院試hub

京大 経営管理教育部(専門職学位課程) 経済学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野はマクロ経済学1問、ミクロ経済学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — ミクロ経済学:語句説明・2期間消費・長期均衡と課税

答案の分量

「簡単に説明」とあるので,各語句は定義1文,記号または式1本,補足1文の3点で足りる。5語句あわせて解答用紙の半ページ程度が目安である。式を書けと指示されてはいないが,VC(0)=0\mathrm{VC}(0)=0 や E[u(x~)]=u(E[x~])E[u(\tilde{x})]=u(E[\tilde{x}]) のような1本の式を添えると,定義を暗記しただけの答案と差がつく。

失点しやすい点

限界生産性の逓減は,すべての要素を同時に増やす場合の規模に関する収穫逓減とは別の概念なので,「他の要素を一定に保つ」という条件を必ず書く。危険中立的を「リスクを気にしない」とだけ書くと,効用関数が線形であるという中身が伝わらない。パレート効率的は「全員が満足している状態」ではなく,「他人を犠牲にせずには誰も改善できない状態」であり,きわめて不平等な配分でも効率的でありうる。モラル・ハザードと逆選択の区別は,情報の非対称性が契約の前に生じるか後に生じるかで答えるのが確実である。

設問2 2期間の消費選択と貯蓄

方針

1) は「用いてよい」と明示された対数の狭義凹性をそのまま持ち込む問題で,新しい道具は要らない。2) は1) の系として3行で書ける。3) は予算制約を代入して1変数の最大化に落とすのが最短で,ラグランジュ乗数を立てる必要はない。4) は3) の結果を Y1Y_1 について解き直すだけだが,後半は「制約が拘束するかどうか」を確かめる問いになっている。

1) で落としやすい場合分け

2点が異なっていても,片方の座標だけが異なることがある。与えられた対数の不等式は異なる2数に対するものなので,C1′=C1′′C_1'=C_1'' の場合は等号として扱い,狭義の不等号は残りの項から出る,と1行書いておく。これを書かずに両項とも狭義としてしまうと,論証に穴が残る。β>0\beta>0 を使っていることも明示する。

図で見る 3) と 4)

数値例として β=1\beta=1,r=0r=0,Y1=6Y_1=6,Y2=2Y_2=2 をとると W=8W=8,C1∗=C2∗=4C_1^{*}=C_2^{*}=4 となり,S1=2>0S_1=2>0 である。条件 Y1>Y2/{β(1+r)}=2Y_1>Y_2/\{\beta(1+r)\}=2 を満たしている。

予算制約は所得の組 (Y1,Y2)(Y_1,Y_2) を通り,傾きが −(1+r)-(1+r) の直線である。最適点 E∗E^{*} はそこに無差別曲線が接する点で,E∗E^{*} が (Y1,Y2)(Y_1,Y_2) より左上にあるとき,つまり C1∗<Y1C_1^{*}<Y_1 のときに貯蓄が正になる。借入の禁止は「(Y1,Y2)(Y_1,Y_2) より右側の予算線を使えない」という制約なので,最適点がもともと左側にあるこの場合には効かない。

検算

β=1\beta=1,r=0r=0 のとき C1∗=C2∗=(Y1+Y2)/2C_1^{*}=C_2^{*}=(Y_1+Y_2)/2 となり,2期間で消費を等分する解が出る。割引率と利子率が釣り合う β(1+r)=1\beta(1+r)=1 のときに消費が平準化されるのは,標準的な結果と整合する。求めた解を生涯予算制約に代入すると C1∗+C2∗1+r=W1+β+βW1+β=W C_1^{*}+\frac{C_2^{*}}{1+r}=\frac{W}{1+\beta}+\frac{\beta W}{1+\beta}=W で制約が満たされる。また rr が上がると W=Y1+Y2/(1+r)W=Y_1+Y_2/(1+r) が小さくなるので C1∗C_1^{*} は減り,C2∗=β{(1+r)Y1+Y2}/(1+β)C_2^{*}=\beta\{(1+r)Y_1+Y_2\}/(1+\beta) は増える。利子率の上昇が消費を将来に振り向けるという直感と一致する。

この設問が試していること

定義に沿って不等式を運ぶ力と,予算制約を正しく立てて最適化する力を,別々に測っている。1)2) は計算量が小さい代わりに「任意の」「異なる」「0<λ<10<\lambda<1」という条件を正確に扱えるかを見ており,4) の後半は,制約が拘束するかどうかを確かめてから答えるという習慣を問う短い問いである。

