=2 に一致する。固有値の積は 2⋅1⋅(−1)=−22\cdot1\cdot(-1)=-2 で, det⁡A=1⋅(1⋅0−1⋅1)+1⋅(0⋅1−1⋅1)=−1−1=−2 \det A=1\cdot(1\cdot0-1\cdot1)+1\cdot(0\cdot1-1\cdot1)=-1-1=-2 に一致する。トレースと行列式の2つで確認すれば,固有多項式の係数の誤りはほぼ排除できる。個々の固有ベクトルも Ax=λxA\mathbf{x}=\lambda\mathbf{x} に代入して確かめられる。たとえば A(1,1,1)⊤=(2,2,2)⊤=2(1,1,1)⊤A(1,1,1)^{\top}=(2,2,2)^{\top}=2(1,1,1)^{\top} である。

答案の書く順序

「直交行列を求めよ」「その結果を用いて対角化せよ」と2段階で問われているので,PP を書いたあとに P⊤APP^{\top}AP の形の等式まで書いて締める。対角成分の並びは PP の列の並びと対応させる必要があり,PP の第1列を λ=2\lambda=2 の固有ベクトルにしたなら対角行列の (1,1)(1,1) 成分は 22 である。この対応を崩すと誤答になる。

失点しやすい点

P−1APP^{-1}AP を PAP−1PAP^{-1} と書く向きの誤り,正規化を忘れて直交行列でない行列を答えてしまう誤り,λ=1\lambda=1 の固有ベクトルを (1,1,0)⊤(1,1,0)^{\top} と符号を取り違える誤りが多い。PP が直交行列であることは P⊤P=IP^{\top}P=I を1行示せば足りるので,時間があれば添える。

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第2問 — 確率統計・数理計画:確率変数,線形計画の双対,凸計画

方針

連続型確率変数の問題は,(i) 正規化条件 ∫f=1\int f=1 で未知定数を決める,(ii) 対称性を使って平均を出す,(iii) E[X2]E[X^{2}] を計算して V=E[X2]−(E[X])2V=E[X^{2}]-(E[X])^{2} に入れる,という3段で必ず片付く。奇関数・偶関数の判定を先に済ませておくと,積分の手数が半分になる。

検算

同じ区間 [−1,1][-1,1] 上の一様分布の分散は (1−(−1))212=13\dfrac{(1-(-1))^{2}}{12}=\dfrac13 である。本問の密度は上図のように中央が高く両端が 00 なので,質量が原点近くに集まる分だけ分散は小さくなるはずで,15<13\dfrac15<\dfrac13 は整合する。また ∣X∣≤1|X|\le1 より V[X]≤E[X2]≤1V[X]\le E[X^{2}]\le1 という上限とも矛盾しない。AA については 34⋅43=1\frac34\cdot\frac43=1 を暗算で確かめられる。

背景

fX(x)=34(1−x2)f_X(x)=\frac34(1-x^{2})(∣x∣≤1|x|\le1)はカーネル密度推定で使われるエパネチニコフ核と同じ形で,平均 00,分散 15\dfrac15 という値もそこで標準的に現れる。滑らかな山型で台がコンパクトという扱いやすさから,教科書の例題によく採用される密度である。

失点しやすい点

分散を E[X2]E[X^{2}] のまま答えてしまう(本問は E[X]=0E[X]=0 なので偶然一致するが,定義式は書く),積分範囲を (−∞,∞)(-\infty,\infty) のままにして発散させる,∫−11x4dx=25\int_{-1}^{1}x^{4}dx=\frac25 を 15\frac15 と誤る,といった誤りが典型である。AA が正であること(密度が非負であること)にも一言触れておくと丁寧である。

