院試hub

九州大学 工学府 化学工学専攻

2027年度 院試数学の解答と途中式

2026年8月実施 · 問題1〜3の全8小問 · 無料解説

2027年度入学者向け、2026年8月実施の数学です。公式問題、公式解答例、出題意図と照合しながら、全3問・8小問の計算を説明します。問題1は極座標の面積、問題2は共鳴する非同次微分方程式、問題3は正規直交化とQR分解です。

問題1:接線への垂足を極座標で表す

放物線の接点をP=(1+t²/4, t)、−2<t<2とおきます。垂足Hは、接線上にあり、原点からHへのベクトルが接線に垂直になる点です。この2条件から座標を決めます。

(1.1) 接線の法線ベクトルからrを求める

放物線をx=1+y²/4とみると、接点でdx/dy=t/2です。接線を整理すると次の式になり、法線ベクトルはn=(1, −t/2)と読めます。

x−(1+t24)=t2(y−t),∴x−t2y=1−t24.\begin{aligned}x-\left(1+\frac{t^2}{4}\right)&=\frac t2(y-t),\\\therefore\quad x-\frac t2 y&=1-\frac{t^2}{4}.\end{aligned}

H=λnを接線の式へ代入してλを決めます。|t|<2なのでλは正で、Hはnと同じ向きです。

λ(1+t24)=1−t24,H=1−t2/41+t2/4(1,−t2).\begin{aligned}\lambda\left(1+\frac{t^2}{4}\right)&=1-\frac{t^2}{4},\\H&=\frac{1-t^2/4}{1+t^2/4}\left(1,-\frac t2\right).\end{aligned}

したがってtan θ=−t/2です。指定された角度範囲ではcos θ>0なので、平方根の符号も確定できます。

r=1−t2/41+t2/4=(1−tan⁡2θ)cos⁡θ=2cos⁡θ−1cos⁡θ,−π4<θ<π4.\begin{aligned}r&=\frac{1-t^2/4}{\sqrt{1+t^2/4}}\\&=(1-\tan^2\theta)\cos\theta\\&=\boxed{2\cos\theta-\frac1{\cos\theta}},\qquad -\frac\pi4<\theta<\frac\pi4.\end{aligned}

接点の位置ベクトルと、垂足の位置ベクトルは異なります。ここでrはOHの長さです。t=0なら接線はx=1、H=(1,0)なのでr=1となり、式とも一致します。

接線への垂足Hが描く曲線灰色の放物線の点Pから引いた接線へ、原点Oから垂線を下ろす。緑色の閉曲線がHの軌跡と原点で囲む領域。図は接点のy座標が1の場合。OHPxyHの軌跡接線
接点のy座標をt=1とした例。緑色の領域の面積を求めます。

(1.2) 原点を加えて閉じた領域の面積

区間内ではr>0、両端でr→0です。θがこの区間を1回動くと曲線を一周するので、極座標の面積公式をそのまま使えます。

S=12∫−π/4π/4(2cos⁡θ−1cos⁡θ)2dθ=12∫−π/4π/4(4cos⁡2θ−4+sec⁡2θ)dθ=12[−2θ+sin⁡2θ+tan⁡θ]−π/4π/4=2−π2.\begin{aligned}S&=\frac12\int_{-\pi/4}^{\pi/4}\left(2\cos\theta-\frac1{\cos\theta}\right)^2d\theta\\&=\frac12\int_{-\pi/4}^{\pi/4}\left(4\cos^2\theta-4+\sec^2\theta\right)d\theta\\&=\frac12\left[-2\theta+\sin2\theta+\tan\theta\right]_{-\pi/4}^{\pi/4}\\&=\boxed{2-\frac\pi2}.\end{aligned}

rだけを積分したり、上下対称を理由に2倍したあと同じ区間を積分したりすると面積がずれます。上式は上下両方を含んでいます。

問題2:3つの非同次微分方程式

一般解は「同次方程式の一般解+特解」です。右辺と同じ形が同次解に含まれるとき、その形をそのまま特解にしても左辺が0になります。重複する回数に応じてxを掛けるか、指数関数をくくって解きます。以下の定数C₁、C₂は各小問で独立です。

(2.1) 重根2に対する共鳴

y′′−4y′+4y=x+e2x.y''-4y'+4y=x+e^{2x}.

特性方程式は(m−2)²=0なので、同次解は(C₁+C₂x)e²ˣです。右辺のxには特解ax+bを対応させます。代入後の係数比較で4a=1、4b−4a=0となり、a=b=1/4です。

右辺のe²ˣに対してはy=e²ˣzとおくと、左辺がe²ˣz″になります。z″=1の特解はx²/2なので、求める一般解は次のとおりです。

y=(C1+C2x)e2x+x+14+x22e2x\boxed{y=(C_1+C_2x)e^{2x}+\frac{x+1}{4}+\frac{x^2}{2}e^{2x}}

e²ˣだけでなくxe²ˣも同次解です。そのため、特解ではx²e²ˣまで次数を上げる必要があります。

(2.2) 同じ振動数の余弦による共鳴

y′′+9y=cos⁡3x.y''+9y=\cos3x.