設問3 参入自由な長期均衡とクールノー競争

方針

1) は「p=MCp=\mathrm{MC} かつ π=0\pi=0」を連立させるだけだが,答案では「両立するのは平均費用最小点である」と先に一言書いてから微分に入ると論理が通る。2) は 1) の結果を逆需要に代入して Q∗Q^{*} を求め,n=Q∗/q∗n=Q^{*}/q^{*} とする。3) は費用関数も企業数も動かさず,行動の想定だけを価格受容からクールノーに変える設問である。

図で見る 1) と 2)

限界費用曲線は平均費用曲線の最小点を必ず通る。ff が 1/41/4 から 11 に上がると平均費用曲線が全体に持ち上がり,最小点が (1/2,5)(1/2,5) から (1,6)(1,6) へ右上に動く。長期均衡価格はこの最小値そのものである。

検算

3) の均衡で個別企業の限界収入と限界費用を確かめる。限界収入は 10−Q−q=46/7−6/7=40/710-Q-q=46/7-6/7=40/7,限界費用は 4+2⋅(6/7)=40/74+2\cdot(6/7)=40/7 で一致する。価格 46/7≈6.5746/7\approx6.57 は 2) の 66 より高く,総取引量 24/7≈3.4324/7\approx3.43 は 44 より少ない。生産を絞って価格を上げた分だけ利潤が正になるという向きは,クールノー競争の性質と整合している。

失点しやすい点

2) で「価格が上がったから企業数が減る」とだけ書くと,1社あたりの生産量 q∗=fq^{*}=\sqrt{f} も同時に増えることを落としている。n=Q/qn=Q/q の分子と分母が両方動くことを示す必要がある。3) では企業数を再び内生化して求め直してしまう誤りが多いが,設問は 2) で f=1f=1 のときに求めた数で固定するよう指定している。また一階条件で QQ をそのまま定数のように扱うと ∂Q/∂qi=1\partial Q/\partial q_i=1 を落とすので,Q=qi+∑j≠iqjQ=q_i+\sum_{j\neq i}q_j と分けて書くのが安全である。

この設問が試していること

同じ費用構造の下で「参入自由な価格受容」と「企業数固定のクールノー」という2つの市場構造を切り替え,どの条件が均衡を決めているかを言い分けられるかを見ている。前者では利潤ゼロ条件が企業数を決め,後者では企業数が所与なので利潤が正のまま残る。

設問4 需要の価格弾力性と従量税の効率性

方針

1) は「完全競争かつ限界費用一定」から価格が 22 に決まることに気づけば,あとは定義に代入するだけである。弾力性は点ごとに変わるので,どの点で評価したかを必ず書く。2) はラムゼーの逆弾力性の命題を知っていれば結論だけは書けるが,根拠を求められたときのために,死荷重と税収を具体的に書き下して比較する道筋を用意しておく。

図で見る死荷重の差

下図は tA=tB=2t_A=t_B=2 とした場合である。どちらの市場も課税前は (Q,p)=(6,2)(Q,p)=(6,2) で共通だが,同じ税を課したときの取引量の減少は財Aで 22,財Bで 11 にとどまる。

死荷重は財Aで 22,財Bで 11 となり,弾力的な財Aのほうが2倍大きい。しかも税収は RA=2×4=8R_A=2\times4=8,RB=2×5=10R_B=2\times5=10 で財Bのほうが多い。同じ税率なら財Bは「歪みが小さく税収が多い」ので,課税を財Bに寄せる余地がある,というのが結論の直感である。

逆弾力性の命題との対応

1) で求めた弾力性の比は εA:εB=(1/3):(1/6)=2:1\varepsilon_A:\varepsilon_B=(1/3):(1/6)=2:1 である。2) で導いた最適条件 tB=2tAt_B=2t_A はちょうどこの逆比であり,「税率は需要の価格弾力性に反比例させる」というラムゼーの逆弾力性の命題どおりになっている。導出した結果が一般命題と一致することを一言添えると,答えの根拠がはっきりする。

失点しやすい点

弾力性を dQ/dpdQ/dp の値そのもの(−1-1 と −0.5-0.5)で答えてしまう誤りが多い。弾力性は変化率どうしの比なので p/Qp/Q を掛ける必要があり,そのためには先に均衡価格 p=2p=2 と数量 Q=6Q=6 を確定させなければならない。また,弾力性の大きい財に多く課税すべきだと逆に答えないよう,死荷重が弾力性とともに大きくなることを確認してから結論を書く。

この設問が試していること

最適課税の議論を,公平性ではなく効率性(超過負担の最小化)という基準だけで組み立てられるかを見ている。逆弾力性のルールが導く税制は,生活必需品ほど重く課税するという意味で分配上は逆進的になりうるが,本設問は効率性の観点に限って問うている点に注意する。

