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京大 経営管理教育部(専門職学位課程) 経済学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野はマクロ経済学1問、ミクロ経済学1問です。解説はすべて公開し、途中式と最終答は解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — ミクロ経済学:独占・限界効用・差別化財市場

答案の分量

「簡単に説明しなさい」という指示なので,1語につき定義1文と記号・式1本,補足1文で足りる。5語句で解答用紙の半ページ程度が目安である。式を1本添えるだけで,言葉だけの答案とはっきり差がつく。

失点しやすい点

基数的・序数的効用は「数値に意味があるかどうか」で終わらせず,許される変換の範囲(正の1次変換か,狭義単調増加変換か)で書くと正確になる。収穫逓増は規模に関する概念であり,1要素の限界生産力の話と混同しない。パレート改善は「全員が得をすること」ではなく「誰も損をせず,少なくとも1人が得をすること」である。ナッシュ均衡は「全員にとって最善の状態」ではないので,効率性と切り離して定義する。

設問2 限界費用の上昇と独占価格・マークアップ率

方針

1) は「独占価格は限界費用の非減少関数か」という比較静学の問題である。答案では,特定の需要関数を仮定しないで済む顕示選好の議論を主に置き,一階条件による議論を狭義の不等号の根拠として添えるとよい。利潤の交差偏微分が ∂2π/∂p ∂c=−Q′(p)>0\partial^2\pi/\partial p\,\partial c=-Q'(p)>0 であること(増加差分性)を指摘して,最適解が cc について非減少になると述べてもよい。2) は不等式の同値変形だけで済むので,計算より「何と何が同値か」を書く順序が採点対象になる。

2) の経済的な意味

最適点ではラーナー指数 (p−c)/p=1/ε(p-c)/p=1/\varepsilon が成り立つので,マークアップ率の上昇は,限界費用上昇後の最適点で需要の価格弾力性 ε\varepsilon が小さくなることと同じである。また与えられた条件は,価格の限界費用に対する弾力性が 11 以上であること,つまり費用上昇が比例以上に価格へ転嫁されることを意味する。

2通りの需要で確かめる

定弾力性需要 Q=Ap−ε (ε>1)Q=Ap^{-\varepsilon}\ (\varepsilon>1) では p=εε−1cp=\dfrac{\varepsilon}{\varepsilon-1}c なので p1/p0=c1/c0p_1/p_0=c_1/c_0 となり,与えられた条件は等号で成り立ち,マークアップ率は 1/ε1/\varepsilon で一定である。一方,線形需要 Q=a−bpQ=a-bp では p=a2b+c2p=\dfrac{a}{2b}+\dfrac{c}{2} であり,p1c0−p0c1=a2b(c0−c1)<0p_1c_0-p_0c_1=\dfrac{a}{2b}(c_0-c_1)<0 から p1/p0<c1/c0p_1/p_0<c_1/c_0 となって条件は満たされない。実際このとき c/pc/p は cc とともに上がるので,マークアップ率は低下する。条件がどのような需要を選び出しているかを1行添えると,論述に厚みが出る。

失点しやすい点

1) で「費用が上がれば価格も上がるのは当然」と書くだけでは論じたことにならない。狭義減少という需要の性質と,等号が起こる場合の存在まで触れて初めて「論じた」ことになる。2) では c0>0c_0>0 を断らずに c0c_0 で割ると,限界費用が 00 の場合に上昇率が定義できない。また「マークアップ額 p−cp-c」と「マークアップ率 (p−c)/p(p-c)/p」を取り違えると結論が変わるので,率であることを式で明示する。

設問3 最適消費の比較と限界効用逓減の法則

方針

準線形効用なので複合財(貨幣)の限界効用が 11 で一定になり,一階条件は u′(x)=pu'(x)=p という素直な形になる。この式だけを見ると「pp が上がれば u′u' が大きい点に移る」というだけで,u′u' が減少しているかどうかは分からない。x1<x0x_1<x_0 をどうやって示すかが山場で,凹性を仮定しない顕示選好の議論を使うのが安全である。凹性を先に仮定してしまうと,結論(限界効用逓減)を前提に置くことになり,設問に答えたことにならない。

何を試している設問か

「最適化行動の観察から効用関数の形状をどこまで復元できるか」を問う設問である。需要法則(価格が上がれば需要は減る)は凹性がなくても成り立つのに対し,限界効用逓減は需要法則より強い性質で,観察からは選ばれる範囲でしか確かめられない。この非対称性に気づいているかどうかで大きく差がつく。