設問2 線形計画問題の双対と単体法

別解:主問題を解いて読み取る

双対問題の双対は主問題であり,主問題は最大化・≤\le・右辺非負なのでスラック変数 s1,s2,s3s_1,s_2,s_3 を入れるだけで初期実行可能基底が得られる。通常の単体法を適用すると, 基底x1x2x3s1s2s3右辺s15671008s23−420102s313−10012z−2−5−60000 \begin{array}{c|rrr|rrr|r} \text{基底} & x_1 & x_2 & x_3 & s_1 & s_2 & s_3 & \text{右辺}\\\hline s_1 & 5 & 6 & 7 & 1 & 0 & 0 & 8\\ s_2 & 3 & -4 & 2 & 0 & 1 & 0 & 2\\ s_3 & 1 & 3 & -1 & 0 & 0 & 1 & 2\\\hline z & -2 & -5 & -6 & 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} から出発し,x3x_3 を入れて s2s_2 を出す,x2x_2 を入れて s1s_1 を出す,という2回の枢軸演算で 基底x1x2x3s1s2s3右辺x2−114010120−7400120x319200111032001110s31114000−120274015920z9340001720140013720 \begin{array}{c|rrr|rrr|r} \text{基底} & x_1 & x_2 & x_3 & s_1 & s_2 & s_3 & \text{右辺}\\\hline x_2 & -\tfrac{11}{40} & 1 & 0 & \tfrac{1}{20} & -\tfrac{7}{40} & 0 & \tfrac{1}{20}\\ x_3 & \tfrac{19}{20} & 0 & 1 & \tfrac{1}{10} & \tfrac{3}{20} & 0 & \tfrac{11}{10}\\ s_3 & \tfrac{111}{40} & 0 & 0 & -\tfrac{1}{20} & \tfrac{27}{40} & 1 & \tfrac{59}{20}\\\hline z & \tfrac{93}{40} & 0 & 0 & \tfrac{17}{20} & \tfrac{1}{40} & 0 & \tfrac{137}{20} \end{array} という最適表に達する。最終表の目的関数行でスラック変数の列に現れる値 (1720,140,0)\left(\frac{17}{20},\frac{1}{40},0\right) がそのまま双対問題の最適解であり,上の結果と一致する。2つの表は互いに転置の関係にあり,主問題の最適解 (x1,x2,x3)=(0,120,1110)(x_1,x_2,x_3)=\left(0,\frac{1}{20},\frac{11}{10}\right) は双対単体法の最終表の t1,t2,t3t_1,t_2,t_3 列から読み取れる。

双対定理と相補性の確認

主問題の最適値は z=5⋅120+6⋅1110=0.25+6.6=6.85z=5\cdot\frac{1}{20}+6\cdot\frac{11}{10}=0.25+6.6=6.85 で,双対問題の最適値 w=6.85w=6.85 と一致する(強双対定理)。相補性条件も次のように整合する。双対の第1制約は 4.325>24.325>2 と余裕があり,対応する x1=0x_1=0。y1>0y_1>0,y2>0y_2>0 なので主問題の第1・第2制約は等号で成立し,実際 6⋅120+7⋅1110=86\cdot\frac{1}{20}+7\cdot\frac{11}{10}=8,−4⋅120+2⋅1110=2-4\cdot\frac{1}{20}+2\cdot\frac{11}{10}=2 である。y3=0y_3=0 に対応する主問題の第3制約は 3⋅120−1110=−0.95<23\cdot\frac{1}{20}-\frac{11}{10}=-0.95<2 で余裕がある。答案の最後にこの確認を1行入れると,計算ミスがないことを示せる。

2段階法を使う場合

双対単体法を使わずに通常の単体法だけで解くなら,双対問題の3本の ≥\ge 制約それぞれに余剰変数と人為変数を入れ,第1段階で人為変数の和を最小化して実行可能基底を作り,第2段階で ww を最小化する。手順としては正しいが,変数が9個に増えて表が大きくなり,試験時間内では割に合わない。yy の符号条件から出発点が定まらない形の問題では,双対単体法か,主問題を解いて読み取る方法を選ぶのが実務的である。

失点しやすい点

双対問題を作るとき,最大化・≤\le の主問題に対して双対は最小化・≥\ge になり,係数行列は転置,目的関数の係数と右辺が入れ替わる,という対応を1つでも取り違えると以降がすべて崩れる。また双対変数の非負条件 y≥0\mathbf{y}\ge\mathbf{0} を書き忘れる答案が多い。単体表では,出す行を右辺の負値で選ぶ(双対単体法)のと,入れる列を目的関数行で選ぶ(通常の単体法)のとで基準が逆であることを意識する。

この設問が試していること

双対問題を機械的に書けるかどうかに加え,「双対問題の最適解は主問題の最適表の中にすでに入っている」という双対定理の意味を理解しているかを試している。経営科学の文脈では yiy_i は第 ii 制約の資源1単位あたりの限界価値(シャドープライス)であり,本問なら第1の資源を1単位増やすと最適値が 0.850.85 増え,第3の資源は余っているので価値が 00 である,と読める。