解答

  1. 可変費用 生産量に応じて変化する費用。総費用 c(q)c(q) は,生産量に依存しない固定費用 ff と可変費用 VC(q)\mathrm{VC}(q) に分けられ c(q)=f+VC(q),VC(0)=0 c(q)=f+\mathrm{VC}(q),\qquad \mathrm{VC}(0)=0 と書ける。たとえば c=f+4q+q2c=f+4q+q^{2} なら VC(q)=4q+q2\mathrm{VC}(q)=4q+q^{2} である。限界費用 MC=VC′(q)\mathrm{MC}=\mathrm{VC}'(q) は固定費用に依存せず,短期の操業停止の判断も価格と平均可変費用 VC(q)/q\mathrm{VC}(q)/q の比較で決まる。

  2. 限界生産性の逓減 他の生産要素の投入量を一定に保ったまま,ある生産要素の投入量を増やしていくと,その要素の限界生産物が次第に小さくなること。労働 LL についてなら MPL=∂F∂L>0,∂2F∂L2<0 \mathrm{MP}_L=\frac{\partial F}{\partial L}>0,\qquad \frac{\partial^{2}F}{\partial L^{2}}<0 と表される。F=AKαL1−αF=AK^{\alpha}L^{1-\alpha}(0<α<10<\alpha<1)では MPL=(1−α)AKαL−α\mathrm{MP}_L=(1-\alpha)AK^{\alpha}L^{-\alpha} となり,LL が増えるほど小さくなる。要素価格が一定なら,限界生産性の逓減は限界費用の逓増と表裏一体である。

  3. 危険中立的 不確実な結果に対する評価が,その期待値だけで決まる態度。所得についての効用関数が線形 u(x)=a+bxu(x)=a+bx(b>0b>0)であることと同値で,任意のくじ x~\tilde{x} について E[u(x~)]=u(E[x~]) E\bigl[u(\tilde{x})\bigr]=u\bigl(E[\tilde{x}]\bigr) が成り立つ。したがって確実性等価が期待値に一致し,リスク・プレミアムは0になる。u′′<0u''<0 なら危険回避的,u′′>0u''>0 なら危険愛好的であり,危険中立はその境目にあたる。

  4. パレート効率的 実行可能な配分のうち,誰の効用も下げることなく少なくとも1人の効用を高めるような別の実行可能な配分が存在しない状態。2人2財の交換経済の内点では,両者の限界代替率が一致する条件 MRSxyA=MRSxyB \mathrm{MRS}^{A}_{xy}=\mathrm{MRS}^{B}_{xy} を満たす点(契約曲線上の点)である。厚生経済学の第一基本定理により,完全競争市場の均衡配分はパレート効率的になる。ただし効率性は分配の公平さについて何も述べない。

  5. モラル・ハザード 契約を結んだ後に,一方の当事者の行動が他方から観察できないために,その行動が契約時に望ましいとされた水準から乖離すること(隠された行動)。たとえば火災保険の加入後に,加入者が防火の努力 ee を下げても保険会社には ee が観察できないため,均衡の努力水準は社会的に最適な水準を下回る。報酬を観察可能な成果に連動させれば緩和できるが,エージェントが危険回避的なら危険分担とインセンティブの間にトレードオフが生じる。契約前の情報の非対称性から生じる逆選択とは,非対称性が現れる時点で区別する。

1) 効用関数が強凹であること

定義域は C1>0C_1>0,C2>0C_2>0 であり,これは凸集合なので,2点を結ぶ線分上の点も定義域に入る。異なる2点 (C1′,C2′)(C_1',C_2'),(C1′′,C2′′)(C_1'',C_2'') と λ∈(0,1)\lambda\in(0,1) をとる。

第1項について,C1′≠C1′′C_1'\neq C_1'' なら与えられた性質より log⁡(λC1′+(1−λ)C1′′)>λlog⁡C1′+(1−λ)log⁡C1′′ \log\bigl(\lambda C_1'+(1-\lambda)C_1''\bigr)>\lambda\log C_1'+(1-\lambda)\log C_1'' であり,C1′=C1′′C_1'=C_1'' なら両辺とも log⁡C1′\log C_1' に等しい。いずれの場合も ≥\ge が成り立つ。第2項も同様で,β>0\beta>0 を掛けても不等号の向きは変わらないから βlog⁡(λC2′+(1−λ)C2′′) ≥ β{λlog⁡C2′+(1−λ)log⁡C2′′} \beta\log\bigl(\lambda C_2'+(1-\lambda)C_2''\bigr)\ \ge\ \beta\bigl\{\lambda\log C_2'+(1-\lambda)\log C_2''\bigr\} であり,C2′≠C2′′C_2'\neq C_2'' なら狭義の不等号になる。