答案の書き方

結論を先に置き,(i) 顕示選好で x1≤x0x_1\le x_0,(ii) 一階条件で u′(x1)>u′(x0)u'(x_1)>u'(x_0),(iii) よって選ばれる範囲では逓減が確認できる,(iv) しかし選ばれない区間があるので全域では言えない,の4段で書く。反例は,u′u' を区分的に与えて u′′>0u''>0 の区間を1つ作り,その区間の点が最適にならないことを効用の比較で示せば十分である。図を添えると説明が短くて済む。

前提の確認

内点解を仮定した点は答案にも明記する。p≥u′(0)p\ge u'(0) なら x=0x=0 の隅解になり一階条件は等号で成り立たない。また m≥0m\ge0 の制約があるので I≥pxI\ge px が必要で,所得が小さいときは x=I/px=I/p の隅解になる。設問は「微小増加」を扱うので,p0p_0 の近傍で内点解が保たれる場合を考えればよい。

設問4 差別化財市場の対称均衡

計算を短くする別解

一階条件は qi=(2+n)(pi−ε)q_i=(2+n)(p_i-\varepsilon) と書き直せる(限界費用からの上乗せと需要の傾きの関係)。また対称均衡では q∗=4−2p∗q^{*}=4-2p^{*},すなわち 2−p∗=q∗/22-p^{*}=q^{*}/2 である。この2つを使うと π=(p∗−ε)q∗=(q∗)2n+2,CS=(2−p∗)q∗2=(q∗)24 \pi=(p^{*}-\varepsilon)q^{*}=\frac{(q^{*})^{2}}{n+2},\qquad CS=\frac{(2-p^{*})q^{*}}{2}=\frac{(q^{*})^{2}}{4} となり,p∗p^{*} も q∗q^{*} も具体的に求めずに πCS=4n+2 \frac{\pi}{CS}=\frac{4}{n+2} が出る。答案では 1) で p∗,q∗p^{*},q^{*} を求めているので本解答の順で書けばよいが,検算としてこの導出を使うと確実である。

ε\varepsilon が消える理由

上の別解が示すように,π\pi と CSCS はともに (q∗)2(q^{*})^{2} に比例し,ε\varepsilon は q∗q^{*} を通じてしか入らない。したがって比を取る段階で ε\varepsilon が完全に消え,極限を取るまでもなく π/CS=4/(n+2)\pi/CS=4/(n+2) が恒等的に成り立つ。設問が極限の形で問うているのは,最後まで整理し切れているかを確かめるためで,ε\varepsilon を残した複雑な分数のまま答えると計算違いを疑われる。

検算

n=2n=2,ε=0\varepsilon=0 とすると p∗=4/6=2/3p^{*}=4/6=2/3,q∗=4−4/3=8/3q^{*}=4-4/3=8/3,π=(2/3)(8/3)=16/9\pi=(2/3)(8/3)=16/9,CS=12(2−23)83=16/9CS=\frac12(2-\frac23)\frac83=16/9 で,比は 1=4/(2+2)1=4/(2+2) となり一致する。また n→∞n\to\infty では p∗→εp^{*}\to\varepsilon で価格が限界費用に近づき,π→0\pi\to0,CS→(2−ε)2CS\to(2-\varepsilon)^{2} となるので π/CS→0\pi/CS\to0 であり,4/(n+2)→04/(n+2)\to0 と整合する。企業数が増えるほど競争的な結果に近づくという性質が式で確かめられる。

失点しやすい点

最大の誤りは,「平均価格 PP に与える影響を無視する」という指示を読み落として,先に P=piP=p_i を代入してしまうことである。そうすると qi=4−2piq_i=4-2p_i となり,π=(p−ε)(4−2p)\pi=(p-\varepsilon)(4-2p) の最大化から p=1+ε/2p=1+\varepsilon/2 という独占の答えが出て,nn に依存しない誤答になる。PP を定数扱いして微分し,微分したあとで対称条件 pi=P=p∗p_i=P=p^{*} を課す,という順序が要点である。もう1つは,消費者余剰の式で q∗q^{*} ではなく総需要 nq∗nq^{*} を使ってしまう誤りで,問題文は「各企業ごとの消費者余剰」と定めているので企業1社分で計算する。

何を試している設問か

差別化財の価格競争(線形需要版の独占的競争)で,「自分の価格が市場平均に与える影響を無視する」というナッシュ均衡の考え方を正しく使えるか,そして企業数 nn が増えるにつれて利潤が消費者余剰に比べて小さくなることを式で示せるかを試している。π/CS=4/(n+2)\pi/CS=4/(n+2) という簡単な形にまとめられるかどうかが分かれ目である。