同次解はC₁cos 3x+C₂sin 3xです。特解をAx sin 3xとおくと、左辺は6A cos 3xになるのでA=1/6です。

y=C1cos⁡3x+C2sin⁡3x+x6sin⁡3x\boxed{y=C_1\cos3x+C_2\sin3x+\frac{x}{6}\sin3x}

xを掛けることで、微分したときに右辺の余弦が残ります。xを掛けないA cos 3x+B sin 3xでは左辺が0となり、特解になりません。

(2.3) 指数関数をくくってから共鳴を処理する

y′′−2y′+5y=exsin⁡2x.y''-2y'+5y=e^x\sin2x.

y=eˣzとおけば、左辺はeˣ(z″+4z)です。z″+4z=sin 2xを解けばよく、同次解はC₁cos 2x+C₂sin 2xになります。特解をAx cos 2xとすると左辺は−4A sin 2xなのでA=−1/4です。

y=ex(C1cos⁡2x+C2sin⁡2x−x4cos⁡2x)\boxed{y=e^x\left(C_1\cos2x+C_2\sin2x-\frac{x}{4}\cos2x\right)}

最後にeˣを掛け戻すことと、余弦の微分で生じる負号が要点です。3問とも、得た特解だけを元の左辺へ代入すると右辺が再現されます。

問題3:グラム・シュミット法からQR分解へ

与えられたベクトルはv₁=(1,1,0)、v₂=(1,3,1)、v₃=(2,−1,1)です。以下では計算しやすいように列ベクトルとして書き、Aの第i列をvᵢとします。

(3.1) 射影を順番に引き、長さを1にする

q1=12(110).q_1=\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix}.

次にv₂からq₁方向の成分を引きます。内積q₁ᵀv₂=2√2なので、残りのベクトルとその正規化は次のようになります。

u2=v2−(q1Tv2)q1=(−111),q2=13(−111).\begin{aligned}u_2&=v_2-(q_1^Tv_2)q_1\\&=\begin{pmatrix}-1\\1\\1\end{pmatrix},\\q_2&=\frac1{\sqrt3}\begin{pmatrix}-1\\1\\1\end{pmatrix}.\end{aligned}

v₃については、q₁・q₂の両方向の成分を引きます。q₂ᵀv₃が負なので、その成分を引く項の符号に注意します。

q1Tv3=12,q2Tv3=−23,u3=v3−12q1+23q2=56(1−12),q3=16(1−12).\begin{aligned}q_1^Tv_3&=\frac1{\sqrt2},\qquad q_2^Tv_3=-\frac2{\sqrt3},\\u_3&=v_3-\frac1{\sqrt2}q_1+\frac2{\sqrt3}q_2\\&=\frac56\begin{pmatrix}1\\-1\\2\end{pmatrix},\\q_3&=\frac1{\sqrt6}\begin{pmatrix}1\\-1\\2\end{pmatrix}.\end{aligned}

3本の内積は互いに0、長さはすべて1です。q₂はv₁を引いただけのベクトルではなく、v₂からv₁方向への射影を引いて作ります。

(3.2) Rの各列は、元のベクトルのq基底での係数

Q=(q₁,q₂,q₃)は直交行列なので、A=QRの左からQᵀを掛けるとR=QᵀAです。直交化で計算した内積がそのままRの成分になります。

A=(11213−1011),R=(2221/203−2/3005/6).\begin{aligned}A&=\begin{pmatrix}1&1&2\\1&3&-1\\0&1&1\end{pmatrix},\\R&=\boxed{\begin{pmatrix}\sqrt2&2\sqrt2&1/\sqrt2\\0&\sqrt3&-2/\sqrt3\\0&0&5/\sqrt6\end{pmatrix}}.\end{aligned}

例えば第3列はv₃=q₁/√2−2q₂/√3+5q₃/√6を表しています。これを計算して(2,−1,1)に戻ることを確かめれば、射影係数の符号も検算できます。

(3.3) 直交行列の行列式の符号も確認する

上三角行列Rの行列式は対角成分の積で5です。一方、直交行列の行列式は±1なので、直交していることだけでdet Q=1とは決められません。今回の列ベクトルではq₁×q₂=q₃となるため、det Q=1です。

det⁡A=det⁡Q det⁡R=1⋅2356=5.\det A=\det Q\,\det R=1\cdot\sqrt2\sqrt3\frac5{\sqrt6}=\boxed{5}.

Aを直接展開しても、1(3+1)−1(1−0)+2(1−0)=5と確認できます。正規直交基底の符号を変えて答える場合は、Rの対応する行の符号も合わせて変更する必要があります。