2点は異なるので,C1′≠C1′′C_1'\neq C_1'' と C2′≠C2′′C_2'\neq C_2'' の少なくとも一方が成り立ち,対応する項では狭義の不等号が成り立つ。2つの不等式を辺々加えると U(λC1′+(1−λ)C1′′, λC2′+(1−λ)C2′′)>λU(C1′,C2′)+(1−λ)U(C1′′,C2′′) U\bigl(\lambda C_1'+(1-\lambda)C_1'',\ \lambda C_2'+(1-\lambda)C_2''\bigr) >\lambda U(C_1',C_2')+(1-\lambda)U(C_1'',C_2'') を得る。λ∈(0,1)\lambda\in(0,1) は任意だったから,UU は強凹関数である。

2) 無差別曲線が原点に対して強く凸であること

異なる2点 (C1′,C2′)(C_1',C_2') と (C1′′,C2′′)(C_1'',C_2'') がともに効用水準 Uˉ\bar U を与えるとする。すなわち U(C1′,C2′)=U(C1′′,C2′′)=Uˉ U(C_1',C_2')=U(C_1'',C_2'')=\bar U である。1) で示した強凹性をこの2点と任意の λ∈(0,1)\lambda\in(0,1) に適用すると U(λC1′+(1−λ)C1′′, λC2′+(1−λ)C2′′)>λUˉ+(1−λ)Uˉ=Uˉ U\bigl(\lambda C_1'+(1-\lambda)C_1'',\ \lambda C_2'+(1-\lambda)C_2''\bigr) >\lambda\bar U+(1-\lambda)\bar U=\bar U が成り立つ。これは,同じ無差別曲線上の異なる2点を結ぶ線分の内点がすべて効用水準 Uˉ\bar U を超えること,つまり無差別曲線より原点から見て外側にあることを意味する。よって無差別曲線は原点Oに対して強く凸である。

3) 最適消費の組み合わせ

S1=Y1−C1S_1=Y_1-C_1 と C2=(1+r)S1+Y2C_2=(1+r)S_1+Y_2 から C2=(1+r)(Y1−C1)+Y2C_2=(1+r)(Y_1-C_1)+Y_2 であり,両辺を (1+r)>0(1+r)>0 で割って整理すると生涯予算制約 C1+C21+r=Y1+Y21+r≡W C_1+\frac{C_2}{1+r}=Y_1+\frac{Y_2}{1+r}\equiv W を得る。C2=(1+r)(Y1−C1)+Y2C_2=(1+r)(Y_1-C_1)+Y_2 を効用関数に代入すると,C1C_1 だけの最大化問題 max⁡C1 log⁡C1+βlog⁡{(1+r)(Y1−C1)+Y2} \max_{C_1}\ \log C_1+\beta\log\bigl\{(1+r)(Y_1-C_1)+Y_2\bigr\} になる。log⁡x\log x の微分が 1/x1/x であることを使うと,一階条件は 1C1−β(1+r)C2=0⟺C2=β(1+r) C1 \frac{1}{C_1}-\frac{\beta(1+r)}{C_2}=0 \quad\Longleftrightarrow\quad C_2=\beta(1+r)\,C_1 である。これは異時点間の限界代替率が 1+r1+r に等しいという条件にほかならない。目的関数の2階微分は −1C12−β(1+r)2C22<0 -\frac{1}{C_1^{2}}-\frac{\beta(1+r)^{2}}{C_2^{2}}<0 なので目的関数は狭義凹であり,一階条件を満たす内点は唯一の最大点である。C2=β(1+r)C1C_2=\beta(1+r)C_1 を生涯予算制約に代入すると C1+βC1=WC_1+\beta C_1=W,すなわち C1∗=W/(1+β)C_1^{*}=W/(1+\beta) となり C1∗=(1+r)Y1+Y2(1+β)(1+r),C2∗=β(1+r)C1∗=β{(1+r)Y1+Y2}1+β C_1^{*}=\frac{(1+r)Y_1+Y_2}{(1+\beta)(1+r)},\qquad C_2^{*}=\beta(1+r)C_1^{*}=\frac{\beta\bigl\{(1+r)Y_1+Y_2\bigr\}}{1+\beta} を得る。Y1>0Y_1>0,Y2>0Y_2>0 より C1∗>0C_1^{*}>0,C2∗>0C_2^{*}>0 であり,たしかに内点解になっている。