設問3 凸計画問題とKuhn--Tucker条件

方針

1) で凸計画問題の定義を書き,2) でヘッセ行列の正定値性から凸性を示し,3) でKuhn--Tucker条件を並べ,4) でそれを解く,という流れが問題文にそのまま用意されている。したがって4)を解くときに,2)で示した凸性を根拠として「Kuhn--Tucker点が大域最適解である」と結論づけることが,設問どうしをつなぐ要点になる。ここを書かずに「Kuhn--Tucker点を求めた」で終えると,最適解であることの論証が抜ける。

凸性の示し方

2変数の関数の凸性は,ヘッセ行列が半正定値であることと同値である。判定は首座小行列式(H11≥0H_{11}\ge0 かつ det⁡H≥0\det H\ge0,狭義なら >0>0)を書けばよく,固有値を求める必要はない。固有値で示すなら ∇2f\nabla^{2}f の固有値は 33 と 11 でともに正である。制約側は「凸関数の劣位集合 {g≤c}\{g\le c\} は凸集合」という定理を引用する形が最短である。

検算

目的関数を平方完成すると f(x1,x2)=(x1+x22)2+34x22 ≥0 f(x_1,x_2)=\Bigl(x_1+\frac{x_2}{2}\Bigr)^{2}+\frac34x_2^{2}\ \ge 0 で,等号は x2=0x_2=0 かつ x1=0x_1=0 のとき,すなわち原点だけである。原点は実行可能なので,制約を考えるまでもなく原点が最小点だと分かる。Kuhn--Tucker条件から得た答えがこの直接の議論と一致することが確認になる。平方完成は凸性(正定値性)の別証明にもなっている。

制約が効く場合との対比

同じ問題を最大化に変えると事情が変わる。ff の等高線は (1,1)(1,1) 方向に対する係数が 32\frac32,(1,−1)(1,-1) 方向に対する係数が 12\frac12 の楕円なので,単位円上での ff の値は 12\frac12 から 32\frac32 まで動き,最大値 32\frac32 は (12,12)\left(\frac{1}{\sqrt2},\frac{1}{\sqrt2}\right) とその反対点で達成される。このとき制約は有効になり乗数は正になる。最小化では制約が効かず,最大化では効くという対比を押さえておくと,相補性条件の使い方が身につく。

失点しやすい点

最小化問題のラグランジュ関数を f−μgf-\mu g と符号を逆に置くと,μ≥0\mu\ge0 の向きが合わなくなる。g≤0g\le0 の最小化では ∇f+μ∇g=0\nabla f+\mu\nabla g=\mathbf{0},μ≥0\mu\ge0 が正しい向きである。また,はじめから制約が有効(x12+x22=1x_1^{2}+x_2^{2}=1)と決めつけてラグランジュの未定乗数法で解くと,μ<0\mu<0 という条件違反の解しか出てこない。相補性条件のもとで「制約が有効な場合」と「有効でない場合」を分けて調べる姿勢が求められている。

確率統計・数理計画:確率変数,線形計画の双対,凸計画の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(全2問)

    確率統計・線形代数:二項分布のポアソン近似と定数係数線形微分方程式 / 数理計画・空間ベクトル:凸2次計画のKuhn--Tucker条件と平面への直交射影

  • 2025年度(全2問)

    確率・統計と最適化:ポアソン過程,最小二乗法,ラグランジュ乗数法 / 線形代数と微分積分:逆行列,行列のべき乗,積分,微分方程式

  • 2024年度(全2問)

    微分積分・線形代数・確率の基本6題 / 確率統計・積分・線形計画法の5題

  • 2023年度(このページ・全2問)

    微分積分・線形代数:基本計算7題 / 確率統計・数理計画:確率変数,線形計画の双対,凸計画

2023年度の出題内容

全2問

この2問の分野は確率・統計1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—微分積分・線形代数:基本計算7題幾何的な意味 / 解の構造あり
第2問確率・統計確率変数,線形計画の双対,凸計画別解:主問題を解いて読み取る / 双対定理と相補性の確認あり

2023年度の解説には検算2件・失点しやすい点2件・答案の書き方1件が付いています。

京都大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(直近4年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
一般選抜は英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-26
京都大学の公式過去問PDF