ミクロ経済学:独占・限界効用・差別化財市場の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — マクロ経済学:マンデル=フレミング・成長モデル

答案の分量

「簡潔に説明しなさい」とあるので各用語3〜4行でよい。ソロー残差は測定式,恒常所得仮説は平均消費性向のパズルとの関係,等価定理は成立条件を1つか2つ,をそれぞれ添えると,定義だけの答案と差がつく。

失点しやすい点

ソロー残差を「技術進歩そのもの」と断定しない。測り方の定義(残差として求める)と,そこに何が混入するかまで書くのが安全である。恒常所得仮説を「消費は所得と無関係」と書くのは誤りで,恒常所得には強く反応し一時的所得には反応しない,という区別が核心である。公債の等価定理は「公債と租税はいつでも同じ」ではなく,強い条件の下での命題であることを明示する。3つとも,どれか1つに成立条件や限界を書き添えると理解の深さが伝わる。

設問2 輸入制限の効果(マンデル=フレミング・モデル)

方針

出発点はどちらも「小国で資本移動が完全だから r=r∗r=r^{*}」である。そのうえで,変動相場制では為替レートが調整して ISIS を元に戻すので所得は LMLM 曲線だけで決まり,固定相場制では為替レートを守るために貨幣供給が調整して LMLM が動くので所得は ISIS 曲線だけで決まる。「どちらの曲線が内生的に動くか」を最初に一文で書いてから各設問に入ると,2つの答えが対称的に整理でき,論述が短くなる。

純輸出の確かめ方

曲線のシフトだけを見て純輸出を判断すると誤りやすい。NX=S−INX=S-I を使えば,rr が r∗r^{*} に固定されている限り II は動かないので,NXNX の増減は YY の増減だけで決まる。変動相場制では YY が不変なので NXNX も不変,固定相場制では YY が増えるので NXNX も増える,と一貫して説明できる。「輸入を減らしたのだから純輸出は必ず増える」という直感は,変動相場制では誤りである。

符号の約束

為替レートが外国通貨1単位あたりの自国通貨額で定義されているので,ee の低下が自国通貨の増価である。増価・減価と ee の上下を取り違えると結論の向きが逆になるので,答案の冒頭で「ee の低下=増価」と確認しておく。設問がわざわざ定義を書いているのは,ここを確かめるためである。

政策的な含意

変動相場制では,輸入制限は所得も貿易収支も改善せず,増価を通じて輸出も同じだけ減らす。貿易量だけが縮小するので,国内厚生はむしろ低下する。固定相場制では所得と純輸出が増えるが,それは為替介入に伴う金融緩和の効果であって,保護政策そのものの効果ではない。この対比を最後に一文添えると論述が締まる。

設問3 政府部門を含むソロー・モデル

方針

政府部門が入っていても,最初に均衡財政 Tt=Gt=gYtT_t=G_t=gY_t を代入して Ct=(1−s)(1−g)YtC_t=(1-s)(1-g)Y_t と書き直せば,貯蓄率が ss から s(1−g)s(1-g) に置き換わっただけの標準的なソロー・モデルになる。この置き換えを 1) の冒頭で宣言しておくと,2)〜4) は教科書どおりの手順で短く書ける。政府支出が資本蓄積に回らない(GG はすべて消費される)という設定であることも一言添えるとよい。

離散時間での注意

1人当たりに直すときに割るのは Lt+1=(1+n)LtL_{t+1}=(1+n)L_t であって LtL_t ではない。分母の (1+n)(1+n) を落としても定常状態 2) の答えは変わらないが,動学の式 1) は誤りになる。連続時間版の k˙=s(1−g)kα−(n+δ)k\dot k=s(1-g)k^{\alpha}-(n+\delta)k と見比べると,右辺を (1+n)(1+n) で割る点だけが違う。

黄金律の別の見方

一階条件 α(1−g)kα−1=n+δ\alpha(1-g)k^{\alpha-1}=n+\delta は,資本の限界生産力 MPK=αkα−1MPK=\alpha k^{\alpha-1} を使うと (1−g)MPK=n+δ(1-g)MPK=n+\delta と書ける。政府が産出の gg を吸い上げる分だけ,民間消費を最大にする資本量は g=0g=0 の場合より小さくなる。なお,政府支出も国民の便益になると考えて c+Gt/Lt=y−(n+δ)kc+G_t/L_t=y-(n+\delta)k を最大化するなら,一階条件は αkα−1=n+δ\alpha k^{\alpha-1}=n+\delta となって gg に依存しない資本量が出る(実現する貯蓄率は s=α/(1−g)s=\alpha/(1-g))。どちらの定義で解いたかを一言断ると誤解がない。本解答は家計の消費 Ct/LtC_t/L_t を最大化する標準的な定義によっている。