4) 正の貯蓄となる所得の範囲と借入制約

S1=Y1−C1∗>0S_1=Y_1-C_1^{*}>0 を書き下すと Y1−(1+r)Y1+Y2(1+β)(1+r)>0 Y_1-\frac{(1+r)Y_1+Y_2}{(1+\beta)(1+r)}>0 である。両辺に (1+β)(1+r)>0(1+\beta)(1+r)>0 を掛けて整理すると (1+β)(1+r)Y1−(1+r)Y1−Y2>0⟺β(1+r) Y1>Y2 (1+\beta)(1+r)Y_1-(1+r)Y_1-Y_2>0 \quad\Longleftrightarrow\quad \beta(1+r)\,Y_1>Y_2 となるから,求める範囲は Y1>Y2β(1+r) Y_1>\frac{Y_2}{\beta(1+r)} である。若年期の所得が,老年期の所得を β(1+r)\beta(1+r) で割った水準を超えるとき,この消費者は貯蓄する。

借金が不可能になるとは,選択に S1≥0S_1\ge0 という制約が加わることである。いま考えているのは S1>0S_1>0 となる場合なので,制約を課しても (C1∗,C2∗)(C_1^{*},C_2^{*}) はそのまま実行可能であり,制約は拘束しない。制約付き最大化の解は制約なしの解と一致するから,最適消費も効用も変化しない。

1) 長期均衡における各企業の生産量

限界費用と平均費用は MC(q)=4+2q,AC(q)=fq+4+q(q>0) \mathrm{MC}(q)=4+2q,\qquad \mathrm{AC}(q)=\frac{f}{q}+4+q \quad(q>0) である。参入・退出が自由な完全競争の長期均衡では,各企業は価格受容者として p=MC(q)p=\mathrm{MC}(q) を満たす量を選び,かつ参入・退出が止まるところまで利潤がゼロになるので p=AC(q)p=\mathrm{AC}(q) も成り立つ。両者が同時に成り立つのは平均費用が最小になる点である。 AC′(q)=−fq2+1=0⟹q∗=f \mathrm{AC}'(q)=-\frac{f}{q^{2}}+1=0 \quad\Longrightarrow\quad q^{*}=\sqrt{f} であり,AC′′(q)=2f/q3>0\mathrm{AC}''(q)=2f/q^{3}>0 なのでこれは最小点である。このとき p∗=AC(q∗)=ff+4+f=4+2f=4+2q∗=MC(q∗) p^{*}=\mathrm{AC}(q^{*})=\frac{f}{\sqrt{f}}+4+\sqrt{f}=4+2\sqrt{f} =4+2q^{*}=\mathrm{MC}(q^{*}) となり,p=MC=ACp=\mathrm{MC}=\mathrm{AC} が同時に成立することが確かめられる。

2) 固定費用の増加と企業数の変化

1) より長期均衡価格は ff だけで決まる。逆需要 p=10−Qp=10-Q に p∗=4+2fp^{*}=4+2\sqrt{f} を代入すると総取引量は Q∗=10−p∗=6−2f Q^{*}=10-p^{*}=6-2\sqrt{f} であり,Q=n⋅qQ=n\cdot q から企業数は n∗=Q∗q∗=6−2ff n^{*}=\frac{Q^{*}}{q^{*}}=\frac{6-2\sqrt{f}}{\sqrt{f}} となる。f=1/4f=1/4 のときは q∗=1/2q^{*}=1/2,p∗=5p^{*}=5,Q∗=5Q^{*}=5 で n∗=10n^{*}=10,f=1f=1 のときは q∗=1q^{*}=1,p∗=6p^{*}=6,Q∗=4Q^{*}=4 で n∗=4n^{*}=4 である。いずれも整数になるので,企業数はちょうど 1010 から 44 へ6社減少する。

理由は2つの方向から説明できる。固定費用が上がると平均費用の最小点が右に動いて1社あたりの生産量が増え(1/2→11/2\to1),同時に最小平均費用が上がるので均衡価格が上がり総需要が減る(5→45\to4)。分子の Q∗Q^{*} が減り分母の q∗q^{*} が増えるため,企業数は両方向から押し下げられる。

3) クールノー競争にした場合の利潤

企業数を n=4n=4,固定費用を f=1f=1 に固定する。企業 ii の利潤は πi=(10−Q) qi−(1+4qi+qi2),Q=qi+∑j≠iqj \pi_i=(10-Q)\,q_i-\bigl(1+4q_i+q_i^{2}\bigr), \qquad Q=q_i+\sum_{j\neq i}q_j である。∂Q/∂qi=1\partial Q/\partial q_i=1 に注意して qiq_i で微分すると,一階条件は 10−Q−qi−4−2qi=0⟺6−4qi−∑j≠iqj=0 10-Q-q_i-4-2q_i=0 \quad\Longleftrightarrow\quad 6-4q_i-\sum_{j\neq i}q_j=0 となる。2階微分は −4<0-4<0 なので最大化の条件である。対称均衡 qi=qq_i=q では ∑j≠iqj=3q\sum_{j\neq i}q_j=3q だから 6−4q−3q=0⟹q=67,Q=247,p=10−247=467. 6-4q-3q=0 \quad\Longrightarrow\quad q=\frac{6}{7},\qquad Q=\frac{24}{7},\qquad p=10-\frac{24}{7}=\frac{46}{7}. このときの各企業の利潤は π=467⋅67−(1+4⋅67+3649)=27649−16849−3649−1=7249−1=2349 \pi=\frac{46}{7}\cdot\frac{6}{7} -\left(1+4\cdot\frac{6}{7}+\frac{36}{49}\right) =\frac{276}{49}-\frac{168}{49}-\frac{36}{49}-1 =\frac{72}{49}-1=\frac{23}{49} である。一方 2) の f=1f=1 の場合は価格受容者として行動しており,p=6p=6,q=1q=1,費用 1+4+1=61+4+1=6 で利潤はちょうど0であった。したがって各企業の利潤は 23/4923/49 だけ増加する。

1) 需要の価格弾力性

各企業は固定費用がなく限界費用が一定 22 なので,完全競争市場の供給曲線は p=2p=2 の水平線である。したがって課税前の均衡価格は両市場とも pA=pB=2p_A=p_B=2 であり,均衡数量は QA=8−2=6,QB=7−0.5×2=6 Q_A=8-2=6,\qquad Q_B=7-0.5\times2=6 となる。需要の価格弾力性を ε=−dQdp⋅pQ \varepsilon=-\frac{dQ}{dp}\cdot\frac{p}{Q} と定義し,dQA/dpA=−1dQ_A/dp_A=-1,dQB/dpB=−0.5dQ_B/dp_B=-0.5 を代入すると εA=1×26=13,εB=0.5×26=16 \varepsilon_A=1\times\frac{2}{6}=\frac{1}{3},\qquad \varepsilon_B=0.5\times\frac{2}{6}=\frac{1}{6} である。取引量はどちらも 66 で等しいが,財Bの需要のほうが価格に鈍感で,弾力性は財Aの半分である。

2) どちらの税率を大きくするべきか

供給が水平なので,従量税 tt を課すと消費者価格はちょうど 2+t2+t に上がり,税負担は全額が消費者に帰着する。課税後の取引量は QA=8−(2+tA)=6−tA,QB=7−0.5(2+tB)=6−0.5 tB Q_A=8-(2+t_A)=6-t_A,\qquad Q_B=7-0.5(2+t_B)=6-0.5\,t_B である。死荷重は,税額を高さ,取引量の減少を底辺とする三角形なので DWLA=12 tA⋅tA=tA22,DWLB=12 tB⋅0.5 tB=tB24 \mathrm{DWL}_A=\frac12\,t_A\cdot t_A=\frac{t_A^{2}}{2},\qquad \mathrm{DWL}_B=\frac12\,t_B\cdot 0.5\,t_B=\frac{t_B^{2}}{4} であり,税収は RA=tA(6−tA),RB=tB(6−0.5 tB) R_A=t_A(6-t_A),\qquad R_B=t_B(6-0.5\,t_B) である。一定の税収 R=RA+RBR=R_A+R_B を最小の死荷重で調達するには,税収を限界的に1単位増やしたときの死荷重の増分が両市場で等しくなければならない。 dDWLA/dtAdRA/dtA=dDWLB/dtBdRB/dtB⟺tA6−2tA=tB/26−tB \frac{d\mathrm{DWL}_A/dt_A}{dR_A/dt_A} =\frac{d\mathrm{DWL}_B/dt_B}{dR_B/dt_B} \quad\Longleftrightarrow\quad \frac{t_A}{6-2t_A}=\frac{t_B/2}{6-t_B} 右の等式の分母を払うと tA(6−tB)=tB2(6−2tA) ⟺ 6tA−tAtB=3tB−tAtB ⟺ tB=2tA t_A(6-t_B)=\frac{t_B}{2}(6-2t_A) \ \Longleftrightarrow\ 6t_A-t_At_B=3t_B-t_At_B \ \Longleftrightarrow\ t_B=2t_A となる(税収が税率について増加している内点,すなわち 0<tA<30<t_A<3,0<tB<60<t_B<6 を考えている)。したがって効率性の観点からは tBt_B のほうを大きく設定するべきであり,最適には財Bの税率を財Aの2倍にする。