検算

α=1/3\alpha=1/3,g=0.2g=0.2,n=0.02n=0.02,δ=0.05\delta=0.05 とし,s=0.3s=0.3 から s′=0.25s'=0.25 へ下げてみる。s=0.3s=0.3 では s(1−g)=0.24s(1-g)=0.24 なので k∗=(0.24/0.07)3/2≈6.35k^{*}=(0.24/0.07)^{3/2}\approx6.35,y∗≈1.852y^{*}\approx1.852,c∗=0.7×0.8×1.852≈1.037c^{*}=0.7\times0.8\times1.852\approx1.037。低下の直後は kk が動かないので c=0.75×0.8×1.852≈1.111c=0.75\times0.8\times1.852\approx1.111 に上がる。新しい定常状態は s′(1−g)=0.20s'(1-g)=0.20 で k∗∗=(0.20/0.07)3/2≈4.83k^{**}=(0.20/0.07)^{3/2}\approx4.83,y≈1.690y\approx1.690,c∗∗=0.75×0.8×1.690≈1.014c^{**}=0.75\times0.8\times1.690\approx1.014 となり,元の 1.0371.037 を下回る。s=0.3<α=1/3s=0.3<\alpha=1/3 なので「長期は減少」という結論と整合している。

失点しやすい点

4) で「貯蓄率が下がるから消費が増える」とだけ書くと短期の話にしかならない。長期の符号は ss と α\alpha の大小で変わるので,黄金律との比較を必ず明示する。また「短期」を「新しい定常状態に移るまでの過渡期」と混同しないよう,変化した期には kk が動かないことを最初に述べる。3) では kgoldk_{\mathrm{gold}} を求めただけで終わらせず,それを実現する貯蓄率が s=αs=\alpha であることまで書くと,2) との対応がはっきりする。

答案に書く順序

4) は,(i) 変化した期には ktk_t が動かないので yty_t も動かず,ct=(1−s)(1−g)ytc_t=(1-s)(1-g)y_t が上にジャンプする,(ii) その後 ktk_t は新しい定常状態へ向けて単調に減少し,ctc_t も単調に低下する,(iii) 長期の水準は c∗(s)c^{*}(s) の ss に関する符号で決まり,境界が s=αs=\alpha である,の3段で書く。c∗(s)c^{*}(s) を対数微分する部分だけが計算らしい計算なので,そこは式を残す。図を1枚添えると,短期と長期の向きが逆になりうることが一目で伝わる。ss の低下が「初期は得,後で損」になりうるのは,資本蓄積を通じた将来の産出の減少という遅れて効く経路があるためである,と一文で締めるとよい。

何を試している設問か

政府部門という余分な要素を,均衡財政の代入によって標準モデルに帰着させられるか,そして定常状態の比較静学を黄金律との位置関係で符号判定できるかを試している。計算そのものは平易なので,4) の場合分けを落とさないことが得点差になる。

マクロ経済学:マンデル=フレミング・成長モデルの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(全2問)

    ミクロ経済学:消費者理論・複占・外国独占企業 / マクロ経済学:用語・金融政策の効果・ソロー・モデル

  • 2025年度(全2問)

    ミクロ経済学:語句説明・2期間消費・長期均衡と課税 / マクロ経済学:国民経済計算・IS-LM モデル・ソロー・モデル

  • 2024年度(全2問)

    ミクロ経済学:独占の等利潤曲線・労働供給・逆選択 / マクロ経済学:国際収支・小国開放経済・AD-AS

  • 2023年度(このページ・全2問)

    ミクロ経済学:独占・限界効用・差別化財市場 / マクロ経済学:マンデル=フレミング・成長モデル

2023年度の出題内容

全2問

この2問の分野はマクロ経済学1問・ミクロ経済学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問ミクロ経済学独占・限界効用・差別化財市場2) の経済的な意味 / 2通りの需要で確かめるあり
第2問マクロ経済学マンデル=フレミング・成長モデル純輸出の確かめ方 / 符号の約束あり

2023年度の解説には検算2件・失点しやすい点2件・答案に書く順序1件・答案の書き方1件が付いています。

京都大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(直近4年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
一般選抜は英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-26
京都大学の公式過去問PDF