最終答

C1∗=(1+r)Y1+Y2(1+β)(1+r)C_1^{*}=\dfrac{(1+r)Y_1+Y_2}{(1+\beta)(1+r)}, C2∗=β{(1+r)Y1+Y2}1+βC_2^{*}=\dfrac{\beta\bigl\{(1+r)Y_1+Y_2\bigr\}}{1+\beta}

Y1>Y2β(1+r)Y_1>\dfrac{Y_2}{\beta(1+r)}。この範囲では借入の禁止は拘束せず,効用は変化しない。

q∗=fq^{*}=\sqrt{f}(このとき長期均衡価格は p∗=4+2fp^{*}=4+2\sqrt{f})

企業数は n∗=10n^{*}=10 から n∗=4n^{*}=4 へ,6社減少する

各企業の利潤は 00 から 2349\dfrac{23}{49} へ,2349 (≈0.47)\dfrac{23}{49}\ (\approx0.47) だけ増加する

εA=13\varepsilon_A=\dfrac13, εB=16\varepsilon_B=\dfrac16(いずれも課税前の均衡点 p=2p=2 での値)

tBt_B を大きくする。最適には tB=2tAt_B=2t_A で,これは弾力性の比 εA:εB=2:1\varepsilon_A:\varepsilon_B=2:1 の逆比にあたる。

第2問 — マクロ経済学:国民経済計算・IS-LM モデル・ソロー・モデル

答案の分量

2語なので各4行程度で足りる。GDP は「一定期間」「国内」「付加価値」の3語を必ず入れ,GDP デフレーターは定義式を1本書く。どちらも名目と実質の区別に触れると,2語がつながって見える。

失点しやすい点

GDP を「生産額の合計」と書くと中間投入の二重計上になるので,付加価値であることを明示する。GNI(GNP)との違いは基準が「場所」か「居住者」かであり,海外からの純要素所得の扱いで区別する。GDP デフレーターを消費者物価指数と同一視しないこと。輸入原油価格の上昇は消費者物価指数を押し上げる一方,輸入は支出面の GDP から差し引かれるため,GDP デフレーターにはむしろ押し下げる方向に働きうる,という違いは説明の締めに使える。

設問2 IS-LM モデルの導出と金融政策

方針

2)3) は「求めよ」に加えて「議論せよ」とあるので,傾きの符号を式で示したうえで,その符号が生じる経済的な理由を1〜2文添える。式だけを書いて終えると,設問の後半に答えていないことになる。4) は MM を文字のまま残して連立を解き,最後に MM で微分して符号を見れば,それがそのまま比較静学の答えになる。

図で見る 4)

数値例として M=100M=100 と M=200M=200 の2本の LM 曲線を描いた。均衡はそれぞれ (Y,r)=(300,0.4)(Y,r)=(300,0.4) と (350,0.3)(350,0.3) である。

YY が 5050 増えて rr が 0.10.1 下がっており,dY∗/dM=1/2dY^{*}/dM=1/2 と dr∗/dM=−1/1000dr^{*}/dM=-1/1000 に一致する。IS 曲線が動かないので,均衡点は必ず右下がりの IS 曲線上を移動する。

検算

M=100M=100 のとき求めた (Y,r)=(300,0.4)(Y,r)=(300,0.4) を2つの式に戻すと,IS 曲線は 500−500×0.4=300=Y500-500\times0.4=300=Y,LM 曲線は ℓyY−ℓrr=300−500×0.4=100=M/P\ell_yY-\ell_rr=300-500\times0.4=100=M/P となり,両市場が同時に均衡している。また M→500M\to500 の極限では r∗→0r^{*}\to0,Y∗→500Y^{*}\to500 で,これは IS 曲線の r=0r=0 における産出 Y=500Y=500 に一致する。0<M<5000<M<500 という仮定は,利子率が正である内点解に議論を限るためのものである。

失点しやすい点

IS 曲線の傾きの符号には c<1c<1 の仮定が効いているので,これを書き落とさない。c≥1c\ge1 なら 1−c≤01-c\le0 で結論が変わる。LM 曲線について「MM が増えると上にシフトする」と誤る答案があるが,rr について解いた式の切片は −M/(ℓrP)-M/(\ell_rP) なので,MM が増えれば切片が下がり,曲線は下(右)へシフトする。4) は P=1P=1 が与えられているので実質と名目の区別で悩む必要はないが,一般には動くのは M/PM/P である点は押さえておく。

設問3 離散時間のソロー・モデル

方針

1) は「1人当たりに直す」操作を,生産関数の1次同次性と資本の遷移式の両方に施すだけである。Lt+1=(1+n)LtL_{t+1}=(1+n)L_t で割るために分母に (1+n)(1+n) が残る点だけが,連続時間版と見た目を変える。2) は Δk\Delta k の符号と gg が増加関数であることの2つを言えば,局所的な議論を経ずに大域的な単調収束まで示せる。

図で見る収束

下図は α=1/2\alpha=1/2,n=1n=1,sA=2sA=2 とした模式図で,このとき k∗=(sA/n)2=4k^{*}=(sA/n)^{2}=4 である。

kt+1=g(kt)k_{t+1}=g(k_t) の曲線は原点から立ち上がり,45度線と k∗k^{*} でただ一度だけ交わる。k0=1k_0=1 から出発すると,曲線と45度線の間を階段状に進みながら毎期 kk が増え続け,k∗k^{*} に近づく。交点で曲線の傾きが1より小さいことが,収束することの図形的な表現である。

連続時間版との比較

連続時間で減耗率 δ\delta を含む標準的な形は k˙=sAkα−(n+δ)k\dot k=sAk^{\alpha}-(n+\delta)k であり,本問はその離散版で δ=0\delta=0 とした場合にあたる。定常状態は k∗={sA/(n+δ)}1/(1−α)k^{*}=\{sA/(n+\delta)\}^{1/(1-\alpha)} で,δ=0\delta=0 とおけば本問の答えに一致する。分母の (1+n)(1+n) は正なので Δk\Delta k の符号には影響せず,安定性の議論は連続時間版と同じ形になる。

検算

A=1A=1,α=1/2\alpha=1/2,s=0.2s=0.2,n=0.05n=0.05 とすると k∗=(0.2/0.05)2=16k^{*}=(0.2/0.05)^{2}=16 である。kt=16k_t=16 を遷移式に入れると kt+1=(16+0.2×4)/1.05=16.8/1.05=16k_{t+1}=(16+0.2\times4)/1.05=16.8/1.05=16 となり定常状態が再現される。kt=9k_t=9 からなら kt+1=(9+0.6)/1.05=9.14>9k_{t+1}=(9+0.6)/1.05=9.14>9 で増加し,kt=25k_t=25 からなら (25+1)/1.05=24.76<25(25+1)/1.05=24.76<25 で減少して,どちらも 1616 に向かう。

失点しやすい点

1) で Lt+1=(1+n)LtL_{t+1}=(1+n)L_t を使わずに kt+1=(Kt+sYt)/Ltk_{t+1}=(K_t+sY_t)/L_t としてしまうと,人口成長による1人当たり資本の希薄化を表す項 nknk が落ち,正の定常状態が存在しなくなる。減耗がないという設定なので δ\delta を勝手に足さない。2) で「g′(k∗)<1g'(k^{*})<1 だから安定」とだけ書くのは k∗k^{*} の近傍に限った議論なので,Δk\Delta k の符号から大域的な単調収束まで示すと完全な解答になる。k0>0k_0>0 が与えられていることも,k=0k=0 という自明な定常状態を議論から除くために効いている。

この設問が試していること

モデルを1人当たり変数に書き直す手続きと,差分方程式の安定性を符号で示す手続きを,計算量を抑えた形で確認している。仮定がどこで効くかを言えるかが差になる。

マクロ経済学:国民経済計算・IS-LM モデル・ソロー・モデルの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(全2問)

    ミクロ経済学:消費者理論・複占・外国独占企業 / マクロ経済学:用語・金融政策の効果・ソロー・モデル

  • 2025年度(このページ・全2問)

    ミクロ経済学:語句説明・2期間消費・長期均衡と課税 / マクロ経済学:国民経済計算・IS-LM モデル・ソロー・モデル

  • 2024年度(全2問)

    ミクロ経済学:独占の等利潤曲線・労働供給・逆選択 / マクロ経済学:国際収支・小国開放経済・AD-AS

  • 2023年度(全2問)

    ミクロ経済学:独占・限界効用・差別化財市場 / マクロ経済学:マンデル=フレミング・成長モデル

2025年度の出題内容

全2問

この2問の分野はマクロ経済学1問・ミクロ経済学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問ミクロ経済学語句説明・2期間消費・長期均衡と課税1) で落としやすい場合分け / 図で見る 3) と 4)あり
第2問マクロ経済学国民経済計算・IS-LM モデル・ソロー・モデル図で見る 4) / 図で見る収束あり

2025年度の解説には検算2件・失点しやすい点2件が付いています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 2問 → 2025年度 2問
2024年度の解答例

京都大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(直近4年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
一般選抜は英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-26
京都大学の公式過去問